三八二年 祈の二十七日
本編『祈の二十八日』のネタバレを含みます。
夕方。お父さんが、訓練中に手伝ってくれる人が決まったって教えてくれた。
これだけ早く決まったってことは、町の人だよね?
お父さんが昨日今日と町に行ってたの、その話をしに行ってたんだ。
ってことは、やっぱり?
そう思ってたら、挨拶に来たのはやっぱりソージュで。
明日からしばらく仕事を覚えるために来るんだって。
「自己紹介は必要ないな。レム、明日から教えてやってくれ」
「うん。任せて」
ナリスにも私が教えたからね。大丈夫!
「ありがとう、ソージュ。よろしくね」
そう言うと、ソージュは私を見て笑って。
「こちらこそ。明日からよろしく」
そう言って手を出してくれたから、握手した。
そもそも人が来るかも心配してたのに。来てくれたのが町の人で、しかもソージュだよ?
幼馴染だから、よく知ってる。
優しくて、真面目で、器用で。人当たりもいいからお客さん相手でも問題ないし。
ソージュだったらホント安心。
何より私が嬉しい。
一緒に働くんだもん。気を遣ったり怖かったりするのは嫌だもんね。
でも、ソージュは木工の職人さんなのに。仕事はいいのかな?
「ここに来てる間、仕事は?」
そう聞くと。大丈夫って頷いて。
「うち、兄さんふたりいるから」
そういえば、この小さな町に四人も職人さんがいるんだよね。家具は作るのに時間がかかるからっていうのはあるんだろうけど。そっか。
「大丈夫ならよかった」
うちのために、ソージュのところが無理するのは違うもんね。
問題なく来てもらえるなら。ホントに嬉しいよ。
今日は挨拶だけだから。もう帰るソージュを見送る。
「お兄ちゃんには言ったの?」
そういえばと思って聞くと、ソージュはまだだけどって笑ってる。
「店はもう忙しいだろうから、向こうに挨拶するのは明日の朝にするよ。テオにはレムから言っといて」
「わかった」
内緒にしておいても面白そうだけど。すぐバレるしやめておこう。
「じゃあまた。明日」
「うん。明日ね」
手を振るソージュがちょっと嬉しそうに見えたけど。楽しみにしてくれてるのかな。
ソージュが来ました。
本編ではホントに出番がなくて不憫ですが。
こちらでは宿メインなので出番はあるかと。