三八三年 祝の三十六日
訓練前日、いつも通りの時間帯にウィルが来た。
前回から日程が近いことを謝られて、明日のお昼にジェットたちが来ることを教えてくれた。
もちろんナリスも明日来るんだよね?
私とナリスのこと、もう家族もククルもソージュもジェットたちも知ってる。
そう思ったら、何だろう??
皆の前でナリスにどう接したらいいかわかんないよ?
次に来てくれたのは、レンとセラム。ふたりの師匠だって言って、ネーヴさんが挨拶してくれた。
「ふたりとも久し振り! 元気だった?」
「レムも!」
「また会えて嬉しいよ」
ふたりともそんなことを言ってくれる。
「レンのとこに入ったんだ?」
セラム、前のパーティーはあんまり上手くいってなかったって言ってたけど。やっぱり出ることになったんだね。
「うん。今はすごく楽しくやってる」
嬉しそうなセラム。
そうだよね、ネーヴさん、レンにもセラムにも同じ態度だし。何よりレンが一緒だし! 前の意地悪なパーティーより絶対いいよね!
よかったねって言うと、セラムもレンも嬉しそうに頷いて。それを見てるネーヴさんも優しい笑顔で。
うん、もう大丈夫だね。
「…あと、ちょっと話は変わるんだけどさ」
ちょっと声を潜めてレンが言う。
「テオって怒ると怖い?」
「お兄ちゃん?」
何で急に?
「俺の同期がテオのこと怒らせてさ…」
困りきった顔で、さっき外であったことを教えてくれた。
そんなことがあったんだ??
前回のアルディーズさんもだし。ギルドの人って何で皆いきなりなの??
「お兄ちゃん、怒ってるときはちょっと怖いけど。切り替えは早いから大丈夫だよ」
お兄ちゃんは怒ってることをあんまり引きずらないから、多分すぐいつも通りになるよ。
そう言うと、レンは安心したように笑った。
怒ったお兄ちゃん、怖かったのかな?
顔合わせが済んで、恒例のお茶を準備する。
今日はアリーがいないから、ロイが手伝いに来てくれてるけど。
ククルを見つめる視線がもうあからさまで。見てるこっちが恥ずかしくなるよ?
ロイだけ一日早く来たし、ずっと店にいるし。やっぱりこっちも何かあったんだよね…。
もう、お兄ちゃん。
ギルドの人に怒ってる場合じゃないよ?
ロイにウィルにアルディーズさんに。
ククルからそういう話は全然聞かないけど。私だって全然そんなじゃなかったのに、意識しだしたらあっという間だったもん。ククルだっていつどうなるかわかんないよ?
お兄ちゃんがククルのことずっとずっと大好きなの知ってるから。
私はお兄ちゃんにがんばってほしいよ?
元パーティーとの不和を見かねたレンがボルツに相談したことで、セラムのパーティー入りが決まりました。あとふたり兄弟子がいます。
自身はぐるぐる悩んだりしますが、人に対する怒りはそう持続しない性格のテオ。客商売には向いてるのかもしれませんね。
本編はマジェス登場。良くも悪くもまっすぐな人です。