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第101話 悲しみに暮れる闇の女神

ライトがワクワクしながら色々と画策しているころ。

惑星ミラリルスの南方、ライトによって封印されたダンジョンの中。


すでに1年近く放置され、出ることのできない女神たちはすでに諦めかけていた。


「ったく。…あんた責任取るんじゃな」

「うう…ヒック…グスっ」


従者筆頭であるヒョナイニダ・デイナ・ビステリナに怒られ、涙目と言うか号泣している闇の女神フェレネルト・リリールース。


実は彼等、8人いたのだが。

すでに二人を残し“生命転嫁”と言うスキルで命を貸している状況だった。


「…もうすぐあたしの命もお前に託す…必ず復活させるんだよ」

「グスッ…うん」


正直闇の女神という『とんでも存在』であるフェレネルトはどんなに困窮しようと消滅することはない。


だがライトの“非常識な魔力”により封印された今、彼らは殆どのスキルの使用を封じられていた。


すでにダンジョン内の魔力もほぼ枯渇。

食糧としてとらえる魔物も極端にその数を減らしていた。


まさに兵糧攻めの極致――

ライトの長年の経験による無言の怒りの仕打ち。


それは彼らを追い詰める。


いくら超絶者とその従者とか言え彼らは生きている。

食事をとらねば当然力は失われていく。


「みんな…ごめんなさい…私が…ぐすっ」


すでに“緊急避難”的なスキルを使い、彼らは今わずか二人を残すのみとなっていた。


正直現状を打破できる方法はある。

しかし。


それには大きなリスクが伴っていた。


彼女、闇の女神フェレネルトには最後の手段である『強制覚醒』がある。

恐らくライトが施した封印術。

それ自体は破れないとしても、結界内に新たなテリトリーを作ることは可能だった。


しかし摂理を超える超絶な力には漏れなく“対価”が課せられている。


フェレネルトの場合。


とんでもなく淫乱になり、そして。

悪逆非道を絵にかいたような存在、敵どころか味方までをも虐殺してしまう恐れがあった。


「…ふん。私が居なくなったらさっさと強制覚醒するんじゃな。そうすれば嬢ちゃんは生き残れるじゃろ?いくらおかしくなろうと、リュガリール様との繋がりだけは消えん。後でたっぷり怒られるといい」


「うう。…やっぱり…怒られるよね?」

「ふん。殺されるかもな」

「ひいい?!!」


その様子をなぜか優しげな瞳で見つめるヒョナイニダ


「…ふん。どうやら時間だ…フェレ嬢ちゃん…いや…」


突然姿勢を正し、跪くヒョナイニダ。

深々と頭を下げ臣下の礼をとった。


「闇の女神フェレネルト・リリールース様…我らの力が足りないばかりに御身にいらぬ苦労を…臣下として最大の謝罪を」


「ヒョナ婆…コホン。…ヒョナイニダ」

「はっ」


「あなた方の我に対する忠誠、確かに受け取った。…しばし眠るとよい。我がリュガリール様に誓って必ず復活させよう」

「ありがたき幸せ。…ふん。できるじゃないか。…頼む」


そう言い姿を変換させ、フェレネルトに吸収されていくヒョナイニダ。


闇の女神の瞳に覚悟の光が灯る。


「ふう」


そして全身をすさまじい魔力が迸る。

この星では経験できぬ、荒ぶり、まるで鋭い切り裂くような可視化できるほどの魔力。



「強制覚醒!!」



※※※※※



ライトの封印した南のダンジョン。


新たな魔境…“女神城”がおどろおどろしい魔力に包まれ、ミラリルスに顕現した瞬間だった。



※※※※※



相変わらず僕は何もない時には積極的に授業を受けることにしていた。


なにより同年代の子供たちと過ごせる短い時間。

それは僕の心の形成にとって『なくてはならない時間』だった。


「っ!?」


突然僕の危機感知に引っかかるかつて経験したことの無いような波動。

僕はおもむろに、ビザイド宮で寛いでいるであろうヴィエレッタに念話をとばす。


(ヴィレ…感じた?)

『うん。…これってライトが封印したあのダンジョンよね』


(うん。……しょうがないよね。制圧しちゃうか)


『…ねえ。』

(うん?)


『私も連れて行って…ううん。あなたの婚約者、全員を』


(…えっと…でも。シャルルやリュイネは戦闘とか無理だけど…何か意味があるの?)


『見せつけて欲しい。ライトの力、全てを凌駕するその力を』



(……)


何となくわかる。

僕は多分すでにこの宇宙ですら最強の存在。


その僕の婚約者たち。

知っておいた方がいいのだろう。


結婚と言う“魂の契約”。

それを結ぶ僕、絶対者の力を。


何より。


彼女たちのうち何人か、あるいは全員。


いずれ僕の力を引き継ぐ子を授かる。

覚悟を固めるための“儀式”のような物だ。


(…うん。…分かったよヴィレ。…すぐに動いた方がいいかな)


『おそらく何かしらのスキルを使ったのでしょう…あの座標の地点、すでに質量がこの星の法則を無視しています。1か月…おそらくそのタイミングが最適…ねえライト』


(うん?)


『…大好き♡…じゃあね』


突然の不意打ち。

僕は顔を赤らめていたんだ。



※※※※※



宇宙と言う途方もなく広い世界。

その半分を手中に収めた絶対者リュガリール。


自身とのつながりの断たれていた闇の女神フェレネルト。


その圧倒的魔力が遠い距離を超え届いていた。


「…ふん。強制覚醒…そこまでの相手か…俺も向かうとしよう…ギルザダ」

「…はっ」

「用意しろ。…向かうぞ。数千年前、俺の歴史に唯一の敗北を刻んだあの星へ」

「…時が来た…そう言う事でございますね…承知」


絶対者リュガリール。

彼は奢り、そしてあの時の魔王の命を懸けた渾身の攻撃…


それにより撤退を与儀なくされていた。


何より彼らの世界とは異なる摂理の場所。

どうしてもその力を十全に発揮することが出来なかった。


しかし彼らがこの宇宙の覇者たる根拠。

超絶スキル『死身刻命』


唯一リュガリール、彼はその一部を取得していた。


「我は対応した…我が眷属、既に対応済みだ」


そもそも彼には寿命と言う概念が存在しない。

そして数多の超絶スキル。

正直時間の概念すら彼らは超越していた。


だが。


あの敗北と言うか逃走。


そんな彼は実は“喜びすら”感じていた。


「くくく。次こそ。――必ず掌握してみせる」



新たなおもちゃを見つけた少年。

そんな様相の彼は、静かに目を閉じた。



そして吹き上がる魔力は遠く神域までをも包み込んでいた。


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