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第139話 戦勝の宴1

あの星を揺るがす大激戦から早10日――


マイハルド王国あげての『戦勝の宴』

遂にその当日の朝が訪れた。


続々と訪れる各国の重鎮たち。

すでに王城の馬車置き場はほぼ満車。


今は臨時に設けた場所で、近衛兵たちは馴染みのない『駐車場係』として忙しく走りまわっていた。



※※※※※



「おい、A―3はもういっぱいだ。Bの方へ誘導するように伝えてくれ」


額から噴き出す汗をぬぐい、近衛兵小隊副隊長のルイナスは声を張り上げた。


「了解だ…ピッ…『もしもし、ビーニルドか?…A班のミギーゼだ。こっちはいっぱいだ。Bの方に誘導先変えてくれ…頼んだぞ』…ピッ―――ふう」


指示を受け、ライト謹製の魔道具『小型通信機』で連絡を取る男性。

近衛兵小隊長のミギーゼは、未だかつてない仕事に、よくわからない高揚感と疲弊感に思わずため息をついていた。


自分たちの班に任された任務。

満車になった駐車場を見やり、大きく息をつく。


一応の任務を無事終えたことで、彼らは改めて今回の事に思考を巡らした。



※※※※※



馬車の預かりや客人の案内。


普通であればこれは執事やメイド、馬番や庭師など。

本来彼らが対応する事案だった。


ただあまりにも多くの者が訪れる今日。


さらには『文化や習慣の違う国々』からの来訪客が多い今回。

ある程度の武力を保有するもの、つまりは“近衛兵”たちにその任務が任されていた。


改めて多くの馬車が並ぶ駐車場を見やり、ミギーゼは言葉を漏らす。


「しかし…さすがはロキラス副長だな。今回のこの任務、間違いなく我ら近衛が適任だ。さっきのリザードマン種族の護衛とか…普通なら国際問題だぞ?」


「そうだな。いくら待たされたからって…いきなりブレスとか。…普通の執事とかだったら命に係わる案件だもんな」


余りにも長く待たされたことに、リザードマン種族の護衛で来ていた男性がもめ事を起こしていたのだ。


「まあ。ライト様の擬似ダンジョンで鍛えた俺たちの敵じゃないけどな」

「ああ」



何しろ想定を超える参集者の数。

そして多くの護衛達。


こういった混乱、通常ホスト側は『見落とす場合が多い』のが常だ。


イベント時における環境の整備。

地味だが多くの費用と時間を必要とすること。


『なんとかしろ』


その一言で終えてしまう権力者のなんと多い事か。

そしてそんな些細なことで勃発する戦争。


あまりにも愚か。



ミギーゼは改めて、“自国の上層部たちの優秀”さに、感嘆の思いを募らせていた。



※※※※※



一方。


急遽設置された『休息の館』


すでにそこには数百に届こうかと言う、護衛任務で訪れた者達で賑わっていた。


「それにしても…ライト大公爵様は本当に10歳なのか?あの方の慧眼…末恐ろしいな」


普段王城で執事として勤めていたウェスターは言葉を漏らす。


つい先日招集され、ライト本人からレクチャーを受けた彼等。

客人への対応や言葉遣い、はたまた“もてなす”基本理念など。


とてもじゃないが10歳の者が考えたとは思えない、彼らの経験に無い洗練され、何より無駄のないその内容に、かつてない衝撃を受けたことが脳裏をよぎっていた。


「ああ、確かにな…って、しゃべってないで体動かせ…また増えたぞ」


「おっと…『お疲れ様です…こちらへどうぞ~』…たしかに」


慌しく動き回る城付きの執事たち。


そして『休憩施設』の快適さに、多くの訪れた護衛達は目を丸くしていた。



※※※※※



実はつい数日前。

ライトは陛下に謁見を申し込み、いくつかの“施策の上奏”を行っていた。


「陛下、因みに今回の戦勝の宴、参集者ってどのくらいの人数なのですか?」

「うむ。以前開催した『和平の式典』――それの数倍の規模だな」

「…数百人、か…なるほど」


腕を組み深刻な表情を浮かべるライト。

その様子に何故か陛下は背中に嫌な汗をかく。


「…馬車置き場、それから護衛達の休息所…準備は出来ています?」

「…は?」


一瞬聞かれたことに理解が追い付かない国王。

すぐそばで話を聞いていた宰相までがぽかんと口を開けてしまう。


「ふう。あのですね。…大きなイベント…コホン…儀式と言うか宴など。多くの人を呼ぶ場合、その準備、必須ですよ?」



※※※※※



そして始まるライトの説明。


公共の交通機関のないこの世界。

確実に“馬車を置くこと”で起こる騒動。


さらには護衛で来る者達への待遇。


『来てよかった』


そう思ってもらえるために、そういう準備は非常に重要だった。


思わず唸る国王。

そして宰相をはじめ同席していた重鎮たち。


あらためてライトの慧眼。


皆は心に刻んでいた。



※※※※※



「ここまでの参集規模。――今までなかったことですよね?でも今回の戦勝の宴、対象はこの星ミラリルスに住む多くの種族たちです。こういう事をないがしろにすると…」


「…ないがしろにすると?」


ライトは大きくため息をつき、すっと目を細めた。


「冗談じゃなく戦争が勃発します。文化や習慣、違う種族まで来るのですよね?最低限、今言ったことは対応しましょう」


たかが馬車を置く準備。

そして護衛達への処遇。


そう軽く思っていた、いや、『正直頭にもなかった』国王たちは思わず唸ってしまう。


「ふう。今日来てよかったです。僕の方で対応しますね。…王城の南の平地、改造の許可をください」


「う、うむ。…宰相、手続きを」

「はっ」



こうして準備された広大な駐車場と護衛達の滞在する休憩施設。


これにより今回の戦勝の宴。




多くの国や種族たち。



改めて、マイハルド王国の力に感嘆するのであった。


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