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第103話 ライトに愛され、そして愛されたい女の心情4

幼少部1年の教室。


授業を受けていたわたくしは突然のライト様からの念話に。

赤くなりそうな顔をどうにか誤魔化そうと教科書で隠していた。


『…僕は覚悟を決めたよ?…シャルル、本当に僕を愛してくれるかい?』


ああ。

わたくしはまだ9歳。


でも。


全てを捧げたい――

わたくしの覚悟は既に決まっているのだから…


――脳裏に過去の情景が蘇る。



◆シャルルの心情◆



わたくしがまだライト様と出会う前。

あの頃のお父様。

様子がおかしかったことを思い出します。



※※※※※



わたくしシャルルの自慢のお父様。


この国の第2王子でありながら、格下である伯爵家の長女であるお母様を愛し、王籍を抜ける覚悟を決めたすごい人。


そしてこの国の近衛副長。

強くて優しい、まさに理想のお父様なのです。


それなのにお父様は。

わたくしを見るたびに、ため息をつかれるようになってしまっていました。


原因はわたくしとガルデス辺境伯様のご子息であらせられるライト様との婚約。

まだわたくしが4歳の時にお父様の意向で決まったこと。


もちろん王族の血を継ぐわたくし。

政略結婚に不満はございません。


それに婚約者であるライト様。

あの方の逸話は、すでにわたくしの想像を超えてしまっていました。


まだ9歳にもかかわらず、すでに侯爵位を授かり。

多くの彼が発明した魔道具は我が国の民の生活、ひいては国力までをも向上させるほどの大天才。


不満などあるわけがございません。


けれども。

お父様はあの時わたくしにこう告げました。


「シャルル。ライトとの婚約は白紙にした」

「っ!?」


余りの事にわたくしの思考は停止、そして涙がこみ上げます。

何よりわたくしは…


そのためだけに多くの教育をすでに受けておりました。


そして。

まるでおとぎ話のようなライト様の逸話。

さらには王城でちらっと見ることのできたライト様のお美しい顔。


わたくし既に…

ライト様に恋をしておりました。


なのに…

白紙?


