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第23話 王都へ行く前の後始末1

まさに伝説級の戦いを終えた闘技場。

悪魔たちの興奮は冷めやらない。


崩れ落ちた舞台に未だくすぶる黒煙。

先ほどの激戦の跡が生々しく刻み込まれていた。


そんな中ふいにイスペリアが僕に近づいてきてマイクを模した魔道具を渡してきた。


「ん?マイク?……え?なに?」

「ライト………さま、これから起こる危機、あなたから私たちに、伝えてはもらえないだろうか。あとよければ、あなたの魔力、見せつけて欲しい。我々を納得させてください」


うわあ、イスペリア…僕に敬語?

確かに僕の方が遥か格上だけど。


……なんか気持ち悪いよね!?


「うん、わかったよ。ねえイスペリア?」

「は、はい」


「普通にしゃべってくれる?くすぐったい。僕はまだ9歳だよ?確かに強いけど、だからといって威張る気はないんだ」


僕の本音だ。

イスペリアは難しい顔をして――そして大きくため息をついた。


「っ?!…はあ、分かったよ“ライト”……ここまで格が違うか……ああ、どうして魔王様がお前を慕うのかが分かってしまうな。……数々の無礼、謝罪する」


「うん。謝罪を受け取る。じゃあ貸して」

「ああ」


僕はイスペリアからマイクを受け取り悪魔の皆を見渡した。


「ねえ、ルイ?」

「ん?」


「僕の魔力、ここなら全開でも大丈夫かな?結界“6重構造”だよね」


「……むう、ライトマジ何なの?せっかく自慢しようと思ったのに……うん。問題ないよ?……正直ボクも見てみたい。……ライトの全開」


僕は改めてここの結界の構造を調べてみる。


ふうん、きっと賢い悪魔がいるんだね。

防ぐというより“躱す”設計だ。

散らしながら変換させるんだね。


悪魔、皆への回復とかへ。

ルイもすでに腕治ってるし?


よしっ。

久しぶりの全開、実は僕も楽しみだ。


僕は静かに目を閉じ、あの一億年の地獄に想いを馳せる。


沸き立つ想い。

そして練り上げる。

限りなく長かった試練で獲得した僕の全魔力。


音が消え時間が概念を失い――

大気が僕の魔力に塗り替えられていく。


空間が振動を始めた。


「っ?!!!」

「ぐうっ?!!!!!」

「っ?!!う、あ……」


すぐ横にいるルイとティア、そしてイスペリアが(うずくま)る。

でも…

苦しいというより歓喜の表情だ。


うん。


僕は皆を“いたわる気持ち”を乗せている。

もし怒りとか、負の感情を乗せてしまえば。


――魔力だけできっとすべてが滅ぶ。


僕の獲得した魔力。

すでに比べるべきものはない。


(ああ、高ぶっていく…なんて心地い…)


経験のない感覚が体を突き抜ける。



そして僕は全開の魔力を放った―――――――



※※※※※



結果的にマイクのような魔道具は不要だった。

僕の魔力に包まれた皆。


全員に僕の想いが伝わり、同時にあり得ない幸福感と充足感に包まれ気を失ってしまった。


あー、特に女の人達?

そ、その……全員、えっと……


いわゆる圧倒的な“多幸感”に包まれて…

それがきっとかなりの体感時間になったんだろうね?


全員僕を見るだけで。

恍惚とした表情で頬を染め、まるで夢心地のように見つめてくるようになってしまいました。


うん。

僕大きくなったらきっと世界一の『たらし』になっちゃうかも……

ハハハ、ハ。


男性の皆さんも何故か尊敬のまなざしを向けてくるし……

一部の人はやばいねっとりとした悍ましい視線?


うあ、僕大丈夫かな……

ちょっとだけ後悔しています。


何はともあれこれ。

今ここにいた悪魔の皆さんは二度とこの世界の他種族に『おいた』をすることはなくなった。


心というか魂に刻まれちゃったんだよね。

僕という絶対者を。


それから悪魔の皆さん全員がレベル上限まで成長しました。

僕の魔力が馴染んだみたい。

たぶん直前に比べ数倍は強くなったんじゃないかな。


何より心強い仲間が出来た瞬間だった。




(でも…よかった。コントロールできた…もし、怒りとかだったら…)


恐ろしい想像に一瞬体が震えたのは内緒だ。



※※※※※



「ライト様♡」

「ライト♡」

「ライトキュン♡」


えっと……


魔王城を後にし、今僕は魔族のところに来たのだけれど……


何故かティア以外にルイとルザーラナの二人まで着いてきちゃったんだよね。

アピールがやばい?


……うう。


「ライト様はいけずです♡あんなにすごいの……初めて♡ティアはもう、たまりません♡」

「う、うあ?ティア?えっと、う、嬉しいけど……そ、その、くっつきすぎ…」


なんか接着剤でも使ったの?

ていうくらい僕に密着するティア。


あう、彼女の感触と香りに、僕はくらくらしちゃうよ?


さらに反対の腕は…‥


「むううっ、ライト、ボクを見て♡ヤダヤダ、もっとかまって!!」

「うあ、ル、ルイ?こ、これじゃ僕、歩けない…うわあっ?!」


凶器であるしっかりと成長した体を僕に押しつけてくるルイ。


ぼ、僕確かにティアくらいが好きだけど……

前世の『俺』と違って、正直大きくても嫌いなわけではないんだよね?


ドキドキしちゃうじゃん!!


