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三八三年 明の四日

 年始はお客さんがほとんどいないから、ホントにのんびりできる。

 お兄ちゃん、ジェットとダンに手合わせしてもらうって言ってたけど、お昼食べに食堂に行ったらぐったりしてた。

 ふたりに相当しごかれたんだね。

 ナリスがいたら笑っただろうなぁ。



 そんなことを思ってたら! 夕方にナリスが帰ってきた。

 慌てて受付に入ろうとする私を捕まえて、さっとキスして。

「ただいま」

「おかえり…って、帰ったんじゃないの?」

「実家は顔出してきたよ。…でも、今は俺、ここのほうがいいし」

 自分で言ったのに、照れたように笑うから。

 見てる私まで恥ずかしくなるよ。

「レムにお土産」

 そう言って、荷物の中から小さな包みを渡してくれた。

 お礼を言って開けてみると、中は淡いピンクの珊瑚のブローチだった。

「ククルとお揃い」

「ありがとう! そっか、シューゼ地区だったよね」

 ここから東にあるシューゼ地区は海に面しているから、珊瑚とか真珠とか、海の物が有名だ。

「うん。でも実家はエンドールだから、海からはだいぶ遠いんだけどね」

 確かに、全部の町が海に面してるわけがないもんね。

「うちは小間物屋だから、こういう物も置いてあるんだ」

 ナリスの家って小間物屋なんだ。

 知らなかったな。



 夜、お兄ちゃんとククルは食堂で、お父さんとジェットと一緒にお酒を飲んでみることになったんだって。成人したお祝いも兼ねてるみたい。

 大人はお酒を飲んで楽しそうにしてるよね。

 泊まってるの、ダンとナリスだけだから。ホントはもう宿にいなくても大丈夫なんだけど。

 多分来るんじゃないかなって思って待ってたら、やっぱりナリスが降りてきてくれた。

「レム」

 厨房に入るなり名前を呼ばれて。振り返ったらナリスが手を伸ばして頬に触れて。

「ただいま」

 そう言いながら私の唇を親指でふにっと押さえて、何だか嬉しそうに笑ってる。

 じっと私を見てるナリスの瞳はいつもより熱っぽいのに、それからしてくれたキスはものすごく優しくて。

 いつも私があわあわするまで何度もキスして離してくれないのに、今日はその一度だけで離してくれた。

 どうしたんだろ? 恋人の余裕??

 わからないけどナリスがとっても嬉しそうだから、いっか。

 お茶を淹れて。隣に座って。

 ブローチのお礼をもう一度言うと、そこからナリスの昔の話になった。

「町は内陸地だけど、シューゼに行き来する人が多くてね。商人とかをよく見かけた」

 シューゼは地区名になるくらいだから、もちろん地区内で一番大きな街。きっとその地区ならではの物もたくさん集まってくるんだろうね。

「だからかな、旅をするのに憧れがあって。それでギルドに入ったんだ」

 ギルドに入って、いろんなところに行けて楽しかったって笑うナリス。

 旅が好きなのは知ってたけど、昔からの憧れだったんだ。

 そう思うと、ギルドのお仕事はホント、ナリスにとっては天職なんだね。

 そう言うと、ナリスは嬉しそうに頷いた。

 ナリスの変化を、いっか、のひとことで済ませるレム。おそらくそうでないとナリスとは付き合えません。割り切ることは大切ですよね。

 本編はジェットとダンに遊ばれるテオ。わかりきった相手だからこそ、遠慮がないです。

 夜は飲み会、ではなくささやかなお祝い。結局ふたりのアルコール耐性はわからずじまいでした。

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冬野ほたる様 作
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