三八二年 祈の十八日
お昼過ぎ、ギルドの人たちが到着した。出迎えはククルに任せて、私は案内する準備をしてないとね。何てったって今回は人数が多いから。がんばらなきゃ。
そう思ってると、ふたり入ってきた。ひとりはウィル。もうひとりはいかにもギルド員って感じのおじさんだった。
「レム。またお世話になります。早速すみませんが、ひとり増えたので、もうひと部屋増やしてもらえますか」
ウィルがそう言って、隣のおじさんを見た。
「急な変更で申し訳ない。私はセドラム・リーヴス。ディアレスを預かる者だ」
えっ? てことは、ディーの師匠なの?
慌てて名乗ると、君が、と言われた。
「ディアレスから聞いている。とてもよくしてくれたと」
ありがとう、と言われるけど。
ちょっと待って、全然考えが追いつかない。
何でディーの師匠が来てるの?
そうこうする間にゼクスさんたちが降りてきて。ウィルとリーヴスさんが挨拶し始めた。
それからふたりが外に行って。しばらくしたらまた人が来た。
「レム!」
「リック?」
名前を呼んで手を上げるリックのうしろ。
「…また来れて嬉しい」
そう言って笑うのは。
「ディー…」
帯剣してるから、ギルド員のままだよね。
元気そうに、笑ってる。
「レムっ??」
零れた涙に、ディーとリックの慌てた声がする。
よかった。ホントよかった。
涙を拭って、私も笑う。
「私も。また会えて嬉しい」
皆で外で顔合わせをして。
リック以外にも四人、私と変わらないくらいの子たちが来てた。
皆を部屋に案内して、しばらくしたらお兄ちゃんが来た。
「どうしたの?」
「ククルがお茶出そうって言うから。こっちで淹れようと思って」
皆移動で疲れてるだろうしね。ククルらしいな。
「私淹れるよ。ククル手伝ってあげて」
「ありがと。助かる」
そう言ってお兄ちゃんが戻った。
結構な人数だから。いっぱいお湯沸かさないとだよね。
そうしてる間にお菓子を持ってククルが来て。まずゼクスさんに出して許可をもらうって言って、お茶を持っていった。
ククルが行ってる間に準備をしてたら、今度はロイと一緒に降りてきた。
「ありがとうレム。いいって言ってもらえたから持っていくわね」
「手伝う?」
「聞きたいこともあるし、ロイが手伝ってくれるから大丈夫よ」
黙ってうしろに立ってるロイが、少し笑って頷いた。
皆の部屋と厨房を行き来するククルとロイ。
見てて、ちょっと違和感を感じる。
それが何かわかったのは、皆にお茶を渡し終わって、最後にククルがロイの分を手渡してたとき。
どこか緊張した顔で。でも嬉しそうな瞳をして。ククルからトレイを受け取るロイ。
その顔を見て、うしろに立ってたロイがどんな顔して誰を見てたかに気付いた。
ロイって、そうなの?
ククルが好きなの??
ロイが部屋に戻って。ククルもお礼を言ってくれてるけど、私の気持ちはそれどころじゃない。
お兄ちゃん!!
どうするの??
ディーが来ました。リックとは、前日ギルドを出発するときに初めて会いました。
一方ロイ。髪を切って表情が見えるようになったら、早速色々バレてますね…。本編でもまだまだ迷走中です。