三八三年 明の五日
午前中は忙しくなかったから、ナリスは手伝うよって言ってくれたけど断った。せっかくのお休みなんだもん。疲れ、取らないとね。
でも私が受付付近の掃除を始めると、最初は長椅子に座って話してくれたナリスだけど。そのうち私じゃ届かない高い場所とかを拭いてくれたりと、結局手伝ってくれた。
ありがとうって言うと、手伝いたいからやってるだけって言って。そのまま額にキスされた。
お昼は皆と一緒に食堂で食べられて嬉しかった。
夕方、南から到着するお客さんが一段落して。手が空いたから、ナリスから頼まれてたお茶を持っていく。
今日は珍しく、いつでもいいから手が空いたらお茶を持ってきてって言われてた。
ナリスはにっこり笑ってお茶を受け取り、中に通してくれた。
もうある程度荷物もまとめてあるのが、やっぱりナリスらしいよね。
そんなことを考えてると、手が伸びてきて。ぎゅっと抱きしめられる。
「もっといられたらいいんだけど」
急に耳元で囁かれて、頬にキスされて。ちょっとびっくりした。
明日帰るナリス。次は祝の月の訓練のときかな。
今までだと次いつ来られるかわからなかったんだし。年に二回くらいしか来ないこともあったし。
それに比べれば、まだわかってるだけいいよね。
会えないのは私だって寂しいけど。
今のうちに甘えておこうと思って、私もナリスを抱きしめる。
「レム」
名前を呼ばれて顔を上げるとキスされる。優しいキスを、何度も。
あれ? 昨日はすぐ離してくれたのに。
強引さはないけれど。やめてもくれない。
少し離れて、私を見て笑って。またキスして。
「ナリス」
「ん?」
離れた隙に名前を呼ぶと、そのまま止まって言葉を待ってくれてる。
「お茶、飲まないの?」
「あとで」
そう言って、軽いキスをして。
「今は、レムがいい」
吐息混じりの呟きの直後、さっきよりも深く唇が重なって。
そこからは少し強引さが戻ったナリスに翻弄されながら。
離してもらえるまで、何度もキスした。
レム、今日は離してもらえませんでした。
そんなに慌ててないようにも見えますけどね。
仲良しで何よりですが、お茶は冷める前に飲んだほうがいいかと思います…。