母からの手紙
拝啓アモン様
この度わたくし、ギュネスは逝去致しました。
そこで丁度良い機会だろうと考え、あなたが長年悩んできたことの答えをお教えしようと思います。
あなたはずっとこう思ってきたことでしょう。なんで僕は最強の勇者の息子なのに《勇者魔法》が使えるようにならないの?と。
その秘密は、あなたの血に有ります。
知っての通り勇者の子孫とは、700年前に大陸を脅かした魔王、それを討伐した異界からの旅人【勇者】の子孫です。
その血に宿る勇者魔法はとても強力で、昨今人気の職業である冒険者でも、勇者の子孫がパーティーに入っているだけでパーティーの格が一つ二つ上がる、唯一無二の家系。
そしてあなたの実家、我らがサンダース家はその中でも同族同士の婚姻を続けることにより高い血の純度と、高いレベルの勇者魔法を継ぐ聖光四剣の一角であり、あなたの父の代でついに最強の勇者の一族と呼ばれる程までになりました。
しかしです。あなたにはその能力が遺伝していない。
何故ならあなたの父は、勇者ではないから。
あぁ、息子を苦しめ、あげく死後こんなことを告白する母を許してとは言いません。ただ絶望せず、少し話を聴いていただきたいのです。
あなたは所謂不義の子です。
十七年前、私は騎士団の遠征で三年間帰ってこなかったレンバルドに対し愛想を尽くしていました。
そんな時出会った一人の男性。彼と会う度に恋は燃えていき……
すみません。ちょっと生々しかったですね。
とにかくそうして生まれたのがアモン、あなたです。
あなたが勇者として不適格なのは全て私の所為なのです。
今はもうこの世におりませんが、存分にお恨みになって下さい。
ですが、それでも私はあなたに希望を捨てないで貰いたいのです。
彼は勇者の血筋ではなかったけれど、とても強かった。それこそレンバルドに匹敵するほどに。
そんな彼が私のもとを去る時に渡してくれた座標。これがきっとあなたの道しるべとなる筈です。
最悪の母ですが、それでもあなたの幸せを願っています。
どうか、元気に、幸福に生きて下さい。
あなたの母 ギュネスより




