第42話 学園生活の一コマ
――5月。
新緑と青い空のコントラストが美しい季節。
僕たちが入学し、1か月が経過していた。
ようやく学園生活にも慣れた今日この頃。
ついでに王都の問題も『影の騎士ノワール』と『美しすぎる従者アラタイト』の暗躍(笑)で目途が立っていた。
やっぱりと言うか。
ココナは『可愛らしいお姉さん』としてクラス内で非常に人気が高かった。
何しろ彼女は素直で頭もいい。
元々平民だったこともあり威張るそぶりはなく、誰に対しても柔らかく接していた。
そして。
自分より年下のクラスメイトに対し、非常に優しいのだ。
「えっと。孤児院にいた時も私小さな子たち大好きだったんです」
とのこと。
何より彼女はとっても、魅力的だ。
別のクラスや上級生数名は“よからぬこと”を考えていたものも居たので。
それについては一応対策済みだ。
一番の問題はキャルン姉さまだね。
何しろ彼女は異常なほどモテる。
サルツさんの“異様なまでの情報量”で“いろいろと”把握しているので。
後手には回らないけど。
うん。
ついこの前なんて寮にまで数名が押しかけて来たくらいだ。
一応普段からキャルン姉さまにはサルツさんが付いているので問題はないとは思うけど。
一度しっかり対策を取った方がいいかもしれない。
(まあ。武力で姉さまにかなう男は殆ど居ないのだけれどね。…でもこの世界にはいろいろな魔道具がある。――注意は必要、かな)
相変わらずいろいろなイベントが起きるこの世界。
僕は辟易しながらも、実は楽しんでいた。
何よりも。
全てが“初見”。
それは何にも代えられぬほど僕の心を湧き立てさせてくれていた。
※※※※※
「おはようライトー。ちょっと教えてー。…この宿題なんだけどさ…」
「あー、うん。これはさ…」
入学当初、幾つかの騒動はあったものの。
僕の目論見通り、どうにか目立つことなく学園での生活は過ごせていた。
まあ入学のためのテスト、僕は満点だったので。
こういう事はよくあるのだけれど…
取り敢えず他のことでは今のところ目立つような事態にはなっていないんだ。
もちろん体力テストとか、魔力測定とか。
よくあるそういうイベントはあったよ。
僕は全力で隠蔽、一応『おかしくない程度』には数値をごまかせていたんだよね。
一応魔力数値ではクラスで3番目。
そして身体能力はクラスで4番目。
『頭もいいし、凄いんだね!』
と言われる程度には落ち着いていた。
一応僕は特待生だ。
まったくの能無しという訳にもいかない。
「ふん。頭でっかちかと思いきや…ライト、確かに君はたいしたものだ。私の友として認定しよう」
偉そうにそんなことをベイルードが言っていたっけ。
ハハハ。
何はともあれそんなわけで僕は取り敢えず『優等生』と言う認識で、皆に思われている状況だった。
そんな中。
今僕に声をかけてきたのはクラスに二人しかいない平民の一人、シュレッタ。
まあ平民とはいえマイハルド王国の大店、スルト商会の御曹司なのだけれどね。
「ライト様♡わたくしにも教えてくださいますか♡」
「うあ、えっと…ちょ、ちょっとニーナ、近すぎ…」
「んもう♡相変わらずイケずですわ…ここでよろしいかしら」
「う、うん」
そしてなぜか猛然と僕にアタックしてくるダイゼイド伯爵家の次女ニーナ嬢。
自己紹介が終わった後、彼女はいきなり僕に抱き着いてきてプロポーズしてきたんだよね。
もちろん断ったよ?
