三八三年 明の三日
今日の朝に発つナリス。
昨日のことが気になったから、呼ばれてないけど様子を見に来た。
扉を叩いて。出てきたナリスはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに部屋に入れてくれて。私を見て嬉しそうに笑った。
「心配して来てくれたの?」
「うん。それもあるけど」
昨日、少し話してくれたけど。
結局ナリスが何を怖がってるのかはわからないままだった。
だからどうしたら安心してもらえるのかはわからないけど。
もしかして私がこれを確認すれば、少しは安心してくれるかな。
「ナリスにね、聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?」
そう、と頷いて。
「ナリスと私って。恋人同士なのかなって…」
誕生日のときに思ったことを聞いたら、ナリスはものすごくびっくりした顔をしたあと、困ったように笑った。
「…俺、そんなに不安にさせた…?」
「違うの! そういう意味じゃなくて。そう思っていいのかなって…」
私が慌ててそう言うと、ナリスはじっと私を見てから何かに気付いたみたいに、あぁ…、と溜息混じりに呟いて。
「そっか、俺何も…」
がっくり肩を落としたナリスが、そのまま息を吐いて、顔を上げた。
「ごめん、レム。大事なことなのに」
真剣な顔で、手を取られる。
「今からでも、いい?」
頷くと、ありがとうと言われて。
一旦下を見て、まっすぐ私に向き直るナリス。
改まりすぎて、何だか恥ずかしい。
握られたままの手に、ぎゅっと力が込められる。
「俺はレムが好きです。俺の恋人になってもらえますか?」
まっすぐ私を見てくれてるナリスの顔も、もう耳まで真っ赤で。
もちろん私だってしゃがみ込みたいくらい恥ずかしいけど。
両手でナリスの手を包んで。大きく頷いた。
「喜んで」
答えなんてわかってるはずなのに。
ナリスは安心したように笑み崩れて、ぎゅうっと私を抱きしめた。
「あぁもう緊張した…」
そんなことを言ってから、両肩を持って私を離す。
「これからよろしく」
微笑むナリスに。
「こちらこそ、よろしくね」
私もそう返して。どちらからともなくキスをした。
ナリスも出ないと行けないし、私も仕事に戻らないと。
そう思って部屋を出ようとしたら、ナリスに呼び止められた。
「…待っててくれる?」
らしくない、小さな声に。
振り返ると、縋るように私を見るナリスがいた。
「俺が戻るの、待っててくれる?」
どうしたんだろうと思ったけど。
当たり前だから、すぐに頷く。
「待ってるよ」
聞いてきたのはナリスのほうなのに、そう答えたら何だか驚いた顔をされて。
そのあと、嬉しそうに笑って。
ありがとうって、言ってくれた。
今更なふたりです。
ていうか。お前明日戻ってくるんだろうが(ネタバレ)。
本編はいつもの調子のジェットとダン。バラ売り禁止なので仕方ないです。