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第141話 美食の女帝ジョコビッチ・ディニールド

まもなく午後2時。


ノースルナーク王宮内“特設会場”。

宴の準備は万全に整っていた。


広い会場にはゆったりと座って楽しむスペース。

談笑しながら楽しめる、いわゆる“食べ歩き”のできるエリア。


この世界ではなじみのない“趣向を凝らした”仕掛けが施されていた。


所狭しと圧巻のボリュームで並ぶ見たことの無いようなご馳走の数々。

その暴力的なまでの香りが、開式を待ちわびている各国の重鎮たちの食欲をこれでもかと刺激する。


今回の宴――仕掛け人はライト。


この世界。

経験のない衝撃がまさに駆け抜けようとしていた。


そして。


仕掛け人であるライトの、心からの“悪ふざけ”。

本人はいたって真面目だが。


まさにそれが多くの騒動を巻き起こすのであった。



※※※※※



今回の宴の目的――

それはあの世界を揺るがす脅威との戦い。

その勝利を祝うものだ。


そして原動力となった女神ティアリーナとの会食。


女神は伝説の存在。


マイハルド王国や近隣諸国と違い移動手段が限られたこの世界。

“違う大陸の者達”にとって、今回の宴は非常に大きな意味があった。


2度に渡る女神の奇跡。

あの“世界を包み込んだ天啓”――


神々しいまでに美しい女神と、直接まみえることができるまさに至福。

すでに多くの王族などは、その瞳に涙を浮かべていた。


そして。

今回ついに明かされる真実。

女神を助け世界を救った絶対者、“影の騎士ノワール”の正体。


実は事前に各国の代表に渡された式次第。


その最後に彼と女神ティアリーナの婚姻に関する“重大発表”があるとしっかり記載されていた。

まさに世紀の瞬間に、皆の興奮は増していく。


――カラン――カラン――


――鳴り響く時間を告げる大時計の音。


会場を埋め尽くす各国の重鎮たちが注目する中、宰相であるウィリニード侯爵の開式の辞が厳かに会場に響き渡った。


「皆さま。今回の宴、開催にあたり一言お礼申し上げる。まさに平和の祭典。心行くまで楽しまれよ……開式いたします」


その言葉に沸く会場。

熱気が、興奮が、まさに湧き上がっていく。



式典はまさに――世界の喜びが凝縮されていたんだ。



※※※※※



一方、今回の為に急遽準備された休憩施設。

いわゆる護衛たちの滞在場所。


その大ホール、既に興奮に包まれていた。


当然だがライトは彼等にも“ほぼ同じ料理”を振舞うように指示。

その対応にいたく感動した各国の護衛の皆は、改めてこの国の度量の大きさに驚いていたのだが。


何はともあれ出される大量の料理とうまい酒。


王宮内の本会場とは違い、面倒な式典のないこの場所。

すでに大宴会はその幕を開けていた。


見たことの無い刺激的な料理に、飲んだことの無いうまい酒。


開式と言うか…

料理が運び込まれるたびに、そこら中から歓喜と興奮の声が上がる。


そして。

ひときわ目立つ大柄な女性が、目を見開き――驚愕の声を上げていた。


「っ!?…なんだこの酒は?…それにこの料理…うますぎる…おいっ、ザボーニ」

「もぐもぐ…んまい…はぐはぐ……ん?」


身の丈2メートルを超える女性ジョコビッチが、隣で口いっぱいにご馳走を詰め込んでいる従者に声をかけていた。


「貴様、なんだこの酒は…我の情報に無い酒…それにこの料理たちのとんでもなく良い香りと味……お前まさか知っていたのではあるまいな?」


ものすごい勢いでうまい料理と酒を消費しながら、彼女は訝しげに目を細めた。


「あん?知るかよ。…大体大将、何であんたこっちにいるんだよ。本会場行かなくていいのか?…んぐ、んぐ…ぷは――」


そんな問いかけに、我関せずと文句を言い。

ひたすら飲み食いを続けるザボーニと呼ばれた大柄な男性は、大きなジョッキで初めて飲む『ビール』を飲み干していた。