いきなり初日から“お嫁さん候補”、増やすことはしたくなかったしね。
それに彼女、どうやら特殊なスキルを持っているらしく。
僕の力の一端、何となく疑っていた。
しょうがないので少し彼女の記憶と言うか精神、僕は干渉済みだ。
ティアとよく相談し、問題のない程度ではあるのだけれどね。
もちろんロキラス殿下には通達済み。
そんなわけで彼女は僕と今『親友状態』だ。
いきなり抱き着いてくることはなくなったけど…
彼女は僕のことを痛く気に入ってしまっていた。
「…浮気者」
「うんうん」
そんな中、僕の隣の椅子に座り、ジト目を向けてくるルイとルザーラナ。
一度きつく“お仕置き”したので。
彼女たち二人は僕に触れることはしない。
「あら。ルイ様、ルザーラナ様、ごきげんよう」
「っ!?…ごきげんよう」
しかもニーナ嬢、かなりの社交上手だ。
思わず魔王であるルイと魔将であるルザーラナも彼女の言葉に毒気を抜かれてしまっていた。
「ふん。相変わらず女を侍らせて…流石は辺境伯の御子息。良いご身分だな」
「…おはよう、ベイルード」
「む?…ふ、ふん。……お、おはよう」
なぜか突っかかってくるくせに僕が挨拶をすると顔を赤らめ照れるベイルード。
彼も最初はかなり色々文句を言ってきたのだけれど。
確かに選民意識は強いが実は根の素直な人間だ。
僕の実力、まあ勉強なのだけれど…
それを認めた途端、嫌味と言うかちょくちょく文句を言うものの、なぜかいつもそばにいるんだよね。
何気に実は一番会話をしているのって彼なんじゃないかな。
一応彼の中では僕『友人』らしいからね。
「おはようライト。今日もモテモテだな」
「おはようミャルナ。…君だって人の事は言えないと思うけど?」
颯爽と教室に入ってくるミャルナ。
彼の後ろからは数名の女生徒が付いて教室に入ってきていた。
「ははっ。僕にはすでに婚約者がいるんだ。彼女たちだって承知の上さ。ルイミス、マイヤ、リリン。そうだろ?」
彼、ミャルナの後から入ってきた3人。
彼の言葉にこくりと頷いているけど…
あれは間違いなく“ロックオン”している目だ。
「コホン。ミャルナ様の言う通りですわ。…わたくしたちはそんな『正妻』なんて…(側室で充分ですから♡)」
「ええ。そうですわ」
「もちろん♡」
ハハハ、ハ。
心の声、ばっちり聞こえたけど?
思わずミャルナも顔を引きつらせているし?
「おーい。席につけ―。ホームルーム始めるぞー」
「「「はーい」」」
「「やべっ、先生だ」」
「うあ、早く席に…」
そんなタイミングで教室に入ってくるウェレッタ先生。
ようやく僕の周りから人がいなくなっていった。
思わずため息をつく。
(まあね。…でも…)
僕はふと以前の生活に想いを馳せていた。
※※※※※
『勝負だ!!』
『………はあ』
以前の世界、ルードイーズ。
僕はその時きっと1000回以上は交わされた会話を思い出していた。
あの時の僕は侯爵家の長男ですでに婚約者の居た状況。
あの国の第2皇女、ヴィエレッタ皇女との婚約。
それをよく思っていなかった公爵家長男、ルイミナスがいつでも僕に突っかかってきていた。
暗殺を謀られたことも数知れず。
何よりあの世界の僕はこいつのせいで50回以上は死んでいたくらいだ。
(…今思い出しても腹が立つ。最後にはまったく相手にもならなくなってはいたけどね)
それに比べ。
なんと今の状況、素晴らしい事だろう。
(なにより…とても新鮮だ…ああ、追放されたこと自体はむかつくけど…本当に良かったのかもしれない)
そんなことを想いつつ、進んでいくホームルーム。
僕はこの時間、大切にしようと心に決めていた。
穏やかな瞳に優しい表情で授業を受けている僕。
何故か前の席に座っているシュレッタが小さな声でつぶやく。
「…なんかライト…おじいちゃんみたい」
「っ!?」
なっ?!
し、失礼な。
こんなかわいいおじいちゃん、いるわけないでしょ?!
まったく。
コホン。
何はともあれ、進んでいく授業風景――
僕は満足げにそれを目に焼き付けていたんだ。
そして。
事件は突然僕たちに襲い掛かってきた。
危惧していた“モテすぎる”キャルン姉さま。
欲望の魔の手が、静かに忍び寄っていた。
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