三八二年 動の四十日
食堂のドアベルがものすごい音で鳴った。
どう考えても普通に開け閉めした音じゃない。
ククルとお兄ちゃん、店にいるのに!
「そこにいろっ!」
奥から走ってきたお父さんがそう言って宿を出ていく。
お母さんも来て、安心させるように肩を抱いてくれた。
大丈夫だよね?
それきり大きい音はしなかった。
大丈夫かなと思ってたら、お父さんとゼルさんとヴェインさんが戻ってきて。
お父さんがふたり、ヴェインさんがひとり、男の子を担いでて。
そのうしろ、三人の男の子とゼルさんがついていってる。
気失ってるみたいだけど、大丈夫なの??
慌ててカウンターから出ようとしたら、そこにいろとお父さんに言われた。
よく見たら、見覚えある男の子たち。
あれ? 六人に増えてる?
ゼルさん、ううん、ゼクスさんがずっと宿にいた私とお母さんにも説明してくれた。
ゆうべ泊まってた三人。…そんなに悪い人には見えなかったのにな。
この間来てたおじいちゃんたち、メイルさんとノーザンさんも戻ってきて。ギルドのモーリッツさんって人も加わって、皆で色々話すんだって。
途中でゼクスさんがすごい勢いで出ていったけど、何だったんだろ?
午後はホントにバタバタだった。
お父さんがこれからどうするか教えてくれて、色々準備して。
「大丈夫だと思うんだが、しばらくはひとりでウロウロしないようにな」
ちょっとだけ心配そうにお父さんがそう言った。
夕方に裏に行くよう言われて。
食堂の裏、六人の男の子とゼクスさんたちが待ってて、迷惑をかけてすみませんでしたって謝られたけど。
私、何もされてないんだけどな。
ロイを止めに走るゼクス。
じぃちゃんの苦労は尽きません。