6才 7月①
真っ青な空に照りつける太陽。
日曜日の朝はとてものどかで、つくづく自分は恵まれた環境に生を受けたものだと思う。
異世界でも太陽に似た星があるのってなんか違和感だよなぁ…と思いつつ、いつものように木陰でケインとロビンと共に管を巻いていた。
精神が大人の私からすると、ただ3人で集まって各々好き勝手にやってるだけなのだが、子供の感覚ではこれが一緒に遊ぶということなのだろう。
ケインは父上に教わった剣術の反復練習をしており、ロビンは火の魔法の出力を調整して大きい炎を出したり、それを小さくしたりしている。
自分の子供の頃って、もっと鬼ごっこしたりかくれんぼしたり戦いごっこしたりしていたと思うのだが、彼らはそれと比べるとずいぶんストイックだ。
汗を流しながら木剣を素振りしているケインは、ふう…と息を吐き木剣を地面に刺した。
「…そろそろじゃねー?」
「うん。僕たちも前よりは強くなったもんね」
ケインとロビンは顔を見合わせて言った。
読んでいた本をパタンと閉じ、私は2人に言った。
「ゴブリン退治だな?なら私も準備してくるよ。1時間後、ここに集合でいいか?」
2人は目を輝かせながら私を見つめ、激しく首肯した後、すぐさま準備に取り掛かるために家に戻った。
この1年で私にも心境の変化があった。
まずは彼我の戦力差がわかったのだ。
ゴブリンは人型のモンスターだが、我々と背丈はさほど変わらず、魔力も使えないし頭も悪い。
それに対して、ケインの剣術はいっぱしで、ロビンの魔法も相当な威力である。
私はと言うと、剣も魔法も使えるが2人の下位互換、つまりは器用貧乏だ。
RPGでいうところの勇者ポジションだ。回復役がパーティにいればより盤石だっただろう。
次に森の危険性。この森に強いモンスターが出ることはほぼ100%ありえないことがわかった。ゴブリンの集落など存在せず、せいぜい家族単位で生息しているだけだ。ボア種やウルフ種も生息していない。森を抜けて山の方まで迎えば多少強いモンスターも出るだろうが、我々が向かうのは村に比較的近いような浅い場所だ。
そして私にとって1番の目的は、彼らに冒険者としての第一歩を踏み出させたい、ということだった。
幼い頃の成功体験は、必ず彼らの人生に大きな影響を与える。
何より私には【とっておき】のスキルが身についており、危険を避けることが出来る。
このスキルの存在がなければ、今回の冒険を許すことはまずなかっただろう。
と、もったいつける割には大したスキルではないのだが…