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第35話 ジグルダと教皇ルベストイのその後

今回の騒動の原因である教皇とジグルダ。


僕はあの後彼らを完全に解呪して、実は話し合いを行うことにしていたんだ。


きっと今回の件は氷山の一角。

異星の脅威はきっとこんなもんじゃない。


まずはきっちりと、情報の収集をしなくちゃね。

まずはジグルダからだ。


ジグルダはつい数年前、いきなり彼らの星を攻められ改造され洗脳。

意味も解らずこの星へと連れてこられていた。



※※※※※



国王に依頼し借りた尋問室。

そこでは今僕とティア、そしてジグルダと名乗っていた異形の3人で話し合いを行っていた。


「…もう、帰る場所はない――殺してくれ」


そう懇願する異形の生物。

知能レベルは高いし戦闘能力もそれなりだ。


どうやら彼らの星は既に破壊されてしまったらしい。

確かに今の状況、彼は行く場所すらない。


「うーん。でも、もう誰かを殺そうとかは思っていないんでしょ?」


「…それはそうだが…だが我らの食事と言うかなんというか…どうしても『生体からのエネルギー補給』をしないと俺は生きてはいけないんだ」


下を向き俯く。

その瞳には後悔の念が滲んでいた。


「…正直俺が“おこなったこと”は許されざることだろう?…ライトなら一瞬で俺なぞ殺せる――頼む」


正直ジグルダはただの被害者だ。

“追放され転生した僕”にはその想い、分かるところもある。


自分の場所ではない世界――

そして犯した多くの罪。


でも。

彼らの仲間、同胞たち。

すでにかなりの人数がこの星に潜入しているはずだ。


確かに殺すのは簡単だ。

でも…それは解決ですらないんだ。


それに僕は。

どうしても彼らに対して“怒る気”になれなかった。


「ねえ、ジグルダ?君、本当の名前ってあるの?」

「…リョナーリイニーダだ。…この星だと周波数?発音?…が違うらしいが…まあ俺の名はそれだ」


「リョナ?リイニー?――じゃあ今から君は『リョダ』だ。いいね?」


この星の生物とは比較にならないほど強い彼等。

でも今目の前にいる『リョダ』からは悪意はみじんも感じられない。


「僕がさ、結界で場所を作るからさ…そこで暮らしなよ。えっと、魔物でも良いのかな?その、食事?」


「っ!?なっ?…あ、ああ。もちろん魔物でも問題はないが…良いのか?俺は多くの女を捕食してきた――殺したんだ…」


まあね。


彼は既に数年聖協国で君臨していた。

当然許されざることをしていたんだ。


でもさ。

それを罰する資格、僕には無いよね?


いわゆる食事。

生きるための行為。


――きっと僕だって同じ状況なら同じことをする。


「じゃあさ、僕に協力してよ。君たちに酷い事をした奴らがさ、そのうち大挙して攻めてくるんだ。…罰?と言うか“贖罪”したいのなら…君たちの力、僕に貸してほしい」


驚愕の表情を浮かべるリョダ。

そして恐る恐る僕に声をかけてきた。


「…俺…達?!…ま、まさか…」

「居るんでしょ?多くの仲間。…きっと強制的に操られているんだよね。…見つけたら助けるよ?――約束だ」


正直面倒くさい。

悪いけど積極的にそれをやるつもりもない。


でも。


間違いなく彼らは今“脅威”に他ならないんだ。

探さなくても確実に出会う。


僕は確信していた。



色々考えている僕の前にリョダは跪づく。

そして長く大きな手を前に差し出す。


「…ライト…いえ、ライト様…最大級の謝辞と忠誠を…我が魂、あなた様に捧げます」


……

うあ。

うー。


真面目かっ?!


それにどうしてティア、にっこりしているの?

もう。



なし崩し的に僕の配下が増えた瞬間だった。



※※※※※



取り敢えず僕はティアとリョダを連れて魔族の集落のすぐ近くに転移。

バルイルドさんに説明をし、広域に結界を張っておいた。


それから一応暮らせる住居としばらくの食料。


後は…


「ねえリョダ?取り敢えずしばらくはここで暮らしてくれる?…よし、繋がった。…念話?取り敢えず何か困ったら僕を思い浮かべてよ。つながるからさ。あー、後はそうだな…」


僕はインベントリから教本のような物を取り出しリョダに渡した。


「襲ってくる神?やられっぱなしはむかつくでしょ?それをよく読んで修行しておいて」

「はっ。勅命、賜りました」


「あー、うん。…ほどほどにね?あんまり無茶はダメだよ?」

「はっ」


どうやら彼等、元々メチャクチャ真面目な性格らしい。

なんだかすんごく強くなりそうだけど…


何より僕が解呪したことで擬態?のレベルが爆上がり。

かなりのイケメンが立っていた。


…まあいっか。


「んじゃ、僕は帰るよ?何かあったら連絡、だよ?あとヒューマンは食べちゃダメ。魔物は好きにしていいからさ。いいね?」


そう言い残し僕はティアと転移した。


後は例の教皇だ。


はあ。

面倒くさい。



※※※※※



ジグルダの件がどうにか済んだことで、僕はため息をつきつつも少し気を抜いていた。


転移して戻った王宮。

もちろんバレないように、外灯の届かない庭の隅に転移したよ?


そして何もなかったように王宮を進む僕とティア。

何故か慌しく兵士たちがざわめいている?


「…あれ?…どうしたんだろ?」

「ええ。すべて解決したはず…っ!?ライト様っ!」


ティアの感覚から、あの男“教皇の波動”が失われた。

ほぼ同時に僕に繋がっていた教皇の魔力が途切れる。


「っ!?ええっ?!ど、どうして?…くっ、ティア、執務室へ行くよっ」

「は、はい」


僕はおもむろにティアの手を取り、執務室へと飛んだんだ。



※※※※※



結果として。

教皇ルベストイは逃げていなくなっていた。


しかもどういう理屈か分からないけど…

僕の追跡を無効化していた。


(目覚めた?!…いや、違う…協力者だ――王宮の中に、教皇派がいる)


女神を奉る聖教会。

実はかなりの力を持つ組織だ。


いまだ教皇の“狂信者”がいた事実。


国王の執務室は怒りの波動に包まれていた。


「…すまない…ライト…」


うなだれ頭を下げる国王。

悔しそうに俯くロキラス殿下。


そんな僕の感覚に、小さな悲鳴が届く。


「っ!?…あの時の女の子?…まさかっ?!」


教皇と初めて会ったときにいた少女。

彼女に危機が訪れていた。


「くそがっ!!!」


僕は怒りに囚われつつも転移した。

そして目撃する。


権力に、力に憑りつかれ――

他人を見下すその悍ましいヒューマンの本性。



僕の想定を超える、別の星の生き物の感情を。


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