第52話 ライトに愛された女たち、そして愛されたい女たちの心情1
◆女神ティアリーナの心情◆
わたくしの愛するライト様。
今だ9才でありながらとんでもない力を有し。
この世界、いえ、全ての希望でもある愛おしい人。
そして。
わたくしの“旦那様”になる人。
ああ。
なんて可愛らしく、そしてカッコいいの♡
わたくしはこの世界の希望となる女神。
人とは違う摂理のいわば絶対者。
それなのに。
もうわたくしは既にこの世界よりもライト様が欲しい。
もちろん女神と云う存在――
わたくしにはいくつかの縛りがあるし、この世界を守る使命がある。
正直ヒューマンと永遠にいることなどできない。
そもそも私には“寿命”という概念がない。
だから念話と言うか『神の通信』でお父様である創世神よりの神託。
正直“期待”などしていなかった。
※※※※※
およそ1000年前。
封印され神域に縛られ自由を失っていた私に、全てを凌駕するとんでもない神気とともにもたらされた通信。
それはまさに福音。
わたくしの運命を変える内容だった。
『…お前を助けるものが見つかった。いい男じゃぞ?何よりあやつはびっくりするほどの凡人じゃ。勇者や英雄と言った願望、持ち合わせておらん。…じゃがあやつは諸刃の剣じゃ。すでにわしの権能すら、あやつには届かん』
突然の創世神の言葉。
懐かしさよりも話の内容に驚いたことを思い出す――
「お久しぶりですお父様…ああ、数千年ぶりですが――いきなり何の話ですか?」
『ふむ。確かに挨拶が抜けておったな。ティアリーナ、我が娘よ…元気であったか?』
「…元気?あの。…わたくし封印されていてまったく自由がないのですけれど?まあ、確かに元気と言えばそうなのでしょうけれど」
神はその権能ゆえ消滅することはまずない。
永遠とも取れる時間、わたくしたちは存在してしまう。
あの異星の神々――
それを跳ね返すため、わたくしは無茶をした。
その対価による今の“状況”だった。
『ふむ。確かにの。…じゃがもうじき試練を抜ける者が現れた』
「試練?…ま、まさか?!…あの頭のおかしいスキルのことですか?」
『頭のおかしい?!…コホン。う、うむ。そうじゃ。すでに98%に到達しておる』
※※※※※
私は驚愕に包まれる。
この“宇宙”と言う果てしなく広い世界。
その中でお父様はその半分、創世する権利を手に入れていた。
そのお父様ですら把握できていないスキル『死身刻命』
通常耐えられる魂はないとされている超絶スキルだ。
別の世界の神々ですら、“ごく初歩”を有するのみ。
それですら――『凄まじい脅威』だというのに。
※※※※※
「――冗談、ですよね?そもそも凡人?…それこそあり得ない」
『まあの。ワシだって信じられん。じゃが間違いなく奴は、蘇我頼人は達成する。理由なぞこの際どうでも良い。ワシはな、お前を救いたいんじゃ』
「…お父様…」
『それに…お前はあやつの“好み”そのもの…そういう感情、倫理観――もうそれでしかコントロールが出来ん状態じゃからな』
(コントロールできない?…いったい…)
『虜にせよ…クフフ…可愛がってもらうとよいぞ?たっぷりとな』
突然脳裏に浮かぶいやらしく顔を歪め鼻の下を伸ばしているお父様の顔。
相変わらずこの方のそういう道徳心とか…残念過ぎる。
『コホン。分かりました。それではそのお方、蘇我頼人様。…わたくしの場所へ来ていただけるのですね?それから倫理観、とは?』
『…うん?…あー…う、うむ…ハハハ、ハ』
『???』
『コホン。まあ、そういう訳じゃ。…しばらくかかるが、期待して待っておれ…おっと?少しは徳を積んだようじゃな…ほれっ』
突然解ける私の拘束。
…神であるお父様では不可能では?
『なーに。あやつの積んだ徳、少しばかり前借じゃ。…スキル達成率5%程度の消費じゃな…まあ誤差じゃろ?』
酷すぎません?
勝手に他人の積んだ徳を…勝手に使うとか?!
うう、もし出会えたら、初めに謝ろう。
うん。
そして流れ来る彼の想い…
ああ?!
なんて安らぐの?!
