第16話 すねる魔王と父上への報告
あれからすぐ。
ルイに懇願され魔王城にいるのだけれど…
「ぐすっ……ヒック……ライト…酷いよ…グスッ……痛かった……コワかった……」
「あー、ごめんね?……だから言ったじゃん」
今僕たちはルイの寝室にいた。
二人ベッドの上で、なぜか体を預け泣き続けているルイを慰めているところだ。
「むう、ぐすっ………なでなでしてっ!」
「あー、う、うん」
しょうがなく僕は彼女の髪の毛を撫でてやる。
うあ、すっごくさらさらしてる?
いい匂いするし…
ドキドキしちゃうじゃん!
そしてさらに僕に体を預けるルイ。
「うあ、ちょ、ちょっと、離れてよ。くっつきすぎ」
彼女の見た目は15歳前後。
実年齢は数千歳…コホン。
だけど……うん。
かなり大きいね。
お母様くらいあるかな?
まあ僕はどうしてもティアの方が良いのだけれどね。
そんな僕の感想に気づいたのか、なぜかジト目を向けるルイ。
そしておもむろに僕をベッドに押し倒そうと力を籠める。
「むうっ、こういう時は素直に押し倒されるものでしょう?テンプレも知らないのかなっ!?」
「そんなテンプレ聞いたことないけど?!」
僕はするりと抜け出してベッドの横にある椅子に腰を掛けた。
いい加減かなりの時間が経過している。
もう眠いし、そろそろ帰らないとティアが心配してしまう。
僕はため息交じりにルイに告げた。
「ねえ、もう縛りはないんだよね?…僕は帰るからさ、明日でも良いかな」
「えー?!なに、ライト帰っちゃうの?つーまーんーなーい!!」
駄々をこねベッドを転がりまわるルイ。
子供か?!
「コホン。さっきも言ったでしょ?僕はまだ9歳なの。もう眠いし。それにルイだって消耗したでしょ?…明日の朝には来るからさ。ねっ?」
こちらに真直ぐ『ぶすっつら』を向けるルイ。
何気に可愛い。
……美形は得だよね。うん。
そして大きくため息をつきベッドに倒れ込んだ。
「分かったよ。帰っていいよ。……でも明日ちゃんと来てよね。ライトの“結界”でボクたち誰も出られないんだから」
あ、そうだった。
うーむ。
でもまだ解除はできないよな。
「分かった。ちゃんと明日の朝に来るから。約束」
「ん。……あっ、そうだ。ねえ女神ちゃんも連れてきてよね」
「はあ?……なんで?」
「あの子の封印解かないと。先に進めないからだよ」
「えっ?どういう……」
「いーから。もう眠いんでしょ?この話始めると結構長いけど?」
真剣な気持ちが伝わってくる。
どうやらかなり深い話らしい。
「……分かったよ。連れてくる。じゃあね」
「うん。ばいばい」
そして僕は転移した。
転移の残滓がキラキラと輝く。
一人残されたルイは、そこはかとない寂しさに包まれた。
(……はあ。本当に帰るとか………ばか……)
何故かルイは顔を赤く染め――
そう呟きベッドに再度体を投げ出した。
※※※※※
真直ぐ帰りたい僕だけど。
一応数か所は回って情報を伝えなければいけない。
そうしないとずうっと“緊張状態”が続いちゃうからね。
まずは城壁の方かな。
……あーうん。
もう魔物は見えないね。
気配もないや。
あれ?
あれは……父上?
僕は父上の居る城壁の上へと転移した。
※※※※※
「父上」
「っ!?なっ?!…ラ、ライトか?!…お前、どうして……」
あー、メチャクチャ怪訝な顔してるね。
まあ仕方ないか。
「えっと父上、報告があります」
「う、うむ。どうした?」
「今僕、魔王と会ってきました」
「………………………は?」
……そうなるよね。
でも僕は挫けない。
こうなったら必要な事だけ伝えよう。
「色々あるので順を追って説明しますね」
「……う、うむ?」
「ここに襲い掛かってきた魔物の群れですが、もう帰りました」
「……」
「魔物を操っていたのは位階7のテイム魔法を使える魔族の男性でした。もう和解したのできっと数日後には城に来ると思います」
「……」
「そしてその魔族は家族を人質にとられていて…仕方なく。でも本当は戦いたくないんです。魔族は根が優しい種族ですから」
「……」
「えっと、それでその魔族を脅していた魔将イスペリアっていう悪魔にお仕置きして、魔王ギルイルドとお話とちょっと戦って、結界で閉じ込めたので彼らはしばらく出てこられません」
「……」
「以上です」
固まる父上。
横にいる参謀長のグラドールさんもぽかんとしちゃってるし。
うーん。
僕、次は魔族のバルイルドさんのところに行きたいんだよね。
「えっと、父上?」
いつまでもフリーズしているので僕は再度声をかけてみた。
「っ!?ハ、ハハハ、うむ。どうやら疲れているようだ。ライトの幻聴が聞こえるとは…」
あー、父上現実逃避しちゃってる。
しょうがない。
本当はゆっくり丁寧に伝えたいけど。
ごめんだけど僕はかなり眠い。
手っ取り早く少し『ビジョン』診せるかな。
僕は前の世界で戦って得た、ハエの魔王みたいなやつが使っていたマルチビジョンを発動させた。
空間にいきなり表示される僕の戦い?いや蹂躙の様子がいくつか映し出された。
目を見開く父上。
さすがにこれで認めるでしょ。
「なっ?!……う、うおっ?!!!こ、これをライトが……おお、神よ」
「凄まじい……これが神の御子、ライト様の……」
「神だ……我が領地には神がいらっしゃる……」
いきなり跪き涙を浮かべる領兵の皆さん。
やべっ、やり過ぎた?
眠いとはいえ少しぶっちゃけ過ぎた?
僕はあわてて魔術をキャンセルした。
「あ、あの父上?そ、その、勝手に外に出たことは謝ります。それでは失礼します。僕魔族の皆さんにも伝えなくちゃなので…」
「ライト」
「っ!?は、はい」
やべー。
父上真剣な顔してる……
怒られる?
すると父上は膝をつき胸に手をかざす。
まるで格上に敬意を示すような姿勢だ。
「ありがとう。お前のおかげで領民に死者を出さずに済んだ。…礼を言う」
「え?…そ、その…」
「だが後でお説教だ。……無事に帰ってきてくれ」
そして優しい瞳で僕を見てくれる。
胸の中で温かい気持ちが湧き出してきた。
「は、はい」
ああ、
良かった。
皆を守れた。
僕は満たされた気持ちで魔族のところへと転移していった。
「面白かった」
「続きが気になる」
と思ってくださったら。
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援、お願いいたします!
面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!
ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




