第47話 和平の式典2
程なく訪れた魔王軍の代表者一行。
皆、びしっとしたスーツのような物を纏い、体からはあふれ出す魔力。
かなりの圧を醸し出していた。
ごくりとつばを飲み、城内の兵や重鎮たちの視線が一団に注がれる。
間違いなく『この星での最強の戦闘集団』がそこにいた。
その責任者として魔将であるイスペリアが真直ぐ僕の前へと進み恭しく膝をつく。
「ライト様。参集に応じはせ参じました。どうぞよろしくお願いいたします」
そしてなぜかにやりとする彼。
まったく。
そこは真面目な表情をちゃんと保ってよね!
せっかくカッコいいんだからさ。
「いらっしゃいイスペリア。…うん?えっ?!ルザーラナ?」
イスペリアの横にいる超絶美女。
シックな、それでいて扇情的な上品なドレスに包まれた淑女、間違いなくルザーラナだ。
元々彼女はメチャクチャ可愛い。
それがしっかりと大人っぽい化粧を施し、胸元の空いた美しいドレスを纏っていた。
思わず見とれてしまう。
「んふ♡ライトきゅんがうちを熱い瞳で見てる♡…はうっ♡…うう、飛びつきたい…」
「…いらっしゃいルザーラナ…すっごく似合ってる…可愛い」
「はうっ♡…うう、も、もう…我慢できない…っ!?ひうっ?!」
僕の言葉に反応し、怪しい魔力を噴き上げさせ色気全開になったルザーラナ。
突然吹き上がる絶対零度の魔力に思わずたじろいだ。
「…ふん。泥棒猫でもそういう格好…それなりなのですね…素直に褒めてあげます。…でもライト様に触れること、許しません」
おうっ?!
目が覚めたんだね。
そしておもむろに僕の腕を取り、自身の体をぴったりと密着させるティア。
うあ、そ、その…
近すぎでは?!
「むう、出たなこの淫乱ダ女神!…ライトキュンから離れろ!!」
「嫌です。わたくしはさっきライト様の『お情け』を頂いたのです。それはそれは濃厚な…はうっ♡」
突然在り得ない色気を噴出させるティアリーナ。
あー、まあね。
ハハ、ハ。
「っ!?お、お情け?…ま、まさか…」
「わたくしとライト様は今日正式に『夫婦』になるのです。婚前交渉…当然では?!」
えっと。
実際には『魔力による抱擁』なのだけれど…
ルザーラナ、絶対に勘違いしているよね?!
僕を睨み付ける彼女。
僕は気づかないふりをし、他の悪魔たちに目を向けた。
「初めまして、かな?…もちろん君たちの事、僕は認識しているけど…話すのは初めてだよね?」
「はっ。ライト様。…我が忠心、どうかお納めください」
今回の魔王軍の代表者。
魔将7名が勢ぞろいしていた。
代表でイスペリア。
そしてルザーラナ。
今跪いて僕に話しかけてきたザッガンルーバ。
その後ろで同じように跪いているヅーイルド、レスバド、リャンニーナ、フォルトレイトの7名だ。
因みにリャンニーナは女性の魔将で見た目20代後半くらいの美人さん。
左目の下の泣きボクロが異常に色っぽい女性だ。
全員がレベル300を超える超絶者。
…あの時の僕の魔力で成長上限に達したんだよね。
その様子に思わずロキラス殿下がため息交じりに口を開く。
「…とんでもないな…ハハハ。まさにこの世界は滅びの最中にあったのだな…イスペリア殿、と呼んでも?」
「うむ。かまわぬ。…ほう?貴殿、ヒューマンにしてはなかなかどうして…確かにこの星の同胞同志、戦っている場合ではなかったのだな…ロキラス殿」
「…はっ」
「ふふ。普通に話してくれてかまわぬ。何より我らはここにいるライトの配下のような物。同じ土俵の同志だからな」
「っ!?…分かった。イスペリア殿…よろしく頼む」
「ああ」
一通り挨拶が済み、後は午後の式典に臨むだけだ。
僕たちは皆で席につき、紅茶を楽しんでいたんだ。
※※※※※
午後1時。
宮殿の中にある大ホール。
高価な椅子が並べられ、整然と並ぶ各国の重鎮たち。
当然周囲を覆うように近衛兵の皆と各国の護衛が配置されている。
そしてこの会場にいる者の顔には何故か達観した表情が浮かんでいた。
僕は一応午前中の顛末の報告を受けている。
その中で語られ検討された真実、まさに驚愕の内容だった。
理解したのかは分からないが間違いなく彼らは真剣だ。
そしてその視線が壇上に注がれる。
豪華な装飾に包まれた檀上、その上には今回の式典における重要人物が整然と並んでいた。
国王であるミルナルド・ニラリス・マイハルド陛下と宰相であるウィリニード侯爵、さらには魔王ギルイルド・レゾナルーダ、異星の戦士リョダ。
女神ティアリーナと僕。
そして悪魔代表としてイスペリアとルザーラナ、そしてザッガンルーバはじめ7人の魔将の姿があった。
そんな中僕は会場を見渡し息をのむ。
「…世界各国の重鎮に女神教の上層部…ふわー。そうそうたるメンバーだね」
「ええ。…ああ、この全ての者が今日ライト様に跪き、忠誠を誓うのですね♡ティアは、ティアは嬉しく思います♡」
「えっと…あー、う、うん」
僕に忠誠を誓う?
