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第2話 追放?!おいっ、ここでだまし討ちだとっ!?

「まあ立ち話もなんじゃ、座るといい。もっとも大筋(おおすじ)はもうお主に伝えたがの。ふぉふぉ、特別に『神しか飲めぬ』史上最高級のお茶をご馳走しよう」


珍しくかいがいしくお茶を用意するファナンガス。

俺はつい毒気を抜かれてしまう。


「お、おう。すまん」

「なあに。達成した“おまけ”みたいなもんじゃ。さあ」



※※※※※



きっと油断していた。


性格のひん曲がった創世神。

神はその力ゆえ“嘘”はつけない。


俺は不覚にも新たな世界の話を聞き、すっかり警戒心を無くしていた。


そいつの差し出すもの。

『まとも』なわけがないのに。



※※※※※



「……ん?……ぐうっ、ぐあああっっ!!……な、何が?!……」


お茶を一口――経験のない嫌な痛みが全身を駆け巡る。

獲得したスキルが封じられていく。


「ふふん、言ったじゃろ?『神しか飲めぬ』と。確かにお主は100%達成した。すでに敵はおらんじゃろう。じゃが神ではない。……正直驚いたわい。じゃからお主の願いを叶えてやる。――ただし」


何かしゃべっているようだが、それどころではない。


散々死んで来た。

でも未だ経験のない苦しみに、俺は戸惑っていた。


不謹慎かもしれないが俺は死ぬことには慣れ過ぎた。

恐怖などとうに感じなくなっていた。


だけど…

いくら性格破綻者とはいえ“だまし討ち”は酷くないか!?


「悪いが“追放”じゃ――お主は強すぎる。『この世界は飽きた』…ちょうどよかろう?」


淡々と語るクソジジイ。


「追放先は惑星ミラリルス――以前お前さんが行っていた世界よりはハードモードじゃな……」


(クソッ…何勝手に決めてやがる…くうっ?!…ぐああ……)


「一度しか言わん。…もっともお主はそれどころではないがの。ふぉふぉ、すまんが力を封じさせてもらった。…我慢せい」


(…だんだん…意識が…追放だと?!)


「…わしは既にお前を認めとる。レジストされてはかなわんからの。なあに、時が来れば思い出すじゃろう」


(…くそっ、次に会ったら…そのツラ、ぶっ飛ば…してや…る)


「ふん。次はないわい。さよならじゃ」


さらにファナンガスから神々しい魔力が立ち昇る。


「……じゃが頼む。あの世界救ってくれ。わしの大切な娘、女神ティアリーナを助けてやってくれ……何ならお主の女にしてもよい。いい女じゃぞ?……お主しかおらんのじゃ」


(……なに……ぶつぶつ……言って……い…やが…る………)


「もう聞こえぬか……サービスじゃ。まあ“追放”という非道な行いの対価じゃな。一応記憶は封印させて貰う。じゃがその力、最初から使えるようにしておこう」


すでに消えつつある頼人。


ファナンガスはここぞと全魔力を揺蕩らせ刻み込む。

渾身の『呪いに似た祝福』―――異性から異常に好かれる定め――


それは、創世神がずっと恐れてきた“力の暴走”を防ぐため。



誰も制御できない超絶者。

(…すでにわしの力ですら届かん…くくっ)

力ではコントロールのできない怪物――


ただ解き放つこと――

まさに宇宙が滅ぶ。


なにより――

(ふん。お主はわしのお気に入りじゃ。あきらめろ)



ルードイーズでの果てなき繰り返し。


幾億回もの死と再生の地獄に、頼人は“人を愛する”感情をすり減らしていった。


それしかない。

心ときめく愛情――過剰までの濃度で。


ファナンガスは確信していた。


「……普通は狂うのじゃ。あのスキル持ちはな。……お前は本当の凡人じゃ。英雄ではない。……だからこそ最後の希望。頼む…全て終わればお主は晴れて自由の身。好きに生きるといい」


(………な……んだ……この…つたわ……る……想………い………………)



俺の意識は――完全に消えていったんだ。



※※※※※



―――なんだ?

……まぶしい?


「……おおっ、元気な男のお子様です。ノイド辺境伯様、おめでとうございます」

「なんと!?……黄金の魔力?この子は……神の使徒か?」

「ああ、可愛い。私とノイド様の赤ちゃん……さあ、ママですよ?」


なんだ?

何が起こった?


……俺は今生まれたのか?


……俺?

………誰だ?


そして意識はまるで溶けるように消えていった。



※※※※※



「……お母様、このご本読み終わりました」

「まあ、ライトは本当に賢いのね。まだ3歳なのに」


あれから3年。

僕、“ライト・ガルデス”はどうやらこの世界ではない“違う世界の記憶”があるようだ。

モヤモヤしてよくわからないけど……


未だに自分が誰なのか分からないし思い出せない。

でも……何故か誰かに頼まれたような気がする。


『女神ティアリーナを助けてやってくれ』


「……女神ティアリーナ様…」

「まあ、ライト?女神さまの名前を口走るなんて、信心深いのね……誰に聞いたの?」


「えっ?あ、えっと……忘れちゃいました」


笑ってごまかす。

そんな僕をお母様は優しく抱きしめてにっこりと笑う。

とても満ち足りて幸せだ。


でも……

心の中の『もやもや』はいつまでも消えない……


僕はこの国、マイハルド王国のガルデス辺境伯家の長男として転生したらしい。

僕を抱きしめているのはお母様ミリナ・ガルデス。


輝くような金髪にやさしげな青い瞳のお母様。

とても3人も生んだとは思えない。

若々しくて可愛らしく美しい女性。


子供のくせにそんな感想が浮かぶ。

(…転生したからなのかな?我ながらマセガキだよね)


………確かお母様はまだ18歳だったはず。

うん?

じゃあお姉さまを生んだのって13歳?


(…異世界やべえ。)


僕には2歳年上のキャルン姉さま、1歳年下のルードリッヒという弟がいる。

お父様のノイド・ガルデスとお母様、そして3人の子供。


辺境であるこの地ガルデスを治める辺境伯一家だ。


お母様とお父様は僕が見ても恥ずかしいくらい仲がいい。

きっとまだ子ども増えるんだろうな…


そんなことを考えながら僕はお母様に抱きしめられていた。



胸の奥でくすぶる“よくわからない想い”を抱えながら。


静かに僕の物語――運命はその産声をあげたんだ。



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