第22話 魔王と女神の一騎打ち
転移した先。
魔王城の中にある空間魔術と多種結界で構築されている空中闘技場。
球体状にくりぬかれた空間。
50メートル四方の舞台が形成されていた。
どこかで見た漫画のような舞台。
物理法則を無視したような荘厳な意匠を凝らしてある装飾の数々――
異質な空気。
纏わりつくそれはまるで今から始まる世紀の一戦を予見させるかのようで。
気付けば多くの悪魔が周りの観客席にひしめいていた。
そして舞台中央。
ツルピカになったイスペリアがマイクを持ち、待ち受けていた。
「あれ、イスペリアじゃん。なにしてるの?」
「うぐ、ラ、ライト……さま。……見ての通りだ。魔王様に命令され私はこの戦いの審判を任された。公平にジャッジする事、ここに誓う」
瞬間狼狽し――でも覚悟の色に染まるイスペリアの瞳。
ああ、彼も。
「……ふーん。分かったよ。お願いね」
「っ!?……フハハ。……ああ、任せてください」
「うん」
イスペリア、吹っ切れたみたいだ。
悪魔はみんなルイにぶっ飛ばされたんだっけ。
怪我しているものが多い訳だ。
『れでぃーすえーんどじぇんとるめん!!』
突然鳴り響くコール。
『はーい。実況はうち、超プリティ、悪魔のアイドル、ルザーラナちゃんがお送りいたしまっす♡』
ルザーラナ?
んん?
聞いた名前……
ああっ、魔族の集落の監視をしていた魔将か。
てか何でここにいるの?
僕の結界を通り抜ける?
それか……条件を満たした?
つまり『ヒューマン族に対し敵意がない』という事だ。
「ハハッ。」
面白い。
せっかくだから僕はゆっくり鑑賞させてもらうとするか。
こんなに悪魔がいるのに、ティアを恨む気持ちがほとんど感じられなかったんだ。
「ティア」
「はい」
「ルイ」
「ん」
「もしどちらかが“死にそう”になったら僕は止めるよ。良いね」
「「はい」」
「ん。二人の力、僕に見せて」
そう言って僕は転移して用意されていた特等席に座る。
ルイのイメージ。
僕は既にここの仕組み、理解していた。
そしてゆっくり離れる二人。
20メートルくらい離れたところで向かい合う。
一瞬の静寂が闘技場を支配。
固唾を呑む観衆。
「それではお二人、存分に。はじめっ!!」
「「「「「「「「ワアアアアアアアアアーーーーー」」」」」」」
『さあっ!世紀の一戦、開幕だあああああああっっっ!!!!』
同時に二人から濃厚な魔力が吹き上がる。
さすがは女神と魔王。
ケタが違う。
「ふっふーん。久しぶりに本気出しちゃう♡はああっ、『魔刻闘気』!!!」
解き放つ秘術。
ルイから黒いオーラが吹き上がり、体にまとわりつく。
まるで鎧。
禍々しいそれは黒く煌めき――彼女の姿が掻き消えた。
「っ!?」
ティアリーナの目の前で空間が弾けた。
ズドオッ!!!
体の芯まで響くような衝撃とともに轟音が響き渡る。
一撃。
まさに一瞬でスローモーションのように舞台のほとんどが崩れ落ちた。
「ふう。さすがは下品な魔王。技も下品ですね…ならばっ!『聖樹纏衣」
濛々とわく土煙。
光輝くオーラが清廉な衣へと変質、その輝きを増しそれを吹き飛ばした。
無傷のティアリーナ。
その視線をさらに鋭くさせ、ルイを睨み付ける。
「ふっふーん。まあこのくらいじゃ終わらないよね♡どんどんいくよっ!!」
「ええ。可愛がってあげます。いらっしゃい」
掻き消える二人。
交差する光と闇。
そして目にもとまらぬ瞬速の攻防が始まる――
空間を軋ませながら交差する数多の攻撃。
認識の限界を超える速度に悪魔たちはただ固唾を呑み、視線だけを巡らせていた。
『凄い速さだ―――!!!先手を取るのはどっちだあああああ―――――!!!!!??』
ドンッ!!!!
ガッ!!
「ハハッ!良いですわ」
ズドンッ!!!!
「ふん、そっちこそ!」
ゴゴゴゴオオオンン!!!!!!
衝撃音が響き渡る闘技場。
そのたびに闘気がはじけ飛び、ビリビリと衝撃波が生み出されていく。
すでに戦いは伝説級にまでその内容を濃く昇華させていた。
「凄い……ハハ、二人とも凄いや。はあ、久しく忘れていた感覚……たぎっている?僕が?!」
「はあああっ、これでえええっ!!!」
「ちょこざいなああああ!!!」
中央の空間が弾ける。
二人がっぷりと組み合い、お互いの魔力が均衡し激しい魔力光をほとばらせた。
「なかなかやりますね……認めます。あなたは“最強の魔王”です」
「そっちこそ。さすがは『くそチート』の女神様だ……でも、勝つのはボクだああああっっ!!!」
ルイの魔力が一瞬途切れた。
次の瞬間―――
カッ!!!!
ズドオオオオオオオオ――――――――――ンンンン!!!!!!
激しい爆発が衝撃とともに大音量で響き渡る。
ティアリーナが体中から血を噴き出しながら、落下していく。
「っ!?ティア?!……いったい…はっ!?」
ルイが右腕を捨てた。
根元からちぎれたそれを魔力暴走させ、起爆したのだ。
「へへっ、どう?ボクの必殺技…さすがに、効いた……で…しょ…」
大量の出血にふらつくルイ。
どうにか魔力をたぎらせ止血、落ちていくティアを視線で追う。
「……ふう。しんど。……なっ?!…キ、キャアアアアアアアーー?!!」
「貴女の覚悟、受け取りました。――これで幕です」
突然ルイの目の前に出現したティアのボディーブローがルイの腹をえぐり、彼女を吹き飛ばした。
完全に気絶したルイ。
僕は瞬時に彼女を抱え、僅か残された舞台へと降り立った。
『け、けっちゃーーーーくうっ!!勝者、女神ティアリーナ―――――――!!!!!』
「「「「「「「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーー」」」」」」」」」
流れるアナウンス。
魔王が負けた。
でも。
悪魔たちは正々堂々戦った女神を湛えていた。
やっぱりこの星の皆は……
いい奴等だったんだ。
ルイを抱きかかえる僕にそっと近づくティア。
僕は優しくルイを下ろし、ティアを抱きしめた。
「凄いね。強かったよ。ティア。……そしてルイもね」
「ふふっ♡抱きしめてくれるの、3回目ですね。……大好きです♡」
「う、うん。僕も……ティアが大好きだよ」
思わず見つめ合う僕とティア。
すると下からうめき声とともに怨嗟の籠った声が響く。
「ずーるーいー。……まあ、負けたボクがいけない、か。……あーあ、きょうは完敗だね」
「ふふっ。強かったですよ?……“ルイ”」
「っ!?……う、うん。……“ティア”」
女神と悪魔族との長きにわたる因縁。
深い彼らの確執は、1度きりでは拭えない。
でも今日確実に、トップである魔王と女神はお互いを認め合った。
これはこの星が近いうちに迎える脅威に対し、大きな力となる。
僕は満足げに頷いていたんだ。
鳴りやまぬ拍手と歓声は、祝福のように――いや、この世界が確かにひとつになり始めた証のように響いていた。
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