三八三年 祝の三十九日
昨日の夜に思ったこと。
ナリスはやっぱりギルド員なんだなって。
旅が好きで。強くなりたくて。
うん、やっぱりナリスにとって、ギルド員は天職みたい。
そんなナリスを私はここで待つことしかできないけど。
待つのは全然平気だよ?
会いたくなったり寂しくなったりしても、待つことは慣れてるもん。
ただ、私はナリスに会いに行けない。
ナリスに来てもらわないと会えない。
ナリスにばっかり負担をかけてるのが、ちょっと申し訳なくて。
ライナスがもっと中央に近かったらいいのに。
昨日、お兄ちゃんとの誤解が解けたマジェスさん。まっすぐな人みたいだし、お兄ちゃんと仲良くなれそうな気がするよ。
私には相変わらず、一歩引いた態度だけどね。
昨日ククルに無理させたからって、お兄ちゃん、今日は訓練に出ないんだってレンたちが言ってた。
「テオってホントにククルさん第一だよね」
セラムがそう言うけど。呆れたようにじゃなくて、ちょっと羨ましそうなのは気のせいかな。
「俺はテオたちよりレムのほうにびっくりなんだけどね」
レンが私を見てる。
ナリスとのこと、だよね。
特にこそこそしてはないけど、人前でベタベタもしてないはずなのに。何で知ってるの?
「え? まさかバレてないと思ってたの?」
今度は間違いなく呆れた口調のセラム。
私たちってそんなにバレバレなの??
そのうちお父さんに怒られそうだよ…。
そんなことを言われたんだって、夜に厨房でナリスに話したら。
ナリスは笑って、ごめんと謝ってくれる。
「許してもらえたって安心して、言葉とか態度とかに出てるのかも」
「謝らないで。ただそうなんだって思っただけなの」
私が慌てると、ナリスは頭を撫でて、微笑んだままキスしてくれたけど。
「…ナリスは大丈夫なの?」
「何が?」
「ギルドの仕事で来てるのに…」
私のせいで怒られたりしないのかな。
ナリスはちょっと驚いたように私を見てから、急に私を抱きしめた。
な、何??
あたふたする私をぎゅうっと抱き込んで。
「大丈夫」
耳元に吐息が触れる。何度されても慣れないままで、くすぐったい。
「俺の心配してくれてるんだ?」
「するに決まってるよ」
私といるせいでナリスが怒られるんだったら、私はナリスといられなくなる。
「大事なお仕事、でしょ?」
「そうだけど」
私を抱きしめる力が強くなって。
「俺はレムが大事なんだよ」
囁き声は、どこか焦ったように聞こえたけど。
きっと、気のせいだよね。
ナリスが来るのを待つしかないレム。
誰が相手でも待つのが常のレムですから、耐性はあるようです。
マジェスも直前まで予定になかったキャラですが、テオとはいいコンビになりそうです。