驚くほど普通の感性…
そして当たり前の道徳心…
決して特別ではない。
普通の、凡庸なそれ…
そして彼の普通の倫理観…なるほど。
でも。
ああ。
理解してしまう。
だからこそ彼は…
到達するのね。
既にこの時。
わたくしは恋に落ちていた。
彼の心、そして想い。
まさに福音に他ならなかった。
わたくしの“千年の恋”が始まったんだ――
※※※※※
寝静まるわたくしの寝室。
悔しいけど今ライト様はあの魔王ルイと一緒に就寝されている。
もちろん物理的な接触はないのでしょうが…
でもきっと。
あの淫乱魔王、抱き着いているに違いない。
「まったく。…仕方ありませんわね。ライト様は世界で一番素敵な殿方なのですから」
ふいによぎる魔力での抱擁。
途端に鼓動が高まり顔からは火が出そうだ。
わたくしは女神。
超絶者。
もちろん男性経験などない。
でもあのライト様のわたくしを求めてくださった魔力による抱擁。
わたくしは神でありながら。
女性として包まれ満たされる『大いなる幸せ』を頂いた。
彼の優しい瞳が私を包み込み…
あの可愛らしくもお優しい手が…
満たされていく心。
気を保てないほどの圧倒的な幸福感――
イケナイ。
余りに幸せ過ぎて…
思い出すだけで気を失ってしまいますわ。
「…9歳…きっとあと数年後には…♡♡♡♡」
あの時見せてくださった青年の姿のライト様。
いつか来る未来。
実際に抱いていただけるその日が来ること。
そして何より。
彼には寿命の概念がない。
わたくしは誓った。
この世界絶対に守る。
わたくしとライト様の桃源郷を守るために。
※※※※※
◆魔王ルイの心情◆
「おーい。尾山先生。問題児、どうにかしてくださいよ」
「うあ、えっと…す、すみません」
夜の職員室。
私はもう何日続いたか分からない残業の中、同僚の先生からクレームをつけられていた。
「先生のクラスなんだから。しっかりしつけてくださいよね?…無駄にでかいその胸で、誘惑でもしたらどうです?」
「っ!?…」
下卑た視線。
それが私に突き刺さる。
「ハハッ、冗談ですよ。…それにしても…くくく…立派ですねえ」
「し、失礼ですよ…じょ、女性にそんな…」
いつものセクハラ。
いちいち反応すればただ顔をいやらしく歪め、じっと見られてしまうだけ。
でもどうしても何か言わずにはいられなかった。
「でもいいなあ。先生のカレシ…自由にできるとか…羨ましいですねえ。…あれ?先生、彼氏いましたっけ?」
「?!!!」
そしてまるで遊ぶように私の胸に触れるその先生。
思わず立ち上がり、顔を引きつらせてしまう。
「い、いや…や、やめてください」
「…はあ。冗談ですよ。まったく。…学生の時散々『経験』したでしょうに……くくっ。これだから処女は面倒くさいんですよね…おっと。もうこんな時間。それではお先に失礼しますね」
そう言い席を立つ同僚の先生。
たまたま同じ大学の先輩だったその男は。
いつでも私に仕事を押し付けていたんだ。
私が大学の頃、数名の男に襲われた現場にいた男。
そしてその様子をケータイで保存している男。
運よく警ら中の警察官によって最悪の事態は免れたけど。
この男はいつでもそれをネタに私を脅迫していたんだ。
きっといつか。
私はこの男に…。
(死にたい…)
そしてその帰り道。
私はわき見運転の車にはねられ26歳の生涯を閉じたんだ。
そして。
私は創世神に目を付けられ――
数千年と言う長き魔王の人生を歩き始める。
※※※※※
大きな安心感と幸福に包まれた反動なのだろう。
私…いや“ボク”は懐かしい…そして嫌な夢を見ていた…
心が引き裂かれそうな経験…
―――怖い…
優しい声がボクを呼ぶ――
※※※※※
「…イ…ルイ?」
「…っ!?…はっ…うあ…え、えっと」
大好きなライト。
ボクは彼のとんでも魔力で女としての幸せを初めて経験して…
余りの多幸感に気を失っていた。
「っ!?涙?…うあ、ルイ?大丈夫?」
心配そうにボクを見つめる瞳。
心の中から好きがあふれ出す。
ボクは思いっきりライトに抱き着いた。
「うあ、そ、その…何か怖い夢でも見たの?…ふふっ。可愛い…大丈夫、大丈夫だよ」
そして優しくボクの髪を撫でてくれるライト。
もう。
もっと好きが溢れちゃうじゃん♡
「…ねえ、ライトはさ…そ、その…し、幸せな気持ちになれた?…ボ、ボクの…」
「ひうっ?!うあ、え、えっと………う、うん」
顔を赤らめ瞳を潤ませるライト。
ヤバイ。
コイツマジで女たらしすぎる?!
「コホン…なにかあったの?…あまり、そ、その…ルイの泣く顔、僕見たことないからさ」
「っ!?うん?なあに?…心配してくれるの?」
そして今度は顔を真っ赤にさせるライト。
でも瞳には優しさが乗ってくる。
うああ。
もうこんなの。
絶対離れられなくなっちゃうじゃん!!
「そりゃあ。…ルイは…ルイは大切な僕の婚約者だから…守りたいんだ」
「ひうっ?!」
あー。
もうね。
もうどうでもいいや。
今ボクはライトの隣にいる。
それだけであり得ない幸せに包まれるんだ。
不思議だった。
どうしてこんなにコイツに惹かれるのか。
ボク初めてだったんだ。
素直な心で、心の底から他人に心配してもらう事。
初めて出会って戦った時も…
ライトは何よりボクを心配してくれていたんだ。
何より彼は。
あり得ないくらい強いくせに…
それをもって他人を支配しようとは絶対に思わないんだ。
いつでも自然体。
…あの男とは大違いだ。
きっとそれは普通の感性。
でもそれは。
ボクにとって最高に居心地のいい気持ちなんだ。
以前の“私”は異性からの好奇の目とあの大きな手が怖かった。
それなのに――
“僕”は自然にライトを――求める。
ボクはライトを抱きしめ、そのままベッドに倒れ込む。
慌てふためくライト。
幸せが、ボクの心を満たし――溢れていく。
もう♡
可愛すぎる♡
絶対、ぜーったい。
一緒に居てやるんだから!!
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