三八三年 明の四十日
夕方にウィルが来た。
入ってきて、辺りを見て。受付の方に来かけたときに。
「ちょうどいいところに」
奥からの足音とウィルの声。
奥から来たのはお兄ちゃんだったけど。何だかちょっと不機嫌そうな顔でウィルを見てる。
「レム、ウィルの部屋」
ぼそっと言われて慌てて鍵を渡すと、お兄ちゃんはウィルと一緒に行っちゃった。
そのあと二階で何か話してるけど、内容までは聞こえない。
ケンカしてなきゃいいけど。
しばらくして降りてきたお兄ちゃんは、呆れたような、でもちょっと嬉しそうな顔をしてて。
「騒がせてごめんな」
「ううん」
ケンカしてないか聞こうかと思ったけど、そんな顔じゃないから大丈夫だよね。
お兄ちゃんが行っちゃって、すぐにウィルも降りてきた。まっすぐ受付に来て、私の前に立つ。
「すみませんでした、レム」
私? 何?
「テオとククルがこっちに来たせいで、宿にも迷惑をかけたかと思います。本当にすみません」
驚いているとそう続けて、ウィルは頭を下げてくれたけど。
慌てて上げてってお願いして。
「私は何もしてないのに、そのあと旅行に行かせてもらったくらいなの」
それなのにウィルに謝られたら困るよ。
「そう…ですか…」
どうしたらいいのかなって顔をしてるけど。ウィルは真面目だね。
そういえば。家族の話を聞いてしまったこと、ウィルに謝ってなかった。
「あの、カレアさんとフェイトさんから、ウィルの話を聞いてしまって…。その、勝手に聞いてしまってごめんなさい」
謝ると、ウィルはちょっとうろたえて。
「俺の話って……どの?」
どの、って、そんなにあるの?
家族と血がつながってないこと、っていったら、それか、とほっとしてた。
「隠してるわけじゃないので。大丈夫ですよ」
ウィルはカレアさんたちと同じことを言って笑ってくれた。
ウィルがお父さんたちに話しに行ってから気が付いた。
もしかして、ウィルがククルを好きなことを聞いたのかって思ったのかも。
…ごめんね、ウィル。
聞いてないけど、知ってるよ。
レムとは久し振りのウィル。もちろん自分の想いがバレていることは知りません。
次回から二回目の訓練編にいこうかと思うのですが、また長くなりそうですよね…。なんせ、メンバーがね…。
ちょっと毎日上げられなくなるかもしれません。八時に上がってなければ翌日ということで。
すみません…。