第1話 ついに俺は達成した
天空の大宮殿。
神々しい光に包まれたその場所に、俺はまた立っていた。
――もう何度目になるか…思い出すのもバカバカしい。
「……はあ。やっと、か」
目的の部屋へ一直線。
ドアを蹴飛ばす勢いで開けた。
「おいっ!! これで満足かっ!? 終わったぞ、この野郎っ!!」
「大声を出すでないわっ!……ふむ。お主、真性のドMじゃのう」
──創世神ファナンガス。
ひょんなことから異世界に転生した俺を、このジジイは『神の試練』なる地獄に叩き込んだ張本人だ。
「……永かった……もう『何してるか』すら分からなくなるほどにな……」
「ふむ。まあ……そうじゃの」
まったりお茶を飲むジジイに、俺の怒りは沸々と沸き上がる。
「おい。――約束は間違いないんだろうな?」
「ひょ? 約束? 最近耳が遠くてな……」
俺は地獄一億年で得た究極の闘気を解き放つ。
ジジイを睨む俺の視線は、死ぬたびに数億回見てきた顔を追う。
くそっ。ぜんぜん堪えちゃいねえ。
「ふん。…余裕のない男は女に嫌われるぞ? わしはこの世界の創世神じゃ。敬うとかそういうのはないのかの?」
「そんな気持ちは1億年前に消えたわっ!!」
※※※※※
俺に課された試練。
魂に刻まれたスキル『死身刻命』を完成させること。
死ぬことで経験を魂に刻み、習得――まさに鬼畜なスキルだ。
転生1回目、単細胞生物として誕生するや即死。
次はミジンコ? ……その次? 鳥?――もう数えてられるかっ!!
たどり着くまで、たぶん数万回……いや、数千万回?
気づけばほぼ一億年。
あほらしすぎる。
ようやく“人間”として生まれた俺。
人間になってからも続く地獄。
目を開ける、体を動かす、声を出す――すべてが試練。
些細なことで死に続けた。
ロクに説明もないままで。
必死だった俺は――数多の魔物や俺を殺そうとするものを。
飽きるほど、辟易するほど殺し続けた。
――感情を代償として。
そして今日。
ついに人としての最後の死『老衰』を体験。
――スキルは100%完成。
俺は戻ってきた。
※※※※※
「ふむ。蘇我頼人よ、お主の願い……かなえよう」
認めさせたコンプリートの声。
だが、俺の心は冷めていた。
苦しみを二度と経験しないことは嬉しい。
でも達成感より虚無感が勝っていた。
――誰も隣にいない――なんか、うすら寒い。
「なあジジイ、結局――俺の命は何のための命なんだ?」
浮かぶ疑問。
…そして途中で気付いた違和感。
スローライフ?
絶対に違うだろ。
「ふむ。まあ、な」
「もう……二度とあの世界には行きたくない」
ふとよぎる、唯一の後悔――どうにもならなかった“あの子の顔”。
あの世界では…
あの世界ではあの子が失われた。
スローライフなど出来るはずがないんだ。
※※※※※
「ふむ。お主の願いとは少しずれるが……もう一つの選択肢がある」
「……選択肢?」
杖を掲げる創世神。
空間に、見たことのない世界が浮かぶ。
「新しい世界だ――名を『ミラリルス』という」
「…ミラリルス…」
「お主、最終的にレベルは幾つまで行ったんじゃ?」
「上限の1000だが」
「ふむ。ならばこの世界でも苦労することはないじゃろう」
この時、俺はまだ気づいていなかった。
ジジイの目論見、そして。
俺の運命を狂わせる、創世神の願いを―――
そして運命は加速する。
俺の想像をはるかに超えて。
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