そして後ろから更なる重量感。

なぜか目をハートにさせているルザーラナまでもが僕に抱き着いている。


「ライトキュン♡うちは3番でいい♡だからいっぱい…うちのこと♡」


正直彼女もとんでもない美少女だ。


悪魔なので実年齢は数千歳。

でも見た目13歳くらいのあどけなさが残る少女。


青く輝く髪をひとまとめにし、銀色の瞳が輝く。


華奢なのにしっかりと主張する成長した体……



うー、もう僕の理性、限界です。



※※※※※



確かに僕は全開の魔力でみんなを包み込んだ。

そして乗せたのは『親愛』のイメージ。


言い訳のようだけど。

決して『いかがわしい』想いはのせてないよ!



どうしてこうなった?!



※※※※※



全身を甘い女性の香りに包まれ、色っぽい声でささやかれ続ける。


ここは天国?


そして一瞬放された僕の手を取り、目を潤ませるルザーラナ。

僕の心臓はドキドキが止まらない。


「……ライトキュン、この手でうちを…」


ダメだ。


これじゃあ僕おかしくなっちゃう。

僕は心を鬼にして、『塗り替える』ように少しだけ怒りを乗せた魔力で3人を包み込んだ。



空気が変貌する。

まるで怖気が具現化したような、鋭く突きさすような魔力が立ち込める。



「っ!?う、うああ、ああっ?!!!!」

「あうっ?!」

「っ!?ひいっ…」


直立し冷や汗を流し始める3人。

ボクを見つめる瞳に恐怖の色が浮かび上がる。



僕から後ずさる。


少し、いやかなり――悲しくなっちゃうけど。

仕方ないよね?


僕は魔力を解除し、今度は優しさで彼女たちを覆う。



少し癒してあげないとね。



「ごめんね?でも僕は普段のティアが、そしてルイが好きなんだ。もちろんさっきの二人はスッゴク魅力的だよ?だけど僕まだ9歳なんだ。――分かってほしい」


うう、みんな目に涙をためて…

コホン。


「……ていうかルザーラナ?君、僕のこと知らないでしょ?目が覚めたなら送ってあげるから……城にお帰り?」


僕は優しく3人に話しかける。

少し落ち着いたのかティアがゆっくりと僕に視線を向けた。


「……好き♡」

「……はあ?!」


えっ?

どういう事?


そして今度は恐る恐る僕の手を握るルイ。


「はあ……もう君は酷い人だよ?こんなのもっと好きになっちゃう♡」

「へ、へえ?」


あう、気が動転して変な声出ちゃった?!


ええっ?

どういう事?


僕のこと…怖くないの??


さらにはルザーラナ。

いきなり土下座をし僕に懇願してきた。


「ライトキュン。お願い。うちも連れて行ってください♡」


もう意味が分かんない。



「コホン。と、とりあえず用事を済ませたいからさ、3人はここで待っていてくれる?話はそれからで。ねっ?」


このままじゃいつになっても用事を済ます事が出来ない。

僕は取り敢えず先送りすることにした。



「……はい」

「しょうがないよね…分かったよ」


「……う、うん」


ふう。


それじゃさっきからこっちを魔眼で『ガン見』していたバルイルドさんに所へ行くか。


僕は3人に背を向け歩き出し、転移した。



※※※※※



ライトが去った草むら。

3人の女性からピンク色のオーラが爆発的に沸き上がった。


「ふう。ライトやばいよね?」

「ええ。悔しいですがあなたと同じ意見ですわ」

「うにゅうう。スキ♡」


ライトがさっきこの3人に行った仕打ち。

それはまさに『スケコマシ』の手段と変わらなかった。


最初にとんでもない快感を与え、そして恐怖で縛る。

その後柔らかい優しさで落ち着いて諭す。


ライトは無意識でそれを完璧にやり切っていた(笑)


「ライト様のあの魔力……わたくし女に生まれて良かったと、心から思いましたわ♡」

「うん。あれはやばい。うちの悪魔たち全員ライトの子供欲しがるよ?全員完全にありえない幸福感に包まれちゃったからね」


ライト全開のいたわりを含んだ魔力。

まさにとんでもない感動が突き抜けていた。


「そしてあの恐ろしい魔力……今思い出しても服従しかありません」

「……ちびっちゃった…うち」


顔を赤らめカミングアウトするルザーラナ。

その髪をルイが優しく撫でる。


「うんうん、その後のあの穏やかな優しさ……ライトあれ、素だよ?もうティア、ライト何人女作るつもりなのかなっ?」


「し、知りません。……うちにもすでにわたくしとは別に2人ほど……ライト様のこと好きな女性が…おりますし…」


思わずティアリーナは俯いてしまう。


「はあっ?ライトまだ9歳でしょ?――どうなってるのよっ!!」


ルザーラナがそおっと手を挙げる。


「あのー、ルイちゃん?ライトキュン、王都に行くって言ってなかった?…何しに行くの?」

「むう、“魔王様”と呼んでよね。もう。……んん?そういえば何でかは知らないや。……ティア?」


突然青ざめるティア。

そして呟いた。


「まずいですわ」

「はあ?」

「ライト様……学園に通われるのです」


――学園。

それは青春の詰まったパンドラの箱。


静寂とともに3人の背筋に寒いものが走りぬける。


「う、嘘でしょ?ねえ、ティア。嘘って言って――!!」

「うわあああ、ライトキュン、絶対にモテモテになるよおおおお――!??」

「どどど、どうしましょう???」


女三人寄れば(かしま)しいというが。

すでに3人はこれから先より姦しくなってしまうであろう展開に頭を悩ませていた。



夕刻を迎えやけに涼しい風が3人を駆け抜けた。


「面白かった」

「続きが気になる」

 と思ってくださったら。


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面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!


ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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