第50話 猛る女生徒たちと殿下の訪問
時は少し遡る。
ルシェード殿下が我が家を訪問する日のお昼ごろに。
※※※※※
「よーし授業はここまで。ちゃんと復習しとけよー」
「「「「はーい」」」」
「「うっす」」
午前中の授業が終わり、今からランチタイム。
キャルンたち中等部1年の教室。
授業が終わるや否や、彼女の周りには多くの女生徒が集まってきた。
「キャルン様、お昼ご一緒しませんか?」
「食堂、新作がございましてよ」
「キャルン、一緒に屋上いこっ!」
「キャルン様」
「キャルン!」
「うあ?!…えっと…」
※※※※※
キャルンはこのクラスでは最年少だ。
何しろ優秀過ぎて飛び級をした才女。
何よりその明晰な頭脳と剣聖と言うチートスキルに紐づけされた身体能力。
はっきり言って中等部程度では誰も彼女にはかなわない状況だった。
そんなキャルン。
当然ながら男女問わずモテモテだ。
「アハ、アハハハ。…えっと。…わ、わたくし今日はお弁当なのです。教室でいただこうかと…」
いうなればいつもの事。
しかし今日はやけにその人数が多い。
何気に他のクラスの子や上級生まで居る?!
さらにはいつも纏わりついてくる男子生徒数名までもが押しのけられていた。
原因はもちろん――ライトだ。
今いる女生徒の殆どが目を爛々と輝かせている。
まるで獲物を狙う女豹の目。
「そ、それなら私も教室で食べる。良いよね?」
「え、ええ」
そう言い、いきなりキャルンを囲み机で閉じ込められてしまう。
逃げ場がない。
「あうっ?!そ、その…」
「「「「いっただーきまーす」」」」
「…い、いただきます」
(味が分かんなくなっちゃうよ?!)
キャルンはまるで死んだような目で機械的にお弁当を口に運んでいた。
※※※※※
「ところで。キャルン様?そ、その。弟君の…」
「っ!?あ、あなた?!抜け駆けは許しませんわ」
「ねえー。ライト君、どんな女の子が好きなの?」
「…お近づきに♡」
「わ、わたし婚約してないっ!!」
「ハハハ、ハ…」
※※※※※
昨夜の発表。
実はこの国に大きな混乱を巻き起こしていた。
もちろん女神さま降臨や婚約、魔王との和平の事、それに伴う話は天地がひっくり返る程の衝撃を世界にもたらしていた。
しかし。
もう一つ発表されたこと。
最年少で叙爵された少年。
しかもいきなり男爵、子爵を飛び越えての伯爵。
あまりの事態にライト含め多くの人が見落としてしまっていたが。
実はこれは過去にない異常事態だった。
しかも数多の発明品。
本人は全く気にもしていないが…
想像を超える報奨金が贈られることになっていた。
しかもライト、はっきり言って非常に美しい少年だ。
多くの女性がその情報に目を輝かせていた。
親はこの国で話題に上がるほど優秀な辺境伯。
そして本人は最年少の伯爵。
ライトはまだ知らないが。
実は貴族街の豪邸、彼に譲渡する準備がなされている状況だった。
さらには小国を凌駕するほどの財力をすでに保有する超優良株。
この国では一夫多妻が認められていることもあり。
すでに7人の婚約者がいるとしても――
ライトはまさに独身女性全員の希望の男ナンバーワンだった。
※※※※※
「そ、その…7人婚約者居るのよね?ライト君まだ9歳でしょ?そ、その…もう、“夜”とかって…」
「ひうっ?!…夜っ!?キャー♡」
「あ、あの可愛らしい顔で…ハアハアハアハア♡」
「ううう、お近づきに…♡」
ますますヒートアップしていく女生徒の皆さん。
私は内心大きくため息をついていた。
「ほう?興味深いものだな。いまだ9歳の伯爵様。キャルン嬢、そこのところどうなんだい?」
女生徒の包囲を押しのけ突如現れるルシェード殿下。
なぜか纏うキラキラエフェクト。
一斉にここにいる女生徒の目がハートに変化する。
