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三八三年 明の六日

 朝、時間があったら会いに来てってナリスに言われてたから。少し早く家を出て、ナリスのところに行った。

「おはよう」

 まだ朝早いのに、もうちゃんと出られるよう片付けてくれてる。私たちはナリスの性格がわかってるから、ナリスらしいよね、で済むんだけど。他の宿だとびっくりされてるんじゃないかな。

「おはよう。今日出発だね」

 うん、と頷いて、ナリスが私を抱きしめた。

「またしばらく来れないな…」

 呟きと同時に、私を抱きしめるナリスの手に力が入る。

「私はここで待ってるからね」

 待っててくれる、と、前に聞かれたから。今日は先に言っておいた。

 そしたらナリスが急に身体を離して私を見て。あんまりじっと見てくるから変なこと言ったかなと不安になりかけてたら。

 何の前触れもなく、勢いよくキスされた。

 突然すぎて心も身体も準備ができてない。すぐに苦しくなって離れるけど、間を置かずにまた捕まる。

 何? 急にどうしたの?

 苦しくなって逃げる私を追いかけるナリス。両手首を掴まれて、あまり距離は取れない。

 最後にはぐいっと両腕を引かれて。ナリスの胸に抱き込まれた。

 手を放して、またぎゅっとされる。

 どうしたんだろう、と思うけど。

 頭を押さえるみたいに強く抱かれてて、顔も上げられない。

「…レム」

 身体に響くナリスの声。

「ありがとう」

 何がありがとうなのかはよくわからなかったけど。

 ちょっと震えるその声に、私は黙ってそのままでいた。



 しばらくしてから手を緩めて、優しくキスして。

 私を離したナリスはもう笑ってたから、何も聞かなかった。

 結局前に何があったとか、教えてもらえなかったけど。今目の前のナリスは嬉しそうに笑ってて、それを見て私は幸せだと思えるから。

 だからもう、いいかな。

 唐突なナリスに振り回されるレムですが、トリガーはレムだったりします。本人気付いてませんけど。

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冬野ほたる様 作
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