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第33話 侵略者、異星の神の眷属たちの胎動

聖協国リーディルド―――降臨の間。


数年前に突然現れた、自称神の使い。


『隻眼のジグルダ』は苦虫をかみつぶしたような顔をしながら魔力で起動している水晶玉を睨み付けていた。



「くそっ、何なのだあのガキは。…見た目の魔力は…ふむ。俺よりは低い――だが…」


先ほどもたらされた報告。

保護し、呪縛で捕らえていたマイハルド王国の教皇ルベストイの姿が突然消え失せていた。


もちろん自分にとってあの男に大した価値などない。

たまたま国内有数の貴族家の系譜。


正直数多ある金づるの一人。

死のうがどうなろうが興味はない。


しかしそうはいっても一国の教皇にまで上り詰めた男だ。


それなりには楽しめると思っていた矢先、まるで『おもちゃを取り上げられた』ような口惜しさにジグルダは囚われていた。


「失礼します」


そんな彼の部屋に入ってくる妙齢の女性。

彼の信者の一人、ルアッタだ。


「…なんだ?…ふん。…『神への奉仕』か?―――ちょうどいい。こっちへ来い」

「はい」


今この国はすべて自分の思い通りに動かすことが出来ていた。

理由は分からないが自身の中に存在するすさまじい力。

そして見つめるだけでほとんどの者は彼に逆らえなくなっていた。


最後まで抵抗した第3王子、ムッハバラードですら調教が完了。

そしてマイハルド王国へと攻めさせることが出来たというのに。


ジグルダはおもむろに今部屋に来たルアッタを乱暴に抱き寄せる。


「っ!?あ、あんっ…ジグルダ様…」

「ふん。物好きな女め…ふう…確かに良い…心が躍るな…」


手を引き自分の膝の上に乗せ、楽しむジグルダ。

『神による祝福』――そう信じているルアッタは感動に打ち震える。


その様子。

洗脳されているとはいえ――あまりに滑稽だ。


だんだんと嗜虐的な欲望が膨れ上がっていく。


「…そろそろ頃合いか?…ルアッタ」

「は、はい…」

「…『神の世界』へ招待しよう」

「っ!?ついに……っ!?―――ひぎいいっ?!!」


突然経験のない激しい痛みがルアッタの首に駆け抜ける。

噛みつかれ引き裂かれる首。


消える意識―――

まるで糸の切れた人形のようにルアッタは崩れ落ちた。


敬虔な信者の表情を張り付けて。



「ふん。脆弱な…しかし…この肉の匂い…たまらぬ」


そしてまるで獣が咀嚼するような悍ましい音が、彼にあてがわれた降臨の間に響き渡っていた。


「くくく…力がみなぎる…やはり『肉』は女が良い…」


独り言ちるジグルダ。

その様子はまるで獣。


間違いなくこの星の生物ではない。



誰も経験したことの無い『異質な魔力』を噴き上げさせていた。



※※※※※



「ふうん。『神の使い隻眼のジグルダ』ね。…そいつ強いの?」


「はっ。残念ながら今我が国は奴に全権を握られております。私は最後まで抵抗したのですが…気付けば軍を挙げ、マイハルド王国へと攻め込んでおりました」


マイハルド国王の執務室は静寂に包まれた。


いきなり姿を消したライト。

今度は聖協国リーディルドの第3王子、ムッハバラードを同行。


驚愕の告白をしていた。


ごくりとつばを飲み込む音が響く。

どうにか再起動したロキラス殿下が、低い声で問いかけた。


「ムッハバラード王子…では今回の襲撃、直接の原因は教皇ではなく、その“ジグルダ”と言う男の指示なのだろうか」


「貴殿は…そうか。貴殿があの閃光、ロキラス副長か。…ええ。確かにあの男、ルベストイからそのような要請は来ておりました。しかし実際に動く指示を出したのは間違いなくジグルダです」


眉間にしわを寄せながらも悔しそうに零すムッハバラード。

操られようが事実として彼は我が国に攻めてきた。


そして敗戦。


この先は政治的決着の話し合いが待っている。


「…ムッハバラードよ」

「…はっ」


国王は静かに問いかける。


「今回我が国には大きな被害はない。ここにいるライトと女神ティアリーナさまのおかげでな」


「っ!?なっ?!…おおっ、ま、まさか…女神ティアリーナ様…降臨なされたのですね…」


途端に顔を染め、敬うような表情を浮かべる。


確かに失われて久しい女神様。

すぐ近くにいる今の状況―――正直彼には刺激が強すぎだろう。


「ふう。まあそういう訳だ。…此度の騒動、すでに情報は広がっている。だが今のそなたの国の状況、楽観視は出来ん」


大きく息をつく陛下。

そして真剣なまなざしを僕へ向ける。


「…ライト、それから女神様。…恥を忍んでお頼み申す。どうか、かの国、聖協国リーディルドの平定――ご助力願えないだろうか」



まあね。

当然そういう流れになっちゃうよね。


僕はちらりと父上とティアに視線を投げる。

一応僕はまだ父上の庇護の下にある。


僕が決めるわけにはいかない。


僕の視線に気づいた父上は顔をひきつらせた。

そしてその様子に、陛下はじめこの場に居る重鎮全ての視線が父上に注がれた。


「ぐうっ、ラ、ライト?ここで父に決断しろ、と?」

「はい。だって僕、――まだ9歳ですよ?」


にっこり微笑んで見せた。

なぜか父上怒ってる?


てへ♡



まあ冗談はともかく。


乗り掛かった舟だし僕には楽しい学園生活が待っている。

何よりそいつのおかげで多くの人が死んでいる。


許せないし、“面倒ごと”は片づけておきたい。


「ノイド様?わたくしからもお願いします。どうかライト様の参戦、お認めいただけないでしょうか」


「め、女神様まで…はあ。…ライト、勝てるのか?」

「ええ。とりあえずそのジグルダ?捕まえて国中を解呪します。それでだめなら…」


「…ダメ…なら?」


僕はにっこり微笑んだ。


「少しきつめのお仕置き、ですかね」


何故かここにいる全員が大きくため息をついた。


ええっ?

皆殺し、とかよりよっぽどいいじゃんね?



解せぬ。


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