第21話 僕の魔力、世界の改変
魔王の自室。
今まさに伝説に謳われる女神がその力を取り戻していた。
たぶん僕の次に強い。
ルイと同じくらいかな?
突然ルイが僕の腕に抱き着いてくる。
「ねえー、ボク頑張ったでしょ?ご褒美欲しい♪」
「うえ?!ご、ご褒美?」
「うん。女神ちゃんだけズルい。ボクにも……チューして♡」
「ええっ?!…そ、それは……ひいっ!??」
突然ティアから絶対零度の魔力が吹き上がる。
そして笑顔なのに笑っていない瞳が僕に突き刺さる?!
「ライト様?……しませんよね?……そうですよね?」
「あ、えっと……う、うん。コホン、ねえルイ、違うのじゃダメ?」
「むうー、ズルい、ずーるーいー!!ボクもライトとキスしたい!!」
駄々をこねるルイ。
うん。
何気に可愛い。
美形って本っ当に得だよね……
「はあ。この淫乱魔王。……ライト様はわたくしの唯一愛する人です。貴女は違う男で我慢しなさい」
「嫌です。ボクもライトが良い。大体女神ちゃんはボクに対してお礼とかないのかな?ボクのファーストキス奪ったくせに」
「ぐうっ?!そ、それとこれとは、は、話が…」
「違いません。責任取ってよね!!だからライトのキスで許してあげるからさ♡いいじゃん。減るもんじゃないんだし……ボクって優し――♡」
うーあー。
これは平行線のやつだ。
よし、話題を変えよう。
僕の“最強魔力”で黙らせよう。
「コホン。ねえ待って。それよりも僕の魔力でこの星覆った方が良いんでしょ?」
「……ふんだ。話し変えるし……はあ。…まあ、そうだね。うん。ご褒美は後でいいや」
ふう。
何とかなった、かな?
取り敢えず僕はあのクソじじいの魔力を再現する。
「ふうっ……んん? こう、かな? うん。いい感じ――どうかな?」
僕の体から黄金の魔力が迸る。
目を見張るルイとティア。
「はうっ!凄いですライト様…ああ、懐かしい…お父様の魔力……本当にすごい」
「あー。本当にライト、チートだよね。……ムカつくくらいおんなじ魔力じゃん。うわー、黒歴史がよぎる……」
どうやら完璧のようだ。
じゃあ次は……
この魔力を最大まで練り上げる。
僕は目を瞑り集中を始めた。
軋み出す魔王の自室。
「うあ、ラ、ライト?ここじゃもたない、外、外に行ってよ!!」
「あ、うん?ごめん。じゃあ…」
そう言い姿を消すライト。
そしてその直後。
世界は創世神の魔力に包まれた。
改変が始まる。
※※※※※
遠い異界の地。
星を包み込み数多の次元を超えるすさまじいライトの魔力。
それはあの創世神にまで届いていた。
「ふぉふぉふぉ。やっとお目覚めか……ふん、ライトめ。……じゃが本番はこれからじゃ。どれ、少しテコ入れしてやるかの」
杖をかざす創世神ファナンガス。
(ふん。しかし…凄まじいな。――すでにわしよりも遥か格上)
(あいつが凡人でよかったわい。もし英雄気質であったなら……)
(この宇宙、全ての次元――滅んでおったな)
ファナンガスは彼の神たる根源『運命操作』の強権を解き放つ――
刹那――遠いライトの気配。
それが意志を持ち明らかにファナンガスを捉えた。
「っ!?…カカッ。…わしの魔力に気づくじゃと?…末恐ろしい」
ニヤリと彼らしい表情を浮かべる。
「せっかくだ。楽しむとよい」
創世神の言葉――魔力を伴い言霊へと変質し数多の次元を超えていく。
その膨大な魔力は。
ライトが認識した魔力は。
全ての宇宙を包み込んだ…
※※※※※
ライト渾身の魔力発動。
彼を中心にまるでハリケーンのように大気は渦を形成、爆風のような風が音を立てミラリルス全体にその影響を及ぼした。
草木までをも包んだ魔力はやがて浸透していく――
トランス状態で黄金の魔力に包まれていたライトは静かに目を開いた。
「…ふうっ。これでこの星は包み込めたね」
霧散するすさまじいまでの魔力。
そして彼の感知が仕事をする。
「……うん?早速?…それにあのクソじじい…」
感じる懐かしくも“うんざりとしてしまう”あの波動。
「…まあ、悪い事じゃないか…今は放置で」
僕は独り言ち魔王の部屋へと転移した。
※※※※※
ああ、僕が感じたのは覚醒したヒューマン族がいたことを感知しただけだよ?
おまけに僕の魔力に反応したクソジジイの“悪戯”とかね。
どうやら僕とルイだけではないらしい。
まったく。
絶対にいつかぶっ飛ばしてやる。
※※※※※
僕が魔力で世界を包み終え。
戻ってきた魔王ルイの部屋。
何故か肌を刺すような恐ろしい気配に包まれていた。
「あれ?え、えっと、ただいま」
「……おかえりなさいませ、ライト様♡」
「……おかえりライト」
うん?
気のせい?
……いや、何かおかしい。
僕は恐る恐るティアに問いかけてみた。
「あ、あの、ティア?何かあったの?」
「いいえ?何でもないですよ…それよりもライト様…凄かったです」
にっこり笑うティア。
違和感。
そして僕がルイを見ると彼女が目をそらす。
いったい何があったの?
僕が困惑しているとルイが大きくため息をついた。
そしてゆっくりと僕に話しかける。
「ねえライト?今からボクと女神ちゃん、戦うけど。……良いよね?」
「え?」
「コホン。心配しないでいいですよ?コテンパンにしちゃいますから」
「はあっ?!」
どういう事?
僕は意味が分からずに固まってしまう。
するとそんな僕の手をティアが優しく握ってきた。
「ライト様、これは“けじめ”です。そして彼ら悪魔に見せなくてはなりません。わたくしの力を」
「そういう事。……まあ、それだけじゃないけど?ボク本当にライトが好きなの。だから恋敵をぎゃふんと言わせちゃうんだから」
「負けません。ライト様を想うわたくしの気持ち、思い知りなさい」
二人から闘気が吹き上がる。
部屋が軋み、目に見えるほど濃厚な魔力がまとわり出した。
ああ。
これはもう意地だね。
二人の真剣な気持ち。
僕は口出しできない。
「…分かったよ。でもここじゃだめだよね。転移しようか?」
「うん。ライト」
「ん?」
ルイが僕の手に触れる。
イメージが伝わってきた。
「…へえ。魔王城の中に空間魔術でできた闘技場があるんだね。ここなら他の悪魔も見る事が出来る……分かった。ティアも良い?」
「はい」
僕はイメージの場所を思い浮かべる。
そして二人と手をつなぎ、転移していった。
女神と魔王。
長き因縁、伝説の再現――
対決が幕を開ける。
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