三八三年 明の十一日
お昼過ぎ、お兄ちゃんが来た。
今日泊まる人の中に、四人組のギルド員がいないかって聞かれたんだけど。
「来てないよ?」
そう言うと、わかったって頷いてから出ていった。
おとといも二人連れのお客さんが来てないかって確認に来てたよね?
店で何かあったのかな?
詳しいことを聞いたのは夜になってからだった。
それにしても、警邏隊が私服でうろついてるなんて聞いたことないよ?
手紙のことと、ジェットからも気を付けるよう連絡があったらしいし、その上警邏隊って。
せっかくジェットのことが落ち着いたのに。
そう思ってると、お兄ちゃんに頭を撫でられた。
「心配すんなって」
「違うの。ジェット、やっと終わったって言ってたのにって思って…」
ようやく肩の荷が下りたのに。また心配事なんて。
お兄ちゃんはそうだなって、少し困ったような顔をしたけど。
「でもジェットなら、ぼやきながら何とかするって」
大丈夫、と言ってくれる。
「それに。ジェットにはダンたちも、ほかにも助けてくれる人がいるよ」
俺たちだって、とお兄ちゃんは笑う。
「私も?」
「レムも」
優しく笑って、お兄ちゃんは言い切ってくれた。
私にできることは少ないかもしれないけど。
何か役に立てたらいいな。
久し振りにお兄ちゃんらしいテオ。
年が近い割には仲良しですよね。
警邏隊は基本隊服で行動することになっています。
ギルド員と紛らわしいですからね。