強敵がいるよ
一度に大量の魔物を掃討した為だろうか。
あれから何度か小規模な群れと数度激突したものの、全然手応えがない相手ばかり。
「ただこっちは相当キツいね……」
「そうねぇ。山登りなんて久しぶりだから怖いわぁ」
しかし、死の領域の名は伊達ではない。
登ろうという山自身がとても高い上、断崖絶壁で体力を消耗する。
そして……
「《炎弩》うわー、今の当たってたら死んでたよ」
「ごめんなさいねぇ。両手が塞がってたら闘えないのよぉ」
「大丈夫! こういう時のための魔法使いだからね」
鳥型の魔物が我先にと崖を登る僕らを目掛けて突撃してくる。
これにはかなり参ってしまった。
一応、背中に展開した炎の矢を連射して撃ち落としているけど打ち漏らしたらと思うとゾッとする。
「やっぱりありがたいわぁ。ソロの時よりも選択肢が広がるものぉ」
「そう言って貰えると嬉しいよ。おっ、あと少しで開けた場所だ!」
しかし、そんなキツい状況ももうすぐ終わる。
上を見れば、平になった岩棚らしきものが見える。
「《炎弩三十連》、準備完了!」
ラストスパート。魔物達も足場を渡したら不味いということが本能的に分かったのだろうか。
大きな叫声を上げつつ突撃を敢行してきた。
が、それは予想通り。
事前に準備されていた30本の矢が射出され、バタバタと魔物が宙を落ちていく。
「よし! 後は登るだけ!!」
「ありがとぉ!! 」
久々にスッキリした青空を背に、指を崖に絡ませて登っていく。
登る、登る、登る。
登って登って。
そうして、視界が開け…… 無かった。
「やっぽはっ!?」
「アモン!?」
一足先に辿り着いた僕は、そこで大きな壁の様なものを見てしまった。
瞬間、それは腕を振るい……
僕は吹っ飛んだ。
これまで登り続けた、高い崖を横目に。
「ぐぅ…… 《ピック》」
落ちる僕、叫ぶアマンダ。そして僕を上から見つめる大型の土塊人形。
「ゴーレムッ!!」
腰に指していた剣を引き抜き、壁に突き刺して減速する。
同時にアマンダが上へと辿り着き……
「《雷破迅蹴》、喰らいなさぁい!」
上空で雷が弾ける。
戦闘が始まった。