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三八三年 祝の三十八日

 朝になってもレンとセラムはまだ疲れた顔をしてた。

 ジェットってば、一体どれだけやったの?

 ロイもまだ難しい顔してるし。ゼクスさんたちも仕方ないなって顔してるし。

 ナリスが降りてきたから聞いてみたら、とりあえずリックが代わりに出るんだって言って。

「俺じゃ駄目って言われたし。あとはテオかな…」

「お兄ちゃん?」

 驚く私に、ナリスは何だかきょとんとしてる。

「うん。テオって結構動けるんだよ」

 知らなかったの、と言われるけど。

 知らないよ??



 朝食後、お兄ちゃんが慌ててやってきて、二階に上がっていった。

 すぐに降りてきたお兄ちゃん、私の前で足を止めて。

「ごめん、急に訓練出ることになったから、今日多分こっち手伝えない」

 結局お兄ちゃんが出ることになったんだね。

「もうすぐソージュも来るから大丈夫だよ。店のほうは?」

「あとでがんばる」

 そう言ってまた走って出て行っちゃった。

 ナリスは動けるって言ってたけど。アリーには全然敵わなかったし、大丈夫かな?

 私はそう思ってたんだけど、皆は違ってたみたいで。お昼に帰ってきたとき、マジェスさんは変わらないんだけど、レンとセラムが何だかちょっと怒った顔してた。

「レム、テオっていっつもあんななの?」

「あんなって?」

「こっちの言ってること、信じてないっていうか…」

 よくわからなかったから詳しい話を聞いたんだけど。

 ナリスの言う通りだったんだね。私もびっくりだよ。

「信じてないっていうより、ほめられてると思ってないんだと思うよ?」

「え?」

「だってお兄ちゃん、絶対ジェットたちと比べてるもん」

 お兄ちゃんの基本は絶対にジェットだからね。自分がジェットみたいにできない限り、ホントにほめられてるとは思ってないんじゃないかな。

「…確かにロイヴェインさんもそんなこと言ってたけど…」

 ロイはお兄ちゃんのことわかってくれてるんだ。やっぱりロイは先生なんだね。

 レンとセラムは顔を見合わせて。

 マジェスさんはちょっと考え込むような顔をして。

 わかったって言って、部屋に戻っていった。



 昼食のあと、お兄ちゃんと手合わせすることになったって言ってたレンたち。午後の訓練が終わったあとは、すっきりした顔してて。

 何があったのかは、夜にお茶を飲みに来たナリスが教えてくれた。

 誤解が解けたならよかったよ。

「テオの気持ちもわかるけどね」

 厨房で並んで座って。ナリスがそう言う。

「ジェットだけならともかく。もう片手で足りない上に、ギルド員でもないし」

 ナリスがどれだけの人を思い浮かべてるかはわからないけど、多分筆頭はロイなんだろうな。

 カップを見つめて独り言のように呟くナリスは、ちょっと悔しそうな顔をしてたから。

 そういうところを見ると、やっぱりナリスはギルド員で、強くなりたいって思いがあるんだなって、そう思った。

 そんなことを考えながらナリスを見てたら、視線に気付いてこっちを向いてて。

「何?」

 聞かれたけど、何でもないよって返した。

「ホントに?」

 頬に手が触れて、そのままキスされる。

 優しくて長いキスのあと、わざわざ耳元で話してって囁かれた。

 かかる吐息がくすぐったい。

「…ナリスはやっぱりギルド員なんだなって、思っただけ」

 だから正直に言ったけど、ナリスは不思議そうな顔をしてた。

 レムももちろんテオのことはよく理解してます。三人にとってのギルド員はジェットとダンであるので、そんなものだと思っています。

 本編は己の地力を知るテオ。何でもある程度できる代わりに飛び抜けて得意なもののないテオは、周りと比べると中途半端な自分に少し劣等感を持っていました。

 特に苦手がないって、すごいことなんですけどね…。

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冬野ほたる様 作
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