三八二年 動の三十六日
本編『実の十一日』のネタバレを含みます。
元気なおじいちゃんたちが帰ったと思ったら、また変わったお客さんが来た。
杖をついたおじいちゃんと、お孫さん。
受付して、案内したけど。お孫さん、ひとっことも喋らなかった。
ダンより話さない人って初めて見た。
食事に行ったふたりが戻ってきてしばらくで、お兄ちゃんがこっちに来た。
どうしたんだろ、ちょっと焦った顔してる。
「父さんは?」
「お父さんならさっき二階に…」
そう言って階段のほうを見ると、ちょうどお父さんが降りてきてた。そのうしろに、あのおじいちゃんがちらっと見える。
びくりとしたお兄ちゃんが、急に私をうしろに庇った。
な、何?
お父さんは普通に降りてきてるけど、何かあったの?
ものすごく緊張した様子のお兄ちゃん。お父さんが下まで降りたところで、ようやくふぅっと息を吐いた。
お父さんは少し笑って、お兄ちゃんの頭を撫でる。
「よくやった」
ちょっと不満そうにお父さんを見上げて、お兄ちゃんがもう一度溜息をついた。
「…そういうことかよ…」
どういうこと??
結局何だったのかわからないまま。
でも、ひとつだけ。
お兄ちゃん、わたしのこと守ろうとしてくれたんだよね?
ありがとうね、お兄ちゃん!
テオ、ちゃんとお兄ちゃんしてますね。
階段上から覗くじいさん…怖い絵面だと思います。