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第3話 幼少時のライトの生活

朝6時。

東の空が淡く染まり、鳥の声が静けさを破った。


僕の一日は、いつもここから始まる。



当たり前の毎日。

満たされる日々。


きっと過去の僕は愛情に飢えていたのだろう。

全てが輝き、まるで乾いた砂が水分を吸収するかの如く


――注がれる普通の愛おしい日常――


そんな思いを胸に、僕はベッドから飛び起きた。


トレーニングウエアに着替え、ストレッチ。

思い通りに動く体。


思わず笑みが浮かぶ。


正直記憶はあいまいだ。

でも『鍛えろ』との強迫観念にも似た想いが沸き上がってくる。



「よーし。今日は5周かな」


スニーカーを履き、窓から外へと飛び出した。



※※※※※



この世界。

思わず笑っちゃったけど、都合がいい事にそこらへんに生えていたんだよね。


なぜか使えた“錬成”で、僕は足へのダメージの少ないスニーカーを発明していたんだ。


(この世界の靴、魔物の皮をなめしたものなんだよね。走ったりするとすぐに靴擦れが出来ちゃう)


因みに父上には報告と提案したよ。

だから僕の領の“靴事情”は実は国内随一だったりする。


お母様、驚いていたっけ。



※※※※※



僕の部屋は2階。

このくらいの高さ、問題ないくらいには鍛えられていた。


「ふう。朝の空気は気持ちいいね」


さわやかな清涼な空気を僕は胸いっぱいに吸い込む。


「よしっ」


まだ3歳の体。

少しずつこの世界の魔力を取り込みながら、僕は走るスピードを上げていく。


「ライト坊ちゃん、おはようございます」

「おはようハロルドさん。今日も早いですね」

「ハハッ。それは坊ちゃんでしょうに……頑張っていますね」

「うん」


声をかけてくれたのは庭で野菜を収穫していた、うちの使用人の一人ハロルドさん。

朝食などで食卓に並ぶミニトマトがキラキラと輝いている。


実は少し前から僕が魔力でこの領地の畑とかを包み込んでいた。


この世界の野菜とかチョット味気なくて。

調べたら土地にほとんど力なかったんだよね。


農家をはじめ、父上とかもすごく驚いていたっけ。

まあおかげで農家の皆さんのお野菜、高く売れるようになったんだ。


そんなことを思いながら僕は屋敷を5周走り終えていた。


次は魔力を練りながらの剣の素振りだ。

現れる人影に僕は微笑みかける。


「…さすがです。その年でその剣筋――ライト様は間違いなくノイド様のご子息ですな」


「おはようございます。グラドールさん。…今日もお願いできますか」

「もちろん」


そう言いすらりと訓練用の模擬剣を抜き放つ。

グラドールさんは我が辺境伯家の参謀長を勤める35歳の男性だ。


参謀長と言う責務のある彼。

僕の住む屋敷と同じ敷地内にある庁舎で、奥様と娘のヒルデさんの3人で暮らしているんだ。


「ふうっ。準備終わりました」

「休憩は…ハハッ、良い目です。では、構えてください。今日は私からの攻撃、防いでみてください」


「はい!」


――僕は既にグラドールさんより強い。

もちろん隠しているけど。


でも実戦形式の訓練、父上の許可はもらえていないんだよね。


カンッ、カンッ!

ゴッ!!

カカッ!


鳴り響く剣を交える音。

(いい音!)

思わず顔が緩む。


「さすがですな。もう少し強く行きますよ?」

「はいっ」


およそ10分間という短い鍛錬。

徐々に体が馴染んでいく事――僕は嬉しいんだ。



※※※※※



訓練を終え湯あみをし。

普段着に着替えて食堂へ向かう。


朝7時30分。

我が家は家族全員でこの時間に朝食を摂る。


皆で女神さまにお祈りをし、父上が最初に料理に手を付けるのがルーティーンだ。


和やかな食事の時間。

突然父上が僕に視線を向けた。


「ライト…お前、父に言う事はないか?」

「は、はい?…い、いえ、特には…」


(あれ?なんか怒っている?…僕何かしたっけ…)


思わず顔が引き攣るのを僕は何とか堪えた。

父上は訝しげに目を細める。


「…グラドールがな」

「っ!?グ、グラドールさん?」


そしてさらに僕の瞳を射抜いて来る。


やばい!?

朝の鍛錬、バレちゃったかな?


