三八二年 実の十一日
ククルの誕生日前日、ウィルが来た。
やっぱりククルの誕生日だからかな、と思ってると、お父さんとお母さんと私、皆ロビーに呼ばれる。
お久し振りですと挨拶したあと、ウィルは深々と頭を下げた。
「ギルドの問題をこちらにまで持ち込むことになってしまい、本当に申し訳ありません」
急に謝られてびっくりしてると、お父さんがすぐにウィルの傍に行って肩に手を置いた。
「ジェットの問題なら、俺たち家族が関わるのは当然だ。ウィルバートさんが謝ることじゃない」
そのまま引っ張り起こすお父さん。
「あいつはあんなだから迷惑もかけるだろうが、これからもジェットをよろしく頼むよ」
ウィルはちょっと驚いたようにお父さんを見て、それから少し笑って頷いた。
「もちろんです」
ジェットの前では多分絶対にしない、ウィルにしては珍しい顔。
ウィルもジェットのこと、やっぱり大事に思ってるんだね。
もう一度お礼を言ってくれてから、ウィルがちらりと私を見た。
「あの六人のことなのですが」
何だろうと思ったら、そういうこと?
「しばらくの減給と奉仕活動で済みました。全員前向きにがんばっていますよ」
私が心配してるのを知ってて教えてくれたんだね。
皆もギルド辞めさせられたりひどい罰を受けたりしなくて、ホントに、本当によかった。
そう思うとやっぱり涙が出てきて。
「レム??」
慌てたウィルを見て、お父さんが気付いて宥めてくれた。
びっくりさせてごめんね、ウィル。
教えてくれてありがとう。
皆、ホントによかったね!
レムが泣くのに遭遇するのは初めてのウィル。
さぞうろたえたことでしょうね。
アレックがいてよかった…。