「っ!?…ルシェード殿下?」
「ふむ。美しい君たちに囲まれて僕はまるで天国にいるようだ。だけど少しだけ道を譲ってくれるかい?僕は彼女、キャルン嬢に用事があるんだ」
「は、はい♡」
「ど、どうぞ♡」
ルシェード殿下の視線。
そこに愛欲の色はない。
何かを察したキャルンは大きくため息をついた。
「申し訳ありません殿下。2分だけお待ちいただけますか?…今だ私は食事中。わたくしの為にメイドが作ってくださったお弁当ですもの。無駄にしたくありません」
「ふむ。そうであるな。…では先に屋上で待って居よう。良いかな?」
「承りました」
※※※※※
きっと彼もライトに用がある。
わたくしではなくライトに。
朝のあれはブラフ。
いうなれば今のための布石。
(まったく。ライトもとんでもないけど…ルシェード殿下…彼もまた引けを取らない策士ね)
今日の朝のいきなりの求愛。
あれがなければ今のこの状況、作ることができなかっただろう。
(それに…はあ。…わたくしはライトの作ったお守りで耐性あるけど…女性たちみんな魅了されちゃったわ。まあおかげで自由に動けるのだけれどね)
お弁当を美味しくいただき、しっかりとハンカチで包むキャルン。
いまだ夢見心地の女生徒の間を縫って教室を後にした。
※※※※※
「それでどのような御用でしょうか?」
寮のリビングルーム。
今ここでは僕とキャルン姉さま、そしてサルツさん。
さらには変装してメイドの格好をしているティアとココナ、全員で僕の対面に座るルシェード殿下に視線を向けていた。
「ふむ。キャルン嬢からは何も聞いていないのかい?」
「…特には」
チラリと僕はキャルン姉さまの瞳を見る。
いつもの姉さま。
つまりこれは『そういう事』だ。
「なるほど。…余計な先入観は不要、と言うことかい?キャルン嬢」
「ライトは9歳ですが優秀です。何よりこの寮に入れた殿下はその資格があるという事。そうよね?ライト」
キャルン姉さまとココナの安全のため、この寮にはいくつかの仕掛けを施してある。
心を拾うアーティーファクト、その応用形。
つまり僕たちに対し疚しい事を考える者はこの寮の玄関にたどり着くことができない仕掛けを構築してある。
「ほう?さすがは噂に聞きし錬成士。いや錬金術師?魔道具士?…まあどうでもいいが。…ならば遠慮は不要だな。単刀直入に言おう。ライト、我が国に来てほしい」
「は?」
「できれば姉弟で来てくれるとなお良いのだが。もちろんキャルン嬢には正式に婚姻を申し込もう」
「はあ?!!!」
とんでもない事を宣うルシェード殿下。
「3日猶予をやろう。返事は…そうだな。僕が再度訪れるとするか。…メイド殿?」
紅茶を飲み、何故か視線をココナに向けるルシェード殿下。
突然声を掛けられ、思わず顔が上気するココナ。
「うまい紅茶だ。…君も一緒に来るといい。歓迎しよう」
なぜか話が進んでいく。
拒絶したいのに聞いてしまうこの状況。
僕は全力で解呪魔術を展開した。
超高音で聞き取れない領域にある高周波域で、薄い膜のような物が破壊された。
ピクリと殿下の眉が跳ねる。
「フフ…フハハ…ハーハッハッハッ。…恐れ入ったよ。まさかこれに気づくとは…本当に君が欲しくなってしまう」
試されていた。
この世界で並ぶものの居ないこの僕が。
ヤバイ。
なんだか嬉しくなってきた。
この殿下が展開した技術と言うか魔術?
あの1億年の経験でも見たことの無い術式だ。
「…あなたは何者なのですか?」
妖しく微笑む殿下。
僕はすでに彼に興味を持つことになっていた。
(やられた…この人…超一流の策士だ…)
そして語られるいくつかの事実。
その内容はまさに驚愕の内容だった。
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