三八二年 祈の十三日
ゆうべ、仕事が終わって家に戻る前。待ってくれてたナリスにキスされて、明日帰る前に部屋に来てって言われた。
朝早くに出るって聞いてたから、まだ朝食前だろうけど部屋に行く。
扉を叩くとすぐ開いて、笑って手招きされた。
「おはよう」
「おはよう、ナリス」
荷物はもうまとめてあって。前回からは部屋の中は掃除をしやすいようにしてくれてた。仕事を手伝ってくれてたから、どうしたら助かるかわかってくれてる。
ナリスらしいなと笑ってたら、すっと手を取られた。
「何?」
聞きながら、ナリスが手を引っ張って。近付いたところをキスされる。
「何笑ってるの?」
囁くように聞いてから、もう一度。
ナリス! 答えられないから!
あたふたする私に微笑んで、三度目のキスをして。ようやく放してくれた。
昨日私も好きだって言ってから、ナリスがめちゃくちゃキスしてくるんだけど、普通そういうものなのかな。
もちろん嫌じゃないけど。恥ずかしくって仕方ないよ…。
「訓練、すぐにやると思うから。また来れるのは嬉しいけど…」
そう言いながら、ナリスが私を抱きしめる。
「…それはそれで、心配だな」
「心配?」
聞き返すと、私を見つめてちょっと笑って。
「そう。心配」
頬にキスして、唇が触れそうなくらい顔を寄せて。
「それだけ人が来るってことだから」
やっと聞き取れるくらいの小さな声。
「ナリ…んっ」
名前くらい呼ばせてよ?
さっきまでの触れ合うようなキスとは全然違ってて。込められた熱量にくらくらする。
間違いなく、今までで一番長いキス。
やっとで離れたナリスは、私を閉じ込めるように抱きしめて。
「レムも一緒に行けたらいいのに」
ぽつりと、そう呟いた。
この短い文章中に何度キスと書かせる気だ…。
やっぱり少し闇が洩れているナリス。
こんなキャラじゃなかったはずなのですが…。