挙動不審になる僕に、なぜか諦めたような視線を向ける父上。

お母様はにっこりしているけど…


「ライト」

「は、はい」


「お前はまだ3歳。分かっているな?」

「…はい」


そして大きくため息をつく。

――うう、ご飯の味、分からなくなっちゃう。


「剣の鍛錬、5歳からでも早いのだ。お前はまだ体が出来ていない。変な癖が付くと取り返しがつかんのだが――100点らしい」


「…100点?ですか?」


「ああ。ライト。次からは私が見てやる。ちゃんと武闘場で鍛錬するぞ。グラドールは夜警もあるんだ。いいな」

「は、はい。…そ、その…ごめんなさい」


「ふっ。謝る必要などない。俺はお前が誇らしいんだ。だが慌てるな。お前はゆっくりと力をつければいい」


どうやら怒るというより父上は心配してくれていた。

僕はその事実に胸が熱くなっていく。

そしてそっとお母様が僕の髪の毛を撫でてくれた。


「ふふっ。ライトはやっぱり男の子なのね。お母様は嬉しいです。でもお父様の言った事、ちゃんと守るのですよ?お母様はあなたを応援します」


「はい。ありがとうございますお母様」


「むうっ。ライトまだ3歳なのに。お父様?私も…」


キャルン姉様はこの前の洗礼で剣聖の才能が確認されている。

僕の鍛錬を羨ましく思ったのだろう。


「キャルンはまだ駄目だ。お前は先に“風の加護”を使いこなす訓練をしなさい」

「…は、い」


この世界少ないが女性の騎士も当然いる。

でもキャルン姉さまはまだ5歳。

自分を棚に上げるようだがいくらなんでも早すぎる。


それでも彼女とて辺境伯家の長女。

粗削りではあるが闘気が湧き出す。


父上が目を細めた。


「…ふむ。まあ基礎くらいならいいか。分かった。――週に1回。それでいいな?」

「っ!?は、はい。よろしくお願いします!」


花がほころぶような輝く笑顔をする姉さま。

お母様によく似ている美しい顔。


僕は思わず見とれてしまった。


「…っ!?な、なあに?もう。…見蕩れちゃったの?ライト」

「なっ?!そ、そんな事…」


「ふふっ。可愛い♡」

「あう…」


やっぱり朝食、僕は味が分からないまま終了してしまった。



※※※※※



朝食後は自由時間。

いつもなら魔力の訓練を行うのだけれど。


まだ3歳児。

普通は遊ぶのが忙しいのだろう。


僕の服の袖を掴み、弟のルードリッヒが目をキラキラ輝かせ僕に問いかける。


「兄さま、何して遊ぶ?」

「うん?ルードは何が良いの?」


僕の弟。

実はかなりの才能を秘めている、将来有望な男の子だ。


「えっとね。…かくれんぼ」

「かくれんぼ?うん。良いよ?じゃあ兄ちゃんが鬼をやるから、10数えるね」


「うん!」

「いーち…にーい……」


慌てて隠れようと部屋を飛び出すルードリッヒ。

僕はそれを確認してから体を覆うように魔力を揺蕩(たゆた)らせた。


(魔力の“維持訓練”なら出来る…ルードとの遊び、僕にはその方が大切だ)


日常の一コマ。

僕は何よりそれが嬉しかったんだ。



※※※※※



「ハハッ。寝ちゃったか」


数回のかくれんぼ。

まだ2歳のルードリッヒは隠れながら寝てしまっていた。


「2歳児ってこんなに活発だったっけ?さすがは父上の息子、きっと成長も早いんだな。…ふふっ、可愛い顔して…ほんとにお母様そっくりだ」


僕はルードリッヒを抱え、お母さまの部屋へと連れて行った。

にこやかに迎えてくれるお母様。

なぜか一緒に居たキャルン姉さまが僕にジト目を向ける。


「むうっ。どうしてお姉ちゃんと一緒に遊ばないの?ルードばっかりズルい」


5歳を迎えたキャルン姉さま。

彼女は午前中お母様と勉強を始めていたはずだ。


「え?…だって姉さま、お勉強でしょ?」

「ううっ、そ、そうだけど…」


「じゃあお昼ご飯食べたら一緒にお昼寝してくれる?姉さま」

「っ!?………ラ、ライトと一緒に……う、うん♡」


僕は3歳でキャルン姉さまは5歳。


…なんで顔真っ赤なのかな?


「ふふっ。キャルンとライトが仲良しでお母様も嬉しいわ」

「はい。僕キャルン姉さまの事、大好きです」


「はうっ?!」


思えばこの頃から、キャルン姉さまの視線、少しおかしかったような気がする。

ハハ、ハ。


でも。


愛すべき日常に。

僕の心は満たされていったんだ。


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