三八二年 実の十二日
やっちゃった!!!
食堂から慌てて戻りながら、ホントにごめんねとお兄ちゃんに謝る。
だって、ククルかわいかったんだもん。
エプロンも髪留めも似合ってるし!
見せようと回ってくれたから、裾とか髪とかふわんとして、めちゃくちゃかわいかったよ?
だからそう言っただけなの!
お兄ちゃんもそう思ってるの知ってるけど! 言わせるつもりじゃなかったの!
ホントにごめん、お兄ちゃん。
…でもこれでククルが意識してくれればって思うんだけど、きっとお兄ちゃんのことだから、ククルが気にしないように流しちゃうんだろうな。
「レム、お前なぁ…」
お昼過ぎ、戻ってきたお兄ちゃんに宿の裏で捕まった。
「ごめんね、お兄ちゃん」
素直に謝ると、仕方なさそうに溜息をつかれる。
「今日ククルが居心地悪くなったら台無しだろ。これ以上つつくなよ?」
そっか、お兄ちゃんそんなふうに考えてたんだね。
「わかってるって」
ホント、お兄ちゃんってククルのことが一番なんだね。
でももうちょっと。
自分の気持ち、出してもいいんじゃないかなって。
私は思うんだけどな。
夕方からはお母さんとふたり。まぁいつものことなんだけどね。
ククル、『お客様』楽しんでるかな。
ククルのことだから、すぐ手伝うとか言って。呆れて笑って止めるお兄ちゃんが目に浮かぶ。
ホント、仲いいよね。
お兄ちゃんのケーキ、ククルびっくりするだろうな。
そんなことを考えてたら、ソージュが入ってきた。
「レム、お疲れ」
「どうしたの?」
隣のついで、とソージュ。
そっか、ククルにプレゼント渡しに来たんだね。
「ソージュは何あげたの?」
「ん? ああ、棚に置ける、小物を分ける入れ物がほしいって言われてたから。それ」
「それって店の備品じゃないの?」
ククルらしいけど。
思わず笑うと、ソージュも笑って。
「レムは何がいい?」
私?
聞かれて考えるけど。
「…棚用の入れ物はいらない」
「わかってるって」
ソージュが呆れたように笑う。
「まぁ、まだしばらくあるし。考えといてよ?」
「うん。ありがとね」
またねとソージュは帰っていった。
ついででも、わざわざ聞きに来てくれたんだ。
誕生日、まだ先なんだけど。
思いつかないや。
レムはテオが告り済みなことを知りません。
バレない程自然なふたり、なのですかね。
ソージュ再登場です。
ソージュはレムのひとつ年上。幼馴染ですが、なかなか出番がありませんね…。
本編ではロイが暴走したおかげで、ウィルも予定外の行動に出ました。振り回されるククルが少々難儀です。