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第20話 魔王との打ち合わせと封印解呪の儀

どうにか話し合いの状況にたどり着いた僕たち。

最初にルイに問いかけた。


「それでどういう事か教えてくれるんだよね?」


「うん。ライトは知らないと思うけど、ボクは前の魔王の後継者なんだよね。あいつら、侵略者のボスと同士討ちして消滅した魔王のね。……女神ちゃんはよく知っているでしょ?」


「……ええ。それについて、わたくしは謝ることしかできない。彼のおかげで時間を勝ち取った。だから今度は私も戦う。それに今は…ライト様がいる」


そういう事か。


その侵略者。

別の摂理である“異星の神”たち。


前の魔王はそいつらとの戦いで消滅していたんだ。


でも…

僕は腑に落ちない事がある。


「それでそいつらは今どうしてるの?みんな消えたの?」


「……あいつらは今この世界で擬態して潜んでいる。もっとも『あいつら』にその自覚はないけどね」


紅茶を口にし、僕を見つめるルイ。


「女神ちゃんの封印でそうするしか奴らは生き残れなかったんだ……でも女神ちゃんは仮とはいえ復活した。…最近魔物強いでしょ?」


「う、うん。……えっ?それってルイ達のせいじゃないの?僕てっきり…」


「酷いライト。確かにボクはあの創世神のおじいさんに『ヒューマンを鍛えよ。魔物の指揮権をくれてやる』とか言われたけど。でもボクは別にヒューマンに対して恨みなんてない」


真直ぐな瞳。

うん。

僅かな時間だけど僕はルイと色々話をした。


だからこれは間違いなく彼女の本心だろう。


「まあ真実を知らないイスペリアとか一部の魔将は凄く恨んでいるけど…取り敢えずボクが物理でいう事聞かせておいたから…今度はライトも指導してあげて」


物理で?

…思わず背中に冷たいものを感じ、身震いする僕。


「今この世界は、わたくしの施した封印で――どうにかバランスを保っています。


本当はもっと後で…

ライト様が大人になるくらいまでは保つと思ったのですが…」


「うん。あいつら進化を始めている。

魔物はね、この星の浄化作用でもあるんだよね」


言い終えお菓子を口に放り込むルイ。

僕とティアも紅茶でのどを湿らせた。


「浄化作用?」


「もぐもぐ…ヒューマンをはじめ、ある特定の種族が増え過ぎないように調整する役目。多分あの創世神の組んだプログラムだね。――そこを付け込まれた」


「それでどうしてティアの封印を解くの?そうすればその違う世界の神?

…そいつらまた来てしまうんじゃないの?」


ティアには悪いけど。

このままでも良いんじゃないのかな。


彼女が消えちゃうとかなら僕は嫌だけど……

魔物が強くなる程度なら僕が守ればいい。


「アイツらはね、対応するんだ。このままだときっとすぐに大量に押し寄せる。

女神ちゃんが弱い状態のままでね」


ルイの表情が険しくなる。


「悔しいけど女神ちゃんの力…今のところそれしか“あいつら”に対応できないんだ」


「えっ……」


ティアはなぜか申し訳なさそうな顔をする。


でもそれって……

僕も通用しないってこと?


「あー、あのね?ライトは絶対にあいつらに負けない。ボクの言い方が悪かったね」


そう言い、魔力を揺蕩らせる。

一部に混じるあのジジイの魔力。


「『創世神とかかわりがあるもの』…それがあいつらに対して戦える最低ラインなんだ。だからボクも戦えるよ?

……ねえライトさ、君、“創世神の魔力”再現できるでしょ?」


散々触れてきたあのクソじじい。

確かに僕はあいつの魔力のパターンは完全に理解している。


「だからさ、まずは女神ちゃんの封印を解いて、彼女が戦える状態にする」

「うん」


「そうするとあいつらが来る。つまりは“フラグが立つ”ってことだね」


成程。

つまりティアの封印解除、それがトリガーになるんだ。


「そのタイミングで、ライトが創世神の魔力でこの星を包み込む」


フラグを立てた後に改変?

なんかこんがらがってきた?


「そうすればこの星に生きる全てがあいつらに対抗できるようになるんだ。

あいつらはさ、強いというよりはズルいんだ。

簡単に言うとこの星の物理法則に囚われない」


…それは…まずいね。


「でも創世神の魔力で包み込めば……

その縛りが解ける。――勝てるよ」



んん?

それって今僕が魔力で包み込めば解決する話じゃないの?


わざわざティアの封印解かなくても…


「ライト様?魔王の言う事、補足しますね?

わたくしの封印を解かない状態でそれを行っても意味がないんです。

確かに時間は稼げるでしょう。でも『より進化』してしまう」


???

より進化?


