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決意

「アマンダ……?」


「えぇ、他の誰に見えるのぉ?」


 目の前に仁王立つ彼女は、確かに昨日見た顔、見た服。


 完全アウェーの環境。

 たった数分の邂逅だったとしても、知り合いに会えたのは心強かった。

 でもだからこそ、僕の不評に巻き込むのは良くないこと。


「いや、ごめん。どうしてここにって、あぁ冒険者だったね。なら当然か。あっ、僕はもう出るよ。だからちょっと横にずれて貰っていい?」


「アモン」


「ごめん、僕が横から行けば良かったか。ははっ。……ごめん」


「アモン、アモン!」


「どうしたんだよ! そうです、僕がアモンですけど!?」


 どうにか、彼女と関わらないように。

 どうにか、彼女を僕の不評に巻き込まない様に。

 彼女を押し退けようとするけど、彼女は全然揺るがない。


「どいてよ、アマンダ」


「どかない」


「何がしたいんだよ!」


「お礼がしたいのよお!」


 あぁ、さっきも言ってたねそれ。でも大丈夫だから。もう大丈夫だから……


「どいてくれよ、なぁ」


 魔力を周囲に放出する。

 1人になりたかった。もう無理なんだと思った。

 そんなところに助けにこられちゃ、逆に困っちゃうんだ。


「アモン、意地張らないのぉ。アンタら周りの阿呆共は、この魔力を感じてもまだこの子をバカにするのぉ?」


 発した魔力は、アマンダには効かない。

 彼女はただ僕を見て、周りを見て語りかけた。


「彼は確かに《勇者魔法》が使えないかもしれないわぁ。でも、周りで口だけ出して愉悦してるアンタらよりよっぽどマシよお。……だって彼 は困っていた私を助けてくれたもの」


「お前もその雑魚を擁護すんのか!? 俺たちはそこの勇者モドキに勇者様を騙るなって注意してやってただけだ! お前もそんな奴と組んでたら、一生上には上がれねぇぞ!」


 1人の男が、アマンダに向かって啖呵を切る。確かにその通りだ。

 僕なんかを庇っても、勇者としての力なんて期待できない。

 みんなの期待に応えることなんて、できない……


「……そうだよ。どいてアマンダ」


「あぁ、どいちまえよ!」


「いいえ、どかない。私は私のやりたいことをやるわぁ。だからアモン、受付に行って要件を伝えなさあい」


 アマンダが僕を押し出す。周りが少しざわめくけど、アマンダが振った拳から放たれた魔力がそれを押しとどめる。


「待って、いいって……」


「お姉さんがここまでお膳立てしてあげたんだから。黙って甘えなさいな?」


 それでも躊躇する僕の手を、アマンダが引っ張る。

 そのままズルズル引きずられて行った僕は、再び受付の前に立ってしまった。


「あは…… あのー」


 受付嬢相手に上手く言葉が出ない。彼女が大声を出さなければ、こんな騒ぎにならなかった。なんてことを考えたりして。

 でもここまで来た以上、言わなければならない。


「タナトス山に登りたい。地図と注意点、あと丁度いい依頼は無いかな?」


 その瞬間、静かだった周囲の空気が振動した。


「タナっ、タナトス山! あそこは超強力な魔物の巣窟だ。1人で行って生きて帰れる訳ねぇよ!」


 ドッと再び怒った笑いに、お腹がキリキリする。

 でも、どんなに笑われても僕はいつかそこに行かなきゃならない。

 この街を出て北に10キロの所に聳え立つタナトス山。そこが母の手紙にあった座標だから。


「……受付嬢さん。せっかく男の子が頑張って告白してくれたんだから、真摯に答えてあげたらぁ?」


「は、はいっ!」


「……お願いします」


 受付の後ろのスペースに受付嬢が消え、周りには再び騒がしさが戻った。


「おいおい、死ぬわアイツ」


「まぁ、それならそれでいいんじゃね?」


「それもそうだな!!」


 あちこちで繰り広げられる会話のほぼ全てに僕への罵倒が混じる。

 くそ、お前らとっとと仕事に行けよ……


 その後も、受付嬢さんが帰ってきても周囲のコソコソ話は続き……


 結局僕が彼女から説明を聞き終わるまで言葉の武器は刺さり続けた。


「本当に行くんですか、アモン様? この時期は氷獄鴉が活発化しています! ただでさえ危ないのに…… その、私の責任問題になったり……」


「大丈夫、ちゃんと帰ってきますから。まぁそうじゃなくっても責任は僕にあるしね。ここにいる全員が証人です」


「聞きましたからね、それっ! 」


「ははっ、あなた中々に失礼だよね……」


 そんなヤバい受付嬢に地図を貰い、いくつか依頼を受理して今度こそ受付のレーンを引き返す。


「おい! 葬式の用意はしておくぜ。せいぜい綺麗な状態で死ぬんだな!」


 後ろから響く声にはまだ慣れない。

 どうして僕がこんな目に?


 でもそれを紐解くためにも、この冒険は必要だから。


「よくできたじゃない。頑張りましょう、アモン?」


「うん! って連れてかないからね!? 流石に危なすぎるし…… でも、ありがとう。色々ありがとう」


「ふふっ、いいってことよお!」


 ちゃっかり隣に立つアマンダに、万感の感謝を伝えて。


 僕は小さな1歩を踏み出した。

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