第41話 入学式と自己紹介
「えー、であるからしてー…」
3年前に新設された貴族学園幼少部。
本年入学した生徒、9歳児に該当する生徒の数は113人。
全4クラスで、僕たちのクラスは31名だった。
因みに10歳児は164人で5クラス、11歳児は151人で同じく5クラス。
キャルン姉様たちの中等部1年生は380人ほどで10クラスだ。
元々は12歳からの学園。
新設されて3年。
きっと数年で幼少部の入学者も増えてくるのだろう。
一応成績順でのクラス分け。
僕も、もちろんココナもAクラスだ。
まあ年齢制限は無いようなものなので。
実際に9歳なのはきっと半数くらいなのだけれどね。
陛下は多くの才能を持つ子供たちを発掘したいらしくて。
まあ年齢的に上の人たちは、幼少部のみでの卒業を予定しているんだけどね。
いわゆる基礎学習。
識字率の向上と初級の計算の習得。
それが出来れば平民でも幾つもの仕事の道が開けるんだ。
幼少部とは言え学園。
ここで習得した者、それは国力を大きくすることだろう。
さすがは陛下だ。
僕は改めて国王であるミルナルド陛下の慧眼に、感嘆の意を評していた。
それにしても。
僕かなり長く思考していたよね?
とんでもなく長い、校長と言うか学園長の挨拶。
まだ終わる気配がない。
皆は一様に緊張しているようだけれど…
こういうのに慣れまくっている僕には子守唄にしか聞こえないんだよね。
「ふあぁ」
「…ふん。特待生様は随分とお気楽な様子…少しは周りにも注意を払うのだな。ここは選ばれし場所。ふさわしい振る舞い、必要だと思うが?」
いきなり声をかけてくる銀髪の少年。
何か機嫌が悪い?
「…はあ。…そうだね」
「っ!?き、キサマ…ふ、ふん。まあいい」
えっと。
僕たちまだ“爵位持ち”とかいないよね?
なんか偉そうな子だな。
確かにそれなり、ではあるみたいだけど…
教室に行ったら絡まなければいいよね。
うん。
僕は目立たないって決めたんだ。
…それにしても本当に長い話だな。
「…えーであるからして…」
(…10回くらい同じこと言ってるよね?…はあ)
僕は遠い目をし、前に視線を向けていた。
※※※※※
カオスだ。
何で魔王ルイとルザーラナ、二人がいるの?
うあー、メチャクチャ目立ってる?!
「んふふ♡緊張しちゃって♡…ライト可愛い♡」
「あん♡ライトキュンの肘…今うちに触った♡…もう我慢できない」
超絶美少女のルイとルザーラナ。
なぜか少しの変装で紛れ込んでいる二人。
無理があると思うんですけど?!!
「ていうか、なんで二人がいるのさ」
「ふっふーん♡ひ・み・つ♡」
「うちも♡」
うう。
僕の学園生活が…
確かに今回の幼少部。
年齢制限はない。
何しろココナだって14歳だしね。
でもさ。
ルイとルザーラナ?!
そんなに“胸の大きい”幼少部、存在してはいけないのでは?!
すでに同じクラスの男子たち、真っ赤な顔で僕たちを見つめているし?
「コホン。このエロ魔王、離れなさい!!」
「むうっ?!現れたなこのダ女神!!…まさかあんたまで生徒、とか言わないでしょうね!?」
「当たり前です。わたくしはライト様の保護者のような物。まあ、一応従者?…とにかく離れなさい!!」
もちろんティアだって変装しているよ?
女神さまがここにいるなんて…
みんなひっくり返っちゃうしね。
因みに僕たちの会話、ちゃんと結界で囲ってるよ?
僕は普通がいいのっ!