その様子にお父様は優しくわたくしの頭に手を置いてにっこりとほほ笑みました。


「だが。…自由恋愛なら俺はシャルルを応援するよ?」

「グスッ…お、お父様…それは…ヒック…」

「…ライトにはすでに多くの婚約者がいる。陛下が認めた正式なものだ」

「っ!?…は、はい」


わたくしは涙を拭いて、しっかりと目を見開き、お父様の瞳を見つめる。


「承知しております…第3王女のリュイネ様もその一人と聞いております」

「そうだな。だから俺は婚約を白紙にした。お前を真に愛する男性と結婚してもらいたくてな」


お父様の気持ち。

胸がジンワリ温かくなります。


でも…


「だが。…ライトはめちゃくちゃいい男だ。正直息子にしたいと思う」

「…息子…っ!?…それって…」

「ああ。シャルルがすでにライトの事、好いていることは承知している。だから…」


お父様は真直ぐにわたくしの瞳を見つめて。


「勝ち取るといい。ライトの婚約者の席を」

「っ!?…は、はいっ!」



※※※※※



そして入学式の日。


わたくしは多くの人が見ている中でライト様に結婚を申し込んだ。


目を白黒させるライト様。

可愛いのです♡


絶対、ぜーったい。


逃がしませんわ♡



※※※※※



「ふう。荷物はこれでいいかしら?ハンス、忘れ物は無いわよね?」

「ええ、殿下…しかし…本当にここに住まわれるのですか?まだ…王城でも良いかと」


従者筆頭で幼いころからわたくしを見てくださっているハンスが寂しそうにつぶやく。

その様子に、そこはかとない寂しさがよぎる。


でも。


「…わたくしはすでにライト様の妻になる身――同居は当然では?」

「……かしこまりました……成長されましたな」

「っ!?」


優しさとともに、寂しさを纏うハンスの瞳。

ここに住むという事は、ハンスの役目の終了を意味していた。


新たなステージ。

わたくしはその事実に、これまでのことを思い返していた。



◆リュイネの心情◆



――まるでおとぎ話に登場するような活躍をされているライト大公爵様。

遂に陛下が仰ってくださった、わたくし、リュイネとの婚約。


ドキドキが止まりません。


まだわたくしは8歳。

当然実際にライト様と暮らすのは先なのですが。


何度か王宮ですれ違ったことはありましたが、一度もお会いしたことの無い彼。

顔合わせの時にライト様は優しい瞳でわたくしを見てくださったのです。


リュイネはもう、たまりませんの。

それにライト様は“大公爵”と言う、唯一陛下であるお父様と対等の立場。


ビザイド宮の準備が整いましたらわたくし…

一緒に暮らすつもりなのです。


確かにわたくしとライト様の婚約は完全なる政略結婚。

そして聞き及んでいる、すでに10名の女性がライト様と婚約を済ませている事実。


皆美しく、さらには女神さまのような超常の存在も多いとか。


でもわたくし確信しておりますの。

彼はわたくしを愛してくださると。


はあ♡


あのお優しい瞳にお美しい顔。

さらにはとんでもない力を秘めた絶対者。


まさにわたくし、一目惚れなのです♡


わたくしはまだ幼いとはいえこの国の王女。

実践経験はありませんが。


わたくしには多くの閨の技術、すでに叩き込まれております。

それでライト様を…


ああっ♡


いつの日か。

ライト様とわたくしの赤ちゃん。


この手に抱いて見せますわ。



※※※※※



「…リュイネ様?…お顔が赤いようですが…」

「っ!?な、何でもありません」


いけない。

妄想が過ぎましたわ。


私はリュイネ。

リュイネ・ニラリス・マイハルド。


この国の第3王女にして、超絶者ライト様の11番目の妻になる。



私の瞳にはもう、未来しかありませんの。

新しい生活が始まる――



※※※※※



ライトの居ない彼の寝室。

気付けば私はライトの枕を抱きしめていた。


「…ふふ…また…会えたね」


ふいに口をつく言葉。

私の心からの想いだ。



おそらく数万年。

遂にたどり着いた平穏。


「…でもこの先は…未知数なんだね」


私は知っている。

この世界の秘密を。


神を超える超絶者の想いを。



「……まあ、いっか。……きっとライトは乗り越えちゃうし?」



そんなことをつぶやき私は――

恐ろしかった過去に想いを馳せたんだ。



◆ニニャの心情◆



私の遠い記憶。

ライトと双子だった私。


とんでもなく古い記憶の中で無理やり引き裂かれた私の運命の人。


ライト。


2度目の出会いは地球と言う惑星。

私は彼と幼い時、毎日のように一緒に遊んでいた。



※※※※※



「…ねえ。〇〇ちゃん…ずっと一緒だよ?」

「うん。頼人君♡」


幼い二人。

たぶんまだ5歳くらいだった。


あのときのライト。

記憶が戻っていないにもかかわらず、きっと運命なのだろう。


私を求めてくれていた。

もちろん子供だから。


何もしていなかったけど。

…手とかは繋いだけどね?


でも運命は――私たちを引き裂いた。


近所の公園。

私は突っ込んで来たトラックにひかれ命を落としたんだ。



※※※※※



次に目が覚めた時。

私は“龍姫”という力を有する人外になっていた。


そして――封印状態。


超常の存在となった私は寿命と言う概念から解き放たれていた。

始まる永遠とも取れる孤独な時間。


私は毎日ライトを思い泣いていたんだ。

助けて…私を見つけて…


そう、ずっと一人…

永遠の時間を…


そして。

彼は私を見つけてくれた。


『絶対に助ける。待っていて、ニニャ』


心から湧き上がる歓喜。

でも。


なぜか心が欠けていたライト。

愛情という一番のカギとなる心を失ってしまっていたライトは。


遂に私をその手に抱くことが出来ず…


私は突然発動した魔力に巻き込まれ、彼の前から消えてしまっていた。

絶望に包まれる私。


もう。

会えない。


涙が頬を伝わる。


愛おしいライト。

私の半身。





そして。



「ニニャ…やっと…やっと君をこの腕に…愛している」

「…うん…」


私は遂に運命を克服した。

すでに私の力を吸収していたライトとの融合はかなわない。


でも代わりに、私は生身のライトと愛し合う権利を手に入れていた。

彼の優しい、可愛らしい手が私の体を包み込む。

信じられない快感と愛おしさ。


私はあの一瞬で。

数万年にわたる孤独を忘れていたんだ。


聞けばライト、すでに多くの婚約者がいた。

当然だろう。

彼は絶対者。


そして私の愛する只一人の人だ。


しかも彼はまだ10歳。

男女の経験のない新品状態だ。


ライトの初めて。

私が絶対に奪う。


待っていてね…大好きだよ♡


私は噛みしめる。

何でもない日常と言う幸せ。


「…ありがとう……ライト…」


誰も聞くことの無いその言葉は。


私の祈りとなったんだ。


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