第99話 秘宝?…えっと…これのことかな?
どうやら殿下。
マリナス様に完全に惚れてしまったみたいで。
なにがなんでも彼女に自身が知っている“最高峰の宝石”をプレゼントすると約束してしまったらしい。
なんかね。
残念臭がとんでもないのだけれど?
「はあ。マリナス…君は私の天使だ。他の女なぞ見る訳もないだろう?」
「殿下♡でもでも…女神ティアリーナ様は…お美しいですわ…ヴィラ様の瞳…熱を帯びておりましたし…マリナスは心配です♡」
何故かいきなりイチャつき始める二人。
ピンクのオーラがヴィラーリヒ殿下の部屋を包み込む。
まあね。
なんなのこの状態?
「…万事がこうなんだ。緊急の案件もあるというのに…コホン。殿下、穀物備蓄の件ですが…いかがいたしますか?」
「う、うむ。…任せる。頼めるだろうか」
「…はあ。…承知しました」
肩をがっくり落とし殿下の部屋を出ていく扇さん。
――確かにこれはまずいかもしれない。
「コホン。…ヴィラさん?」
「う、うむ」
僕の問いかけに、何故か僕の視線から隠すようにマリナスさまを抱き寄せるヴィラーリヒ殿下。
目がハートになっている?!
…精神異常!?
思わずそう思ってしまうくらい今の殿下は――“色ボケ”になっていた。
ヴィラーリヒ殿下は強大な権力とともに当然ながら大きな責任が課せられている。
ここ数日、ほぼそれを“放棄”している状態。
確かにイスタール帝国にとって存亡の危機、ひいてはこの世界に多大な問題を与える案件だった。
「えっと。もしかして…『自ら採取に行く』とか――言いませんよね?」
僕の声掛けにびくりと肩を刎ねさせる殿下。
そして目を泳がせる。
「う、うむ。…護衛を引き受けてはくれまいか?…見ての通りなんだ。情けないが今俺は他の事に全く食指が動かん。――マリナスだけの為に生きたい!」
「まあ。マリナスは嬉しいです。…殿下♡」
「はあ。マリナス…これで秘宝は手に入れたも同然。安心するのだ」
「…やっと…わたくしを…ああ、愛おしいヴィラーリヒ様…」
「マリナス」
「ヴィラーリヒ様」
おいおい、人の前!
見ている前ですよっ!?
見つめ合い唇を重ねそうな勢いに、僕は咳払いをした。
「コホン。…どのくらい必要なのですか?」
「う、うむ。それがな…」
僕の問いかけに明らかに挙動不審になるヴィラさん。
そして明かされる真実。
実は二人、皇帝であるジスディルド陛下よりミッションを課せられていた。
今回のお題。
翡翠の涙。
それを確保し、上奏することで初めて“夜伽”を許されていた。
つまり。
実は二人、こんなにイチャイチャと熱いにもかかわらず…
まだ体を重ねてはいなかった。
すでに辛抱のたまらない殿下は、目の色が変わってしまっていた。
うん。
実はその状態。
僕にはよくわかる。
まあ僕は『生理的と言うか成長的』にずっとお預け状態だったから。
比べるべくもないのだけれど。
でもその機能を有し、今までそのような我慢を経験していなかった殿下にとって――
まさに今の状態は“地獄”に他ならなかった。
「…はあ。マリナス様?…愛されていますね」
「あうっ♡」
可愛らしい顔を真っ赤に染め、モジモジとし殿下のそでをちょこんと摘むマリナス様。
確かにとんでもなく可愛い。
「…物さえ用意出来れば済む話ですよね?…直接行くというのは殿下のわがまま、そう言う事でいいでしょうか?」
「くっ、た、確かにな。…だ、だが…愛する人と結ばれるための試練。俺は全霊をかけたいのだ」
という訳で殿下はここ最近全ての公務をほっぽりだし、自分の力を増そうと魔物狩りに猛進していた。
そりゃあ間違いなく存亡の危機に他ならない。
僕は大きくため息を吐きインベントリに意識を向ける。
実は翡翠の涙。
“数トン単位”で僕はすでに保有していた。
「…よっと。…このくらいでいいですか?」
ずっしりとした純度の高い数キロはある固まり。
突然現れたそれに殿下はもとより、マリナス様まで固まってしまう。
「婚姻の儀のプレゼントです。お金は要りません。…さっさとマリナス様といちゃついて、いつもの殿下に戻ってください」
「…いちゃつく…ゴクリ…ライト」
突然跪き、僕にキラキラした瞳を向けるヴィラーリヒ殿下。
「恩に着る…もう帰ってくれまいか?そ、その…」
「はあ。分かりました。お邪魔虫は退散いたします。…しっぽり楽しんで、ちゃんといつもの殿下になってくださいよ?約束です」
「ああ。誓おう」
言うなりマリナス様の手を取り熱い瞳で見つめ、可視化できるほどの色気を噴き出し始める殿下。
「マリナス…永遠の愛をお前に……」
「ああ、ついに…お慕い申しております♡」
うわあ。
大人の色気全開?
大人の男女の覚悟を決めた熱烈な求愛。
僕とティアは顔を真っ赤に染め、慌てて寮へと転移して行ったんだ。
※※※※※
その後思いを果たした殿下。
いつもの、いやそれ以上にその辣腕を振るい、“帝国の危機”は去ったのだった。
寮に帰った僕は。
触発され色気増しましなティアに熱い瞳で見つめられ。
そ、その。
うん。
もちろん変な事はしてないよ?
…また大海原にはお世話になったけどね?
うう。
ティアが可愛すぎる。
コホン。
何はともあれ。
優秀な人を篭絡し、完全に壊す女性の真直ぐな純情。
改めて僕は。
『女って怖い』
そう心に刻み込んでいた。
もっとも。
男性にとってそれは『心の底からの幸せ』でもあるんだけどね。
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