うう。
マジでカオスだ。
不安しかない。
「ホームルーム始めるぞー。コホン。従者の方は後ろにお控えください」
そんな中教室に入ってくる先生。
30代後半くらいの優し気な男性。
へえ。
…何気に優秀だ。
ざわつく教室。
そして生徒はそれぞれ席につき、従者の皆さまは後ろに控えた。
「今日からこのクラスの担任になるウェレッタ・ノスタルだ。君たちは高貴な血筋の人もいることだろう。でも陛下の勅命『生徒は一律に同じ土俵』で、と言う事だ」
瞳に力を籠める先生。
うん。
実に大切なことだよね。
一番初めに“くぎ”を刺す――
実に効果的だ。
「…だから私は子爵家の者ではあるが君たちの教師。指示には従ってもらう。言葉遣いもここでは不問だ。…異議のあるものは居るか?」
静まり返る教室。
先ほど僕に声をかけた少年が、何故か苦虫をかみつぶしたような表情をしているけど。
そんな中、一人の少年が手をあげた。
皆の注目が彼に集中する。
「ええ。かまいません。陛下からも言われている事です。みんな、そういう事だよ?これからよろしくね」
彼は第4王子のミャルナ。
ロキラス殿下の腹違いの弟。
何気に継承権の高い、有力と目されている王子だ。
「ふむ。ありがとうミャルナ。…そういう事だ。彼はこの国の第4王子。でも彼が今言った事、皆心に刻んでほしい。…何より権力をカタにした行為は厳罰対象となる。…それでは自己紹介と行くか」
その言葉に教室の緊張感が少し霧散する。
まあ。
だからと言って威張る奴はいるのだけれどね。
取り敢えず先生、中立のようだ。
僕は胸をそっと撫でおろしていた。
「じゃあ、一番右の席の前から行おう。…ユナク・ビリダ、君からだ」
「は、はい」
茶色い髪をひとまとめにした、たぶん僕と同じくらいの年齢の少女が顔を赤らめつつ席を立った。
やけに幼く見えるけど…
(魔力が強い…ヒャルマ先生みたいだな。)
うん?
…凄いな彼女…
まだ9歳なのに…レベル50を超えている?
「え、えっと…ユナク・ビリダです。出身はザモーク地方です。い、一応聖女候補で…回復魔法が得意です…よ、よろしくお願いします」
パチパチパチ…
「ありがとうユナク。皆も拍手、ナイス対応だ。…さあ、今みたいにどんどん行こうか。…次は…コホン。ミャルナ、いいかい?」
「はい。…先ほど差し出がましい事を言ったけど…僕はミャルナ・ニラリス・マイハルドだ。できれば『ミャルナ』と呼捨てで対応してほしい。一応僕は魔法剣士の訓練をしている。これからよろしくお願いします」
パチパチパチパチ…
さすがはあの陛下の息子。
威張るような素振りは見せず、にこやかに挨拶をしてくれていた。
…なんかさっきから銀髪の子があたふたしてるけど…
まあこのクラスで一番の“権力者”がこういう対応なんだ。
明らかに皆の雰囲気が軟化したのが分かる。
――本当に優秀だ。
何はともあれこれできっとみんな安心できたようだった。
そして自己紹介は続いて行った。
※※※※※
いやはや。
僕のクラス、とんでもないね。
何しろ王子をはじめこの国の中枢の子息に周辺国家の重鎮の子息。
王族もちらほら。
さらにはもちろん秘匿してはいるけど魔王に魔将。
平民からの出身は何気にココナともう一人の男の子のみだった。
うーむ。
このメンツで3年?
なぜか女生徒の視線、恐いのだけれど?!
僕は思わず身震いしていたんだ。
※※※※※
一方中等部の新一年生のクラス。
キャルンは多くの男性から求愛を受けていた。
「おお、なんという美しさ…どうか私と、婚約を前提に…」
「おい、お前!抜け駆けするな!!…コホン。ぼ、僕はリザイド侯爵の長男、ギナードです。キャルン嬢、この後お茶など…」
「おいおい、ボクを差し置いて…コホン。キャルン嬢、我は隣国、ルディール王国の第2王子、アレッタだ。…僕の手を取ってくれるかい?」
余りの圧に思わず腰の引けていたキャルンだが…
あからさまに大きくため息をついていた。
(…この男たちがこの国や周辺諸国の有力な子息?…ライトの魅力の1%も無いのですけれど?…はあ)
確かに幼少部とは違い、中等部以降は『婚約者探し』の性格をも内包している。
何よりほとんどが貴族。
親同士の決まりも多いが、学園で愛をはぐくむ場合も多かった。
何はともあれこのままではホームルームが進まない。
何より担任の小柄な女性の先生、既に涙目だ。
「コホン。皆さま?まずは先生のお話、聞いた方が良いのではなくて?わたくしたちは栄えある貴族学園の生徒。まずはしっかりと行動する事。わたくし、そういう方に惹かれますわ」
「っ!?」
「お、おお。そ、そうであるな…先生、失礼した」
そう言い散る生徒たち。
なぜか先生は目を煌めかせ私を拝んでいるけど?
(はあ。マジで面倒くさい…)
キャルンは遠い目をし、これが終わったらめいっぱいライトに甘えようと心に決めていた。
そんな中。
さすがは優秀なサルツさん。
何気に従者の席から、今キャルンに声をかけた生徒の素性、性格や家柄、果ては趣味趣向まで全て完全に調べ上げたのは言うまでもない。
(ライト様に、報告ですね)
ニヤリと少し悪い顔をする彼なのであった。
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