第11話 チートの申し子、ライトの戦力増強大作戦2
うちの領の兵士の皆さんは、いくつかの部隊に分かれている。
まずは主力である重歩兵師団。
この国随一の戦闘力を誇る精鋭部隊。
規模的には6個中隊、およそ700人。
さらには斥候や情報を扱う諜報部隊50名。
そして父上の親衛隊の精鋭50名。
馬と魔物の混血種である『魔馬』を駆る、機動力と突破力に特化している部隊だ。
後は魔術師団の100名。
僕の訓練でかなりの実力者ぞろいへと変貌させました。
その他に一般兵、雑務や食料調達、魔物の間引き、素材の売却、さらには予備兵、いわゆる訓練兵など。
全体で我が領地の兵士は総数で1500名。
正直領地の面積に対しては全然足りていない。
(…これ以上増やすと、王都にいる貴族連中がうるさいんだよね。まったく)
まあ。
うちの領のトップである父上は領民からの信頼が厚いし尊敬されている。
いざとなれば戦える“自警団”の皆さんもいるんだ。
自警団は引退した兵隊さんや、領内で活動する冒険者。
そして腕っぷしの強い農家さんなどが名を連ねているよ。
実は我が領地の兵士最強は自警団の団長さん。
ハワードさんっていう、父上の剣の師匠。
もうたしか70歳を超えるらしいのだけれど。
何とレベルは驚愕の150オーバー。
一瞬で僕の強さを見抜かれました。
コホン。
という訳で、いざとなったら僕の領の兵士は総数で3000。
もっともそんな事態、僕は絶対に起こさせないけれどね。
出来れば領民の皆さんには美味しい農産物を生産してもらいたいと僕は強く思っているんだ。
あの後さらに改良した農地と、新たに導入した三圃農業。
三圃農業は土地の効率的運用と地力の回復を目的とした農法だ。
豆を植え、野菜を育て、家畜を放つ。
循環するそれは、畑の力を取り戻す。
僕の魔力と複合させた今、領の食糧事情は劇的に改善されていた。
転生した当初、小麦と少しの根菜類を生産していたガルデス領。
タンパク質、いわゆる肉や魚は狩猟での調達と購入に頼らざるを得ず、どうしても栄養状態に不安を抱える領民も多かったんだよね。
(結構ガリガリの子供、多かったよね。…今はみんな元気いっぱいだ)
改革が軌道に乗った今。
肉類、魚類、野菜、小麦、そして果物までをも自領で賄う事が出来ているんだ。
もちろん魚については養殖を取り入れたよ?
なんかこの世界の魚、めっちゃ繁殖力強いんだよね。
何気に美味しいし。
そんなわけで。
購入する食材は調味料と、わずかな自領では取れない食材のみになっていた。
おかげで財政は非常に健全。
領民の皆さんもお金の心配がなくなり、多くの子供たちに教育の機会がもたらされていた。
学校はないけど。
教会の司教様に協力してもらって、定期的に『文字と計算』を教えているところだ。
もちろん『農業改良』などは父上と相談したよ?
かなり驚いておられたけど…
何よりも僕を信じてくれた。
だからちょっと…やり過ぎ感はある?かな。
僕は力いっぱい、領の改良に取り組んでいたんだ。
※※※※※
10月。
暑い夏が過ぎ、実りの秋を迎えた小麦が黄金色に輝く。
基礎訓練がようやく終わり、いよいよ特化した訓練を考えていた。
でもまずは。
うん。
新たに錬成した装備品の数々。
そのお披露目から行うことにしていた。
何より人員的にギリギリな状態。
一人でも欠けることがあれば他の隊員にしわ寄せが行くし、何より大切な領民だ。
兵士の家族だって悲しんでしまう。
まずは安全確保。
それは譲れない。
※※※※※
僕は自室で、目の前にいるティアと額にしわを寄せつつも二人思わず唸っていた。
「やり過ぎです。こんな技術、この星にはありません」
「うーん。でもさ…」
僕の錬成した幾つかの装備。
実は前々からティアにはそれとなく注意を受けていた。
既に2年という期間、常に一緒に居た女神ティアリーナ。
彼女は誰よりも僕のことを理解してくれていた。
何よりも可愛く、そして美しい。
何時でも僕の心に寄り添ってくれる優しい心。
惚れるに決まっている。
「ライト様。これは何ですか?」
そんなティアだが、訝し気に顔をしかめ、そっと手にする30cmくらいの筒。
僕は目を輝かせ、意気揚々と説明を始めた。
「これはね、魔力で形成できるブレード、つまりは剣だね。魔力の質にもよるけど何より刃こぼれしないし軽くて携帯性に優れている。それに柄には強力な雷撃魔術を仕込んであるんだ。いざというときに魔物などの生物の動き、止められるんだよ」
うん。
何気にこれは僕の自信作だ。
光るブレード。
男ならどうしても憧れちゃうよね?!