「えっと……つまりですね、『わたくしが封印したから彼らが進化する』。いいですか?」

「う、うん」


「もし封印を解かずにお父様の魔力で包み込むと……

両方に対応したものに――そうなればもう誰も勝てません」


悲しそうな瞳。

切迫した心境が僕に伝わる。


「わたくしの封印に完全に対応される前に『対応しきれていない彼ら』を呼び寄せ滅ぼします。いわば彼らは“対応中”なのです。

私の封印が解かれると、それが確定します」


「――彼らは顕現した“その時”の特性に縛られます」


ああ。

『理解』した。


世界の(ことわり)、それを掴んだ気がした。


そうか。

そいつら……僕と同じだ。


つまり環境に適応する。

獲得してしまう。


だからどんなに強い物でも対応してしまうんだ。

そして今彼女たちが言ったとおりの手順なら。


女神の力のみに対応した状態が確定、すでにいるそいつらの状態が確定し。

その後の僕の改変、それには対応できないってことだ。


ハハ。

なんだよ、あのクソじじい。


これはまさに僕にしかできない状況じゃないか。


“追放”とか言っていたけど……

最初からここに置くための言い訳じゃんか。


全てを獲得した僕。

超絶くそスキル『死身刻命』


これはその摂理の違う、『異星の神たちのスキル』だったんだ。



「ねえ、今の僕なら勝てるのかな?」


「うん?もし今の君が勝てないのならゲームオーバーだね。

だから本当にもうギリギリなんだよ。

まあ、あいつら時間の概念あまりないみたいだから…

もしかしたら数億年後くらいまで来ないかも、だけどね」


紅茶を飲み、息を吐くルイ。

彼女の瞳が覚悟の色に染まっていく。


「でも今女神ちゃんの封印を解けば確実に釣れる。――だから勝てる!」



※※※※※



ふいによぎる創世神の言葉――


『……普通は狂うのじゃ。あのスキル持ちはな。……お前は本当の凡人じゃ。英雄ではない。……だからこそ最後の希望。頼む…全て終わればお主は晴れて自由の身。好きに生きるといい』


まったく。

性格が悪いにもほどがあるだろ?


分かったよ。

乗せられてやるよ。


でも。


絶対にぶっ飛ばす。


覚悟しておけよ?



※※※※※



「…分かったよ。で、どうすればティアの封印解けるの?」

「………うう」


何故か急にティアがモジモジし始めた?!


「あー、うん。えっとね……

まずは“鍵”となるボクと女神ちゃんがキスをして、それから……

ライトと女神ちゃんのディープキス、かな」


「………はい?」


なんだそれ?

キスで解ける封印?!


はあ。

…もう何も言うまい。


「一応ボク、そのためにまだ経験ないんだ。ファーストキスじゃないとだめだからね。ホントはライトとしたかったけど……しょうがないよね」


うあ?!

いきなり何言うのルイ?!


まあもちろん僕だって経験ないよ?まだ9歳だし。


「はあ。……じゃあ女神ちゃん、良いかな?」

「う、うん」


あう?!

ルイとティアが…儀式とはいえキス?


胸が高鳴る?!

美しく可愛い二人が…


「ゴクリ……さ、さあ……お、おいで」

「う、うん……あ、あの…お願いします」

「…うん」


ルイから清廉な魔力が吹き上がる。

幾何学模様の魔術陣が浮かび上がり、彼女の口辺りから強くそれはあふれ出した。


「…ん……」

「んん……」


二人、手のひらを合わせ魔力の質が同化していく。

まばゆい光に包まれる二人の美少女。



まるで神話の再現のような荘厳さ。

…一瞬でも興奮してしまった僕は心の中で反省した。



「ん」

「んん…力が…」


ティアの体がぼんやりと光を纏う。


「じゃあライト?女神ちゃん、仕上げちゃって!」

「……ライトさま」


うあ……

魔力を纏うティア

可愛い…でも。


神々しさに、僕は一瞬見蕩れてしまう。


(っ!?…封印解かなくちゃ……)


僕はそっとティアの手を取る。

流れ込んでくる封印解呪の手順。


僕はそれに倣い、魔力を噴き上げさせる。


「ライト様……『永遠の愛を…願わくはこの世界に祝福を』…」

「ティア…『…受託者としての誓い…いま果たそう…『アプセクト』…」


かわされるキス。

弾ける魔力―――


刹那――世界から音が消えた。

光が弾け、まるで祝福のように沸き上がる歓喜。

ティアから経験のない清廉な魔力が吹き上がりはじめた。


光を纏う伝説の女神ティアリーナ。


今この瞬間。



彼女は本来の姿を取り戻していた。



※※※※※



「…ん♡ライト様?…とっても上手でした……」


顔を染め、自分の唇をしなやかな指でそっとさするティア。


ああ、可愛い。

ティアは少し成長して18歳くらいの見た目になっていた。


僕は満足げに彼女を見つめてしまう。

…大きさ、変わってない。


「むう、ライト様のエッチ♡」


僕の視線に気づいたティアがつぶやく。



※※※※※



実は儀式―――


過去の大人だったころの感覚。

正直取り戻してしまっていた。


ティアとのキス。

彼女のぬくもり。


ああ、僕はもう―――

きみの虜だ。


光を纏いこの世界との共振を始める美しいティア。

僕は視線を離せなくなっていた。


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