三八三年 明の二十六日
本編『明の二十八日』のネタバレを含みます。
昨日お兄ちゃんが帰ってきて。ひとりいると、やっぱり全然違うよね。
でも忙しい時間帯にはお父さんも店に行くだろうからって、変わらずソージュは来てくれてる。
訓練の前に実際に働けてよかったって。もう全然大丈夫なのにね。
お兄ちゃんがいるから少し手が空くようになったのかな、今日は久し振りにアリーが宿に来てくれた。
ソージュがふたりで休憩してきたらいいよって言ってくれたから。厨房でお兄ちゃんのお土産のお菓子を食べながらお茶を飲む。
「アリーもゴードンを通ってきたんだよね」
「そうよ。セレスティアからこっちに来るのも、中央からと変わらないもの」
「そうなんだ」
ゴードンはミルドレッドより大きな街で、セレスティアはもっと大きいんだって。
想像つかないなって思ってたら、アリーが私を覗き込んでた。
「気になるの?」
そりゃあ気にはなるけど。
「お兄ちゃんたち、遊びに行ったんじゃないんだもん」
ちゃんとわかってるから。そんなワガママ言わないよ。
笑った私に、アリーは少し考えるような仕草を見せて。
「レムも行きたい?」
「えっ?」
「私が帰るときに。一緒に行く?」
そう、聞いてくれるけど。
「行けないよ」
行く必要のあったお兄ちゃんたちとはわけが違うから。
そう返すと、アリーはちょっと笑った。
「レム。私はね、レムの気持ちを聞いてるのよ?」
言い聞かせるように、そう言って。
「行きたい?」
「そりゃあ…行きたいけど…」
もう一度聞いてくれたアリーに、今度は素直に返す。
「レムはいい子ね」
ぎゅっと私を抱きしめて笑うアリー。
「ちょっと待っててね」
そう言って厨房を出ていって。お父さんと一緒に戻ってきた。
お父さん、私を見て頷いて。
「せっかくだから。アリーに連れて行ってもらえ」
最初、何を言われたのかわからなくって。
アリーを見たら、にっこり笑って頷いてて。
え? ホントにいいの??
アレック、何気にアリー呼びです。
もちろんフィーナにもソージュにもアリーと呼んでね、と言っております。
本編はウィル回ですね。
ギルドに入ってからはひとりで過ごしてきたウィルだからこそ、家族の何気ない日常が嬉しいようです。
撤回を撤回。改めて、ではなく。本当は変わらないのだという思いがあるのかも、ですね。