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三八二年 祈の二十二日

 四日目。今日からジェットたちも訓練に参加する。

 朝、めちゃくちゃ緊張した様子だったディー。

 とにかく大丈夫だって励ましておいた。

 ちゃんと実力を見せられてるかなって思ってたけど、お昼に戻ってきたときはかなり興奮気味で。

「レム! ジェットさん、ほんとにすごいな?」

 受付にいた私に詰め寄るくらいの勢いで話してくる。

 ジェットのことをいっぱいほめたあと、ディーはふっと真顔に戻って。

「…本当に、レムの言った通りの人なんだね」

 ぽつりと、そう言った。



 皆よりちょっと遅れて帰ってきたゼクスさんたちだったけど。すぐに慌てた様子で降りてきた。

「レムちゃん、ロイを見てないか?」

 いつも落ち着いてるゼクスさんが、見たことないくらい焦ってる。

 皆が戻る少し前から受付にいたけど、そういえばロイは見てない。

 そう返すと、ありがとうって言って外に出ていった。

 ロイ、どうしたんだろ?

 ゼクスさんはすぐ帰ってきて。ロイはジェットと戻ってきたけど。

 何だかちょっと、辛そうな顔してるかな。

 午後の訓練に向かうジェットから、ロイは疲れてるから休ませてやってと言われて。

 しばらくしてから降りてきたロイは、やっぱりまだちょっと辛そうな顔をしてた。

「まだ辛い?」

 そう聞くと、驚いた顔をしてから。

「ううん、大丈夫」

 少し笑って答えてくれた。

 ヴェインさんのときは顔が見えないから気付かなかったけど、ロイって訓練生の皆を見てるときはすごく優しい顔してるんだよね。

 だからきっと、皆もロイを慕ってるんだね。



 今日もロイに訓練をつけてもらってから夜食にするって言って、皆張り切ってる。すっかり訓練生の輪の中心のディー。通りがかりにこっちを見て、嬉しそうな顔を見せてくれた。

 ホントによかったね。

 皆が出ていってすぐ、ナリスが降りてきて。

 …やっぱりお茶?

 そう聞くと、黙ったまま頷いた。

 ふたりで厨房に行って。今日はちゃんと先に水を火にかけて。

 お茶を淹れる準備をって思ったら、うしろからナリスに抱きしめられた。

「…確かに仲良くなったって言ってたけど」

 頭の上から小さな声が聞こえて。

 首元に、ナリスが顔を寄せる。

 髪と息がくすぐったいけど動けない。首元が温かい…って、ナリス? 噛んでない?

 痛くはないけど! ねぇ?

 どうしたらと思ってたら、すぐにやめてくれたけど。抱きしめられたままなのは変わらない。

「…俺のって印、つけれたらいいのに」

 頭の上からの呟きは、見えないからどんな顔して言ってるのかわからなかったけど。

「噛まれるのは嫌…」

 跡がつくくらい噛まれるのは痛そうだし嫌だから。

 正直にそう言うと、ちょっと間があってから、ふっと笑う声がした。

「ごめん」

 そう言って、今度こそ離してくれた。

 ちょっとほっとして。振り向いてナリスを見ると、微笑んだまま頭を撫でられる。

「いい?」

 撫でてた手が止まって。くい、と寄せられる。

「い、いいって何が…?」

「昨日の続き」

 ちゅっ、と軽く唇が触れる。

「まだ足りないって、言ったよね」

 確かに言ってたけど!

 待って、と言いかけたけど。間に合わなくて。

 沸かしてたお湯が半分くらいなくなっちゃうまで、離してもらえなかった。

 相変わらず暴走中のナリス。

 付き合うレムも大変です。

 本編はロイがぐるぐるしてるところです。

 強くったって十九歳。まだまだ大人にはなりきれません。

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冬野ほたる様 作
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