三八二年 実の十四日
「お世話になりました」
いつものようにそう言うウィル。
昨日遅くまでお兄ちゃんと話してたみたいなんだけど。
…もうわかんなさすぎるから、考えるのやめとこう。
お兄ちゃんとウィルが何を話してたか知ったのは、その日の夜だった。
お兄ちゃんから話があるからって言われて。お父さんとお母さんと一緒に集まった。
「はっきりしないから言えずにいたけど、たまにククルの様子がおかしいときがあって…」
お兄ちゃんの話、私はただびっくりするだけだったのに。お父さんとお母さんはお互いを見て、ふたりで頷いてる。
「初めからククルは泣きも取り乱しもしなさすぎた。どこかまだ受け入れきれてない部分もあるんだろう」
そう言うお父さんは、本当に心配そうな顔をしてて。
「ありがとうテオ。ひとりで心配だったでしょう?」
お母さんがお兄ちゃんを慰めてて。
「ウィルが、ジェットに話しておいてくれるって」
それきり黙り込んで、お兄ちゃんはうつむいてた。
どうしようって言ったって、どうしようもない。
結局皆で気をつけようってことになったんだけど。
ククル、そんなに思い詰めてるのに、全然わからなかった。
「レムは店にいないんだから知らなくて当然だろ、気にしなくていいよ」
落ち込む私を、お兄ちゃんはそう言って慰めてくれるけど。
でも、やっぱり。
ジェットのことも。ククルのことも。
私、全然気付かないままで。
自分が情けないよ。
お世話になりましたと言いつつ、昼まで食堂に居座るウィル。
レムが落ち込むと慰めに来るテオ。
久し振りにお兄ちゃんらしい姿ですかねぇ