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三八二年 雨の十八日

本編『雨の十九日』のネタバレを含みます。

「頼みがあるんだ」

 夜、そう言ってお兄ちゃんが頭を下げた。

 何、と思ってお兄ちゃんを見る。真剣なその顔に、私は口を出すのはやめた。

「何だ?」

 短く聞いたお父さんに。お兄ちゃんは顔を上げて私たちを見た。

「食堂を開けたいんだ。ククルにはあの店が必要なんだよ」

 食堂を?

 突然すぎるお兄ちゃんの頼み。でも、ククルに必要だってことは私にもちょっとわかる。

 だってククル、まだちゃんと笑わない。顔は笑ってても、全然笑えてないんだもん。

「俺ひとりじゃどんなにがんばっても無理なことはわかってる。こっちに迷惑かけることもわかってる。でも」

 下を向いて、手を握りしめるお兄ちゃん。

「このままじゃ、ククルが…」

 追い詰められたみたいなお兄ちゃんの顔。ホントに、本当に、ククルのこと心配なんだって。そう思って。

「お父さん、お母さん、私からもお願い!」

 いつの間にか、言葉が出てた。

「ククルのことは絶対お兄ちゃんが一番わかってる。そのお兄ちゃんが言うんだから、きっとそうなんだよ」

 私だって今のククルを見てるのは嫌。

 嬉しそうに、楽しそうに、店に立ってる。いつものククルが見たい。

「お願い、します」

 もう一度お兄ちゃんが頭を下げた。



 お父さんとお母さんが顔を見合わせる。

 お母さんはちょっと笑って頷いてた。

 お父さんは大きく息をついてお兄ちゃんを見る。

「テオ」

 頭を上げたお兄ちゃんに一緒に来いと言って、ふたりで行っちゃった。

 残った私とお母さん。

「レムもいいの? 忙しくなるわよ」

 急に言われてお母さんを見ると、笑って私を見てた。

「忙しいのなんて平気。ククルが元気じゃないほうが嫌」

 そう言うと、お母さんもそうねと言って。

 私をぎゅっと抱きしめた。

「レムも、テオも。ありがとう」

 どうしてお母さんがありがとうって言うのかわからなかったけど。

 ううん、多分お母さんもククルのこと心配してるんだろうな。



 お父さんとお兄ちゃんはすぐ戻ってきて。

 何を話したのかは教えてくれなかったけど、食堂を開けることにしようって言った。

 それから皆で具体的な方法を相談して。

 明日、お兄ちゃんがククルに話すことなった。

 ククル、喜んでくれるといいな。

 本編『雨の十八日』の続きです。

 アレックは特にレムに甘そうだな、と思いつつ。

 書き上がってる分はサクサク上げますよー。

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冬野ほたる様 作
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