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ガン・アンド・ロジック  作者: 大豆の神
Case02.星の魔女
28/73

Case02.星の魔女#13

ユニークPV200突破、ありがとうございます。

 市原、天城、富士。呪いが発現していたという事実を、日奈は彼らに伝えた。もちろん、自分の口で。

 意外にも、誰からも黙っていたことを責められなかった。彼らは一様に、了解の旨を静かに告げるのみだった。最悪、怜の時のような対応を求められるとも思っていたが、ここは大人の余裕というやつなのだろう。内心で何を抱えていたとしても、それを表に出すか出さないか。それが大人と子どもの違いのように感じた。


 さすがに富士の検診は避けられなかったため、診療所を訪ねた。その後、日奈は万屋の地下に足を踏み入れていた。

 しかし、秘密を打ち明けることが用件ではない。


「いらっしゃい、日奈さん。あら? 今日は着けてないのね」


 透明な仕切りを隔てて、蛇の魔女が口角を上げる。


「前の戦いでドジっちゃってね……。アタシに呪いがあること、バレちゃった」


「そう。私と日奈さんだけの秘密だったのに、残念だわ」


 蛇の魔女の声音は、心の底から残念がっているようだ。自分だけが知っていたものが周知され、独占欲や優越感が妨げられたのだろう。

 日奈が桜の呪いに侵されている。それこそが、蛇の魔女から情報提供を受けるうえで日奈が提示した秘密だった。


「それなら、もうこの関係はおしまいにしないとね」


「うん……そうだよね」


 日奈の声にも、先ほどの蛇の魔女に負けず劣らず遺憾の念がこもる。桜の魔女はおろか、ロケットを持つ魔女の素性すら知ることなく、蛇の魔女からの情報は打ち切りということだ。

 たしかに、この関係は秘密を共有することで始まったもの。再開するには、それ相応の代価が必要となる。


(そんなの、今のアタシには……)


 元々秘密なんて持つ性格じゃなかった。呪いに関することが異例中の異例なだけであって、日奈には蛇の魔女に対する手札はもうなかった。


「そんな顔されると、私も心が痛いのよね。分かったわ、これからも日奈さんのお手伝いをしてあげる」


「本当?」


 吊られた餌に前のめりな日奈を制するように、蛇の魔女は口に人差し指を当てる。


「ただし、前みたいにいつでも情報を教えるわけじゃないわ。聞いても答えない時があるわ。要は気紛れね」


「気紛れ……」


「でも、日奈さんにとってもいい話のはずよ。今の私たちは秘密を共有しているわけじゃない。つまり、私が提供をした情報の扱いは、日奈さんの自由ということ」


「それって、他の人に言ってもいいってこと?」


 日奈がそう尋ねると、蛇の魔女はウィンクを返す。本当に、所作がいちいち絵になる。


 これは、大目に見れば前進じゃないだろうか。相手の気分次第とはいえ、今後は自分が手に入れた情報を万屋全体で活かすことができる。自分だけで消費していたこれまでよりも、有意義な捜索ができると日奈は思った。

 ここで、一つ気になることがある。これの回答によっては、一応の振り出しからということになる。


「アタシがこれまで教えてもらったこと……例えばロケットのこととか。それも言っていいの?」


「構わないわよ。けれど、私が情報源と知って信じてくれるかしら」


「そんなの当たり前に決まってるっしょ? だってアタシのお墨付きだもん!」


 日奈が嬉しそうにそう言うと、蛇の魔女が目を細める。せっかく日奈に認められたというのに、何が不服だったのだろうか。


「日奈さん、それを言うなら折り紙付きよ。お墨付きじゃ、私が物みたいじゃない」


「へー、そうなんだ。ごめんごめん、アタシ知らなかったよ!」


「知らないのなら、知っていけばいいわ。それができるのって、若い今のうちだけだから」


 蛇の魔女は、どこか遠くを見る目をしていた。ここに捕らえられる前、自由な生活が送れていた頃に思いを馳せていたのかもしれない。

 自分の目で見て、耳で聞いて、足で歩いて。そうやって人は知識を身につけていく。地下での対面を、蛇の魔女はそう締めくくった。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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