そういう式典ではないのだけれど?!
そんなやり取りをしていると、この国の宰相であるウィリニード侯爵が僕の開発した魔道具『マイク』を手に立ち上がり、厳かに開式の辞を述べる。
ざわめきに包まれていた大ホール。
そして即座に静寂に支配された。
「コホン。…世界各国より多くの権威ある皆様方。本日は和平の式典にご参列賜りまして誠にありがたく、衷心より御礼申し上げる。…それではこれより、魔王ギルイルド様との和平の式典、開式いたします…それではマイハルド国王であるミルナルド陛下よりご挨拶申し上げる」
そう言いマイクを手渡し席につく宰相。
立ち上がる国王が何故かちらりと僕に視線を投げた。
(うん?…なんだ?……可哀そうなものを見る目?…)
「コホン。まずは遠路の旅路、大儀である。今回の式典、取り仕切ることができる栄誉、正に至福の極致。何より数千年の時を超え降臨なされた女神ティアリーナ様に最大の忠誠を」
そう宣言しティアに跪く国王。
同時に参集者全員が立ち上がり、跪いた。
(っ!?…凄い…まさに世界の指導者たち、その全員がティアに向け忠誠を誓う…うあ、マジで鳥肌が立っちゃう…やっぱりティア、ティアリーナは本当に女神なんだ…)
その様子にそっと席を立つティア。
国王の前で印を切り、会場に顔を向けた。
「今までよく民を守ってくださいました。我が祝福、ここに完全に復活したこと、宣言します」
「おおっ?!」
「め、女神様…」
「な、何とお美しい…」
会場を埋め尽くす感嘆の言葉。
まさに今、女神の存在。
それが世界に認識されていたんだ。
「…皆の者。…女神さまは宣言なされた。…この世界の祝福、それは完全に復活した。しかし…真の脅威、それが我が国のみならず世界を包もうとしている。…そう、異星の神、侵略者の存在だ」
突然雰囲気の変わる会場。
そして参集者の視線が研ぎ澄まされていく。
「我々は今まで、敵は悪魔、魔王の軍勢とそれに伴う魔物だと考えていた。そしてヒューマン同士の争い、それは多くの民の命と言う、尊い犠牲の上我々は過ごしてきていたのだ。…何と愚か。…もし私が神であるのなら…きっと許せぬ大罪。…こんな種族なぞ滅びればよい。そう思う事もあった」
ざわめきが湧く。
国王の言葉、それはまさに自分たちの非を認める懺悔に他ならない。
「だが。…我々の元に希望が舞い降りた…ライト」
会場の視線全てが僕を捉える。
ひうっ?!
き、聞いてないよ?!
「どうか貴方から、皆に説明してほしい。そしてあなた様の魔力、我々に刻んでいただきたい」
そして僕の前で平伏する陛下。
何故かティアも、魔王も、魔将全員、そしてリョダまでもが目を輝かせて僕を見つめてきた。
…全く。
何故かニヤニヤしているルイ。
君の入れ知恵だね?!
僕は大きくため息をつき、マイクを手に取った。
……ん?
待てよ?
これはチャンスでは?!
突然天啓のようにひらめく僕。
うわー、ヤバイ。
僕天才かも?!
僕はこの会場にいる全員を把握し、さらには城内にいる各国の使者、そしてすべての人間の位置を確認し捉えた。
(ふふふっ。そうだよ。僕の魔力とスキル…完全な隠蔽が出来る。…今日の事はここだけの式典。通信手段のないこの世界、ここだけ抑えれば他に漏れることはない…くくく、ハハハ、ハーハッハッハッハ!!!)
そして圧倒的な魔力を僕は練り上げた。
事実を『都合よく改竄』するために。
なぜかわからないが全てを従える超絶者の存在。
その存在である僕を、イメージだけ刻み込みすべて消去する。
当然『実体』がいないというのは不自然だから…
ふっふっふ。
ここは『影の騎士ノワール』の出番だ!
そうすればあーら不思議。
式典の記憶とこれから先の危機に対する対応、そして女神への信仰と魔王との和平。
そのすべての真実、しっかり認識したうえで。
僕、ライトのことはその記憶から消去させることができる。
そして刷り込まれる謎の男、『影の騎士ノワール』
ハハハ。
完璧だ。
僕の望みであるスローライフ。
正直諦めていたけど…
どうにか希望はつながった。
僕は意気揚々と、会場を見渡した。
超絶魔力を解き放つ――
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