三八三年 明の二十四日
本編『ウィルバート・レザン/降り積もる』『テオ・カスケード/伝言』のネタバレを含みます。
「ソージュはどうして職人になったの?」
今日も早く来てくれたソージュ。一緒に作業しながらそう聞くと、不思議そうな顔で見返された。
「何で急にそんなこと?」
「ちょっと聞きたくて」
昨日、ソージュの話を聞いてて思ったこと。
私がしたいことって何なんだろう?
もちろんこの宿は大好き。生まれ育った場所だし、私にとって大切なところ。
でも、私はこれをしたいのか。
それともこれしかないからしてるだけなのか。
それがわからない。
だから家業を継いで職人さんになったソージュに聞いてみたかった。
「どうしてって言われても、俺、そうなるものだと思ってたからな…」
「なりたかったんじゃなくて?」
思ってたより受け身な理由にびっくりする。
「なりたかった…んだと思うけど。改めて考えたことないな」
ちょっと首を傾げて、私を見て。
「レムは?」
急にソージュが聞いてくるから。
「私、は…わかんなくて」
焦って思ってたことがそのまま口から出ちゃった。
「そうなんだ?」
不思議そうな顔で呟くソージュ。
「レムはここが好きだからかと思ってた」
「好きだけど…」
ソージュを見返してそう言ったら、ソージュ、一瞬固まって。
「あ、あんまり深く考えなくてもっ。それでいいんじゃないか?」
何だかすっごく慌ててるけど。
それでいいのかな。
「そっか。ありがとう、ソージュ」
お礼を言うとそっぽを向いて、別に、って返された。
無自覚のレム、被弾したソージュはお気の毒ですね…。
レムもソージュも父親が現役の店主なので、まだ『継いだ』わけではないのですがね。
本編は初めての別離。お互い寂しそうです。
着火剤にされたテオ、少し仲良くなれましたかね?
ベリアでは、神出鬼没のイーレイさん。おそらくロイは化け物でも見るような目で見ていたことでしょう。