「ふん。あんなに格式ばった場所。…我の柄ではない。何より迷惑がかかるだろうが」

「……まあ、いいけど。なんだよ。自覚あるんじゃねえか。…確かにこっちの方が“安心”なのは間違いねえしな」



※※※※※



彼等は。

遠い西の大陸にある小国『ディニールド』の国王と親衛隊長。

正式に招待された“国賓”なのだが。


本会場での受付を済ませたジョコビッチは、即座に休憩施設へと舞い戻っていた。


彼女には二つ名がある。

それを知っていた幾つかの国の代表は、その行動に対し安堵の表情を浮かべていた。


『あの女…コホン。かの国の国王、ジョコビッチ陛下は…そ、その…』

『……う、うむ。…今回の宴…“アレ”をされてしまえば…国際問題?』


なにやら不穏な物言い。


実はジョコビッチ。


“美食の女帝”と言う二つ名を持ち――

『食に対する真直ぐな想いと情熱』を体現した存在。


今まで世界で大きな騒動を起こしていた女性だった。


彼女たちはこの世界では少数しか存在しない『馬喰い族』と呼ばれる種族。

その食欲は通常のヒューマンのそれを大きく凌駕していた。


『ふん。我らとていつでも大喰らいという訳ではない。調整なぞ朝飯前よ。…だが真の美味い料理…遠慮なぞ冒涜に他あるまい?』


そんなわけで彼女たちは幾つもの場所で、その異常な食欲により騒動を巻き起こしていた。


そして今回。

彼女はついに出会ってしまう。


常に“何か足りない”と思っていた彼女の本能。

それを満たしてしまう、まさにこの世界の常識を超えるライトの齎した美食の数々。


「…ふん。まあいい。…おい、ザボーニ」

「…もぐもぐ…なんだよ」


「ありったけだ。…食い尽くすぞ。まさに我らが悲願、ここにあったとはな」

「…はあ。…少しは加減しろよ?…国際問題になるぞ?」


彼女の目の前には、空になった大皿。

すでに山のように積み上げられていた。


驚愕の視線。

それをまったく気にしていない彼女は咆哮をあげる。


「おいっ!足りん。…もっと料理をよこせ!!我を満足させてみろ!!」


声をかけられた、元々城の執事だったウェスターは、冷や汗を流しながらもひたすら料理を運んでいた。


(なんだこの人?…ヤバイ。――マジで料理が尽きてしまう?!)


彼の背に嫌な汗が流れる。

もし…料理が無くなったら…


何しろこの会場にいるのは粗暴な護衛たち。

つまりは酔っぱらっている今、理知的な対応は望めない――


恐ろしい想像に、彼は迅速に行動に移った。

発せられるSOS。


『――全く足りない。料理の追加、大至急で!!』



そして始まる騒動。

やがてそれはライトの耳に入る。



※※※※※



「…“馬喰い族”で“美食の女帝”?……えっと…」


和やかに食事を楽しんでいたライト。

あのカレーの試食会のような“とんでもない事”が巻き起こっていない事に、安堵の表情を浮かべていたのだが。


突然もたらされた情報に、思わず腕を組んでしまっていた。


(…そんな種族いるの?さすが異世界だね。…どれ…)


遠見のスキル、それを使い休憩施設を見るライト。

思わずため息が漏れた。


「…ねえティア」

「はい、ライト様」


隣で済ましながらも、食事を楽しむ女神さま。

ライトはこっそり彼女に耳打ちをした。


「…やばい奴がいる。ちょっと僕、話してくるよ」

「…やばい奴?それって…」

「あー、うん。まあ…別に悪い事じゃないんだけどね。…でもさすがに他の人もいるし」


そう言いながら、なぜかにやりと悪い顔をするライト。

ティアリーナの背に、いやな汗が流れる。


「少しお仕置きしてくるよ」


席を立ち、にこやかに各国の重鎮に言葉をかけつつ。

ライトは会場を後にした。



ライトの“悪ふざけ”。

それはすべてをくつがえす。



この時点では誰もその事態を想像だにしていなかった。


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