三八三年 明の十二日
本編『テオ・カスケード/ショールと菓子』のネタバレを含みます。
今日お兄ちゃんはミルドレッドに行くって言って。朝食のお客さんが捌けたらすぐに、アルドさんと向かうみたい。
ミルドレッド、いいなぁと思うけど。お兄ちゃんも遊びに行くんじゃないんだもんね。ガマンガマン。
お兄ちゃんがいない間はククルがひとりになるから、時々見に行ってと頼まれてる。
手が空いたら店に行くように、お父さんとお母さんも言ってくれた。
私が店に行っても何も手伝えなくて心苦しいんだけど。
ククルの気を紛らわすことはできるかな。
店に行くと、ククルはいつも通り仕込みをしてた。
「レム。珍しいわね、どうしたの?」
「うん。お兄ちゃんいないし、ククルどうしてるかなって」
ククルの様子を心配してることは内緒だって言われてる。だからそう言うと、ククルは笑った。
「ちゃんと仕事してるわよ」
いつもの笑顔でほっとする。
大丈夫そうでよかった。お兄ちゃん、ホントに心配してるからね。
「時間があるなら。お茶飲んでいく?」
「うん!」
もちろん私も心配してるよ?
だからククル、あんまり我慢しないでね?
お昼頃にお兄ちゃんが帰ってきた。
「レム、これ」
紙袋を渡される。
「留守番ありがとな」
開けていいって言われたから中を見ると、細長いパイが入ってた。
「ごめんな、さすがにもう冷めてるけど」
買ったときは焼き立てだったんだって。
ってことは、お菓子屋さんの店頭で売ってるやつだよね。
「ありがとうお兄ちゃん!」
お礼を言うとお兄ちゃんは笑って、ククルと食べといで、と言ってくれた。
テオがミルドレッドに行っている間の話です。
といっても、特に何事もなく。
本編はフェイトの話し方がどうにも馴染まず。
『〜じゃん』、難しいです…。