第65話 お前、絶対に調整しろよなっ!!
数時間後。
何故か僕は正座させられ、コンコンと説教を喰らっていた。
「ライト」
「は、はい」
「お前…少しは加減しろっ!」
実はあの擬似ダンジョン。
僕の悪ふざけ…コホン。
…想いの強さ故、テストプレイですら散々たる結果をもたらしていた。
※※※※※
まずは陛下たちの6人パーティー。
しっかり説明を聞いたようで、それなりにバランスの取れた編成をしていたのだが…
「ライト」
「は、はい」
じろりと僕を睨む殿下。
因みに陛下はまるで魂が抜けたみたいにへたり込んでいます。
「…確かに“説明の部屋”?…そこにはビショップ、記されてはいた。――だけどな?」
「…はい」
大きくため息をつき、一気にまくしたてる。
「鑑定の重要性…『出来るとお得ですよ?てへっ♡』…ふざけすぎにもほどがあるだろ?…“盗賊”に関してはしつこく注意喚起しておきながら…悪意としてとらえるほどだ」
「…うう、すみません」
「しかもなんだ?あのふざけた店は!…『鑑定?…200ゴールド…いらない?…ふん、100ゴールドです』だと?…いくら何でもっ――久しぶりに殺意が湧いたぞ?」
「あうう」
「おかげで私たちは誰もビショップを選ばず、早々に破産状態だ」
「……」
「訳の分からないアイテムと所持金201ゴールド…見ていてさぞ楽しかったろうな?」
「あ、いえ…そんなこと…」
確かに僕は腹を抱えて笑っていた。
実際に体験した殿下たちにしたら“たまったもの”ではないだろう。
一応謝罪?
まあ運よく一つだけ僕の錬成した武器を入手していたので、それはプレゼントしておきました。
ひとしきり言いたい事を言い終え、大きくため息をつく殿下。
すこしだけ優しい表情で口を開いた。
「…まあ確かに。成長に関しては問題がない。久しぶりに私もレベルが上がったくらいだからな…お前のダンジョン――凄い事は認める」
「…あ、ありがとうございます」
全員実際のレベルが2つ上がっていたんだよね。
『テストプレイ』なので還元率は50%なのだけど。
「そして、だ。」
「うう…はい」
突然遠い目をし、その瞳には怒りが宿る。
「擬似とはいえダンジョンだ。罠もあるのだろう。…だがな?――あれは無いだろう?」
「うぐっ」
実は殿下たち。
意外と頑張って7階層まで行ったものの。
ダークゾーンと回転床で方向を完全に分からなくさせられ、さらには…
「…『シュート?』…お前な。経験してみろっ!…陛下ですら悲鳴を上げていたぞ?」
一応死んだら戻れる設定なので。
実は目を覚ました陛下に僕はじろりと睨まれていました。
「お前…酷すぎだろ!!」
「えっと…すみません」
猛省。
僕に残されたのはそれだけだ。
「…まあいい。テストプレイだ。…だが…」
そういいロキラス殿下はルイ達の方へと視線を向ける。
今回“真の地獄”を見たルイとルザーラナ。
彼女たちは異常に強かったので、いきなり飛んだ階層は何と70階層。
もちろん凶悪なモンスターに対しても健闘をしていた二人だったが。
最終的には悍ましいアルティメットスライムに捕食され、生きながら熔かされ…コホン。酷い目に遭っていた。
まさに地獄。
さっきまであの二人、錯乱してたんだよね。
ハハハ、ハ。
「…痛ましいな…お前、怒られろ」
「ぐふっ?!」
ロキラス殿下の心からの言葉。
僕は心から反省していたんだ。
※※※※※
戻ったときルイとルザーラナは半狂乱状態だったのだけれど。
ようやく落ち着いた今、とんでもない圧をのせた二人のジト目が僕に突き刺さっていた。
「…ねえ、ライト」
「う、うん?」
「スッゴク痛かった…怖かった…」
「う、うん…」
「う、うち…もう、二度とダンジョン、入りたくない」
「あう、そ、その…せ、説明足りなかったかな?」
確かに僕の説明が足りなかったのは事実だ。
いくら強くてもこれは擬似ダンジョン。
根底にはあの『悪逆のゲーム』をベースとしている。
確かに少し可哀相なことをしてしまっていた。
「…魔力抱擁、3回で許してあげる」
「はあっ?!さ、3回?!」
僕の反応に吹き上がる圧倒的怒りの魔力。
そして目を真っ赤にはらす二人。
思わず僕は、まるで壊れた機械のように頷いていた。
※※※※※
「はあ。バカですか?」
「うぐっ」
長時間の説教から解放された僕。
今度は戻った寮で、ティアからあきれ顔で追加の説教を受けていた。
「…『常識的だよ?僕を信じてよ』…とか言うので…黙っていましたが。…はあ」
「ぐうっ?!」
ダンジョンの仕様と詳細。
厚い束になっているそれを前に、僕はただ小さくなっていた。
「…死んだら戻れる…これはいいです。でもなんですかこのボッタクル商店とか…悪辣過ぎでしょ?」
「うんうん。内緒でこそこそしてると思ったら…ライト実は性格悪いのかな?」
なぜか参戦し、僕にジト目を向けるキャルン姉さま。
さらにはあきれ顔でココナまでもが僕を見つめていた。
「とりあえずテストプレイでよかったです。これ本番なら二度と誰も来ませんよ?」
サルツさんの常識ある発言。
うん。
確かにっ!
「何よりこれは幾つもの『重大な思惑』があるのでしょう?…相談してほしかったですね」
なぜか寂しそうにつぶやくサルツさん。
何気にその反応が一番僕にダメージを与えていた。
「まったく。あるじ様はやんちゃなのじゃな。この仕様…クハハッ。まさに悪辣の極致。4000年生きておるわしとてここまでの事は思いつかんぞ?」
ううう。
なんか。
ご、ごめんなさい!!
僕は小さくなりつつも、皆に見てもらい再検討することを誓わされていたんだ。
※※※※※
一方王宮に戻った陛下たち。
執務室で改めてテストプレイを思い返していた。
「…改めてとんでもないな…本当にライトが我が国にいてくれてよかった」
プレゼントされた武器、いわゆる魔力変換で顕現する武器を前にしみじみ零す陛下。
おもむろにロキラス殿下が魔力を這わし、光輝く刀身がその存在感を示していた。
「…国宝級?…いや、これは伝説級か。…陛下、再度打ち合わせ、必要では?」
「ふむ。そうじゃな。…他国の者や叛意あるものにこれが渡ってしまえば脅威。…宰相、時間はとれるか?」
「…調整いたします。コホン。陛下」
「む?」
「明日からしばらくは早朝5時より執務をお願いいたします」
「ぐぬっ?!…し、仕方あるまい。…調整は頼んだ」
「御意」
※※※※※
こうして王宮でもライトの作った擬似ダンジョン、それについての検討が始まった。
常識を逸脱し始めたライト。
しかも本人はそのことに気づいていない。
ロキラスは一人、何となく背筋に寒いものを感じながらも王宮を後にしていた。
天才の気まぐれ――
その一言で片づけていいとは思えずに。
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