三八二年 動の四十一日
今日も朝から大忙し!
午前中だけ訓練に参加するからって、お兄ちゃんめちゃくちゃ早起きして、家で仕込みしてた。
店でやるとククルを起こさなきゃならないからって言ってたけど、多分ククルのことだから同じくらい早起きしてるんだろうけどね。
あのふたり、似てるんだよね。
お兄ちゃんと一緒に朝食とお茶を持っていくと、三階の六人、まだしょんぼりした顔で。
お兄ちゃんが訓練を一緒に受けるからって話しても、わかりましたと頷くだけだった。
ホント、普通の男の子たちにしか見えないんだけどな。
お父さんに私は部屋には入るなって言われてるから、朝食をテーブルに置きにいったお兄ちゃんが戻るまで入口で待ってたら。
あの赤い髪の子が、じっと私を見てた。
「…あの、取りに行ってもいいですか?」
気を遣ってくれたのかな、私とお兄ちゃんにわざわざそう聞いてくれる。
お兄ちゃんが頷いて、私もお願いしますとポットを前に出すと、途端にぱっと嬉しそうな顔になった。
「ありがとうございますっ! 俺、カートっていいますっ!」
走ってきて、ポットを受け取りながら名乗ってくれるけど。
「カート!」
急に一緒に泊まってた年上の人が声を上げた。
ちょっとびくりとして、それから何かに気付いたみたいにしゅんとなるカートさん。
「…すみません」
小さく謝られるんだけど、理由がわかんない。
お兄ちゃんを見ると、仕方なさそうな顔してた。
「ククルのこと狙ったの、気にしてるんだよ」
お昼になって、昼食と持っていくお茶を淹れてる間に、お兄ちゃんがそう言った。
「訓練中もあんな感じだった」
「ククルは気にしてないんでしょ?」
「そうなんだけどな」
「お兄ちゃんは?」
そう聞くと、どうだろな、と返される。
「そりゃあ腹も立ったけど、ゼクスさんが全部言ってくれたし。ククルが気にしてないのに俺が怒るのも違うしな」
苦笑いして息をついて。
「それにあんな態度されてると、なんかもう見てられない。むしろ普通にしてほしい」
同じくらいの年だし、余計そう思うよね。
「まぁ顔を合わす機会は多いだろうから、少しずつ話してみるよ」
そう言って、笑うお兄ちゃん。
ホント。しばらくここにいるんだから。仲良くなれたらいいのにね。
本編にはない日付です。
まだ自戒中の六人。やはりフライング気味のカート以外動きがないです。
それにしても。皆おおらかですよね…。