ティアから受け取り僕は優しく魔力を流す。
顕現する七色に輝く魔力の刀身。
思わず僕はうっとりとそれを見つめた。
「…不敬を承知で思ったこと言いますね」
「うん?」
「…アホですか?」
「ア、アホ?!!」
そして大きくため息をつくティア。
「却下です。大体ライト様、うちの領兵どこまで強化するおつもりなのでしょうか?さらにはこんなとんでもない武器…兵士1人で弱小国なら落とせちゃいますよ?」
「ハハハ、大げさだな……マジ?」
「マジ、です」
改めて自分の作った錬成品を鑑定する僕。
「……あっ?!」
「………はあ」
リミッターと言うか制限、完全に除去していたこの武器。
何と理論上、とんでもない破壊力を秘めていることに今この瞬間、僕は気づいてしまった。
「……う、うん。…これはダメ…かな?」
「………………はあ」
うう、そんな目で見ないで?
居た堪れなくなっちゃう。
ついオロオロしてしまう僕。
突然やさしい香りと温かい感触に包まれた。
「もう。そんな顔、ズルいです♡…ああ、ライト様、可愛すぎですっ♡」
僕を抱きしめるティア。
うあ、やばい。
鼓動が跳ねる。
僕は今7歳。
もちろん、そ、その…『男性の機能』は有していない。
だからその、いろいろ…できないのだけれど…
僕にはその、過去の“記憶と経験”があるわけで…
うう。
すっごく嬉しいけど…『生殺し状態』なんだよね。
顔を赤く染め、悶々としてしまう抱擁。
キャルン姉さまの突入まで、それは続いていたんだ。
※※※※※
あの後。
僕とティアで、どうにかギリギリ問題にならない程度の装備品の選定を終えていた。
まずは腕輪タイプの防具。
これは物理耐性75%と魔力阻害を付与してある『見えない装備品』だ。
本当は完全耐性の装備品を用意していたのだけれど…
思いっきりティアに呆れられてしまった。
「あのですね。なんですかこれ?ライト様は本当に私のこの世界、滅ぼしたいのですか?」
「あうっ、そ、そんなことは…」
「完全耐性の装備?これって私の最強魔法まで無効化しますよ?…ああ、どうすれば常識をライト様に教えられるのでしょうか…」
何故か激しく落ち込むティア。
うん。
怒られるよりも、心にダメージが凄すぎる。
僕はそっと、完全耐性を付与した指輪タイプの防具、インベントリにしまい込んだ。
「コホン……こ、これならいいかな…えっと…大分弱い装備なんだけれど…パッシブで物理耐性75%、魔力阻害の効果なんだけれど…こ、これなら…良い、よね?」
正直僕は不満しかない。
これでは何かあったとき、死にはしないだろうけど結構怪我をしてしまう。
何より魔力阻害しかない装備だ。
著しく敵の魔術を弱くできるけど、ダメージは受ける。
それでもジト目で僕を見つめるティア。
「……はあ。まあ、いいでしょう。…まさか全員に、とかではないですよね?」
「っ!?…ハハ、ハ。…や、やだなあ…た、隊長と副隊長クラスの皆に、かな?」
ううっ。
これでもダメなの?
予備も含め、実は3000個ほど作ったのだけれど…
「…武器は?」
「う、うん?!…えっと…コレ、とか?」
次に差し出したのはアームカバーになっている魔力で変貌する武器。
その者に最適なものに自動で変わる武器だ。
何しろ実際の兵士の皆さんの仕事は思った以上に過酷だ。
そんな中もし武器が使い物にならなくなったら…
安全の意味でも、そして少しでも負担を減らせるならと、開発したんだよね。
強度自体は少し強い程度?
…えっと。
心配なので改めて鑑定してみた。
「…ライト様」
「…あー。う、うん。……『伝説級』だね。…ハハハ、ハ…」
「却下で」
「……はい」
結局許されたのは、通常の鋼の武器の柄の部分に仕込んだいわゆる『スタンガン』だけでした。
残念。
まあこの世界、確かにヒューマンは弱い。
そんな中でもうちの領兵は僕のトレーニングでずいぶん強くなっていた。
「ライト様、あなた様の錬成した武具、とても素晴らしい事は間違いありません。でもそれを使うのは今ではありません」
「???今、ではない?…それって…」
「まだ駄目です。そのうち、きっとお話しします。…信じて待っていてくれますか?」
真剣な表情を浮かべるティア。
何となくこの世界、秘密があることは分かっていた。
でもきっと。
今ではないのだろう。
僕は何となく納得し、ティアを信じることにしたんだ。
「…ありがとうございます」
「うん」
※※※※※
「という訳で、今から皆さんに新たな装備品を渡します」
ティアとの選定を終えた夜。
僕はこっそりと兵舎に忍び込み、隊長クラスを集めレクチャーを行っていた。
「ラ、ライト様?これって…うおっ?!びりびりするうう?!!」
「やべえ。この防具…全然痛くない」
あー、うん。
スタンガンは人に向けちゃだめだからね?
正直、僕は不満だ。
とりあえずうまく使ってもらってデータを集め、改良を進めるつもりだ。
そしてこの時に僕が渡した武具。
多くの場面で役に立ち、領平の皆さんはますます成長していくんだ。
人知れず、最強への道を突き進む、領兵たちなのであった。
そしてその成果は。
2年後の脅威を、跳ね返す